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「Readyforの利用で、活動の軸や原点など
本質的な部分を問い直しました」

「どうして阿波おどりなのか」
その後の活動の軸ともなった二度目の挑戦

03.

「寶船」米澤渉さん、菊地智巳さん

1995年に設立された阿波踊り業界初となるプロ集団『寶船』。海外での公演もおこなうようになり、Readyforで「若者6人の挑戦!阿波踊りを通じて日本の魅力をパリに届けたい!」というプロジェクトを実施しました。結果、111万円を集め、Japan Expo 2014に参加しました。 『寶船』はなぜReadyforを利用したのでしょうか。プロジェクト達成後、どのような変化があったのでしょうか。今回、『寶船』の活動を運営する一般社団法人アプチーズ・エンタープライズでプロデューサーを務める米澤渉さんとプロジェクト実行者の菊地智巳さんにお話を伺いました。

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「寶船」米澤渉さん、菊地智巳さん

Story 1.

若者が活発にやる伝統芸能は少ない。
だからチャンス

―米澤さんが阿波踊りにのめり込むきっかけはなんだったのでしょうか?

米澤渉さん(以下、米澤): ぼくはもともと、阿波踊りがかっこいいものだと思っていませんでした。小学校4年生くらいのときに踊りをはじめましたが、その後、高校時代からインディーズバンドをやっていた時期があり、20代前半まではバンド活動に没頭していました。地道にバンド活動をおこなう中で「きみの原点ってなに? 阿波踊りやっていたんだから、阿波踊りが原点なんじゃないの?」と言われたことがあったんです。その後すぐに、タイミングよくハワイで行われた「ホノルルフェスティバル」の公演に参加しました。その場でパフォーマンスを見てくれたハワイの方々は「日本にはこんな祭りがあってうらやましい」と喜んでくれて、自分が阿波踊りをかっこ悪いと思っていたことや悩みが一気に晴れた気分でした。このあたりから、本格的に阿波踊りで勝負したいと考えるようになりました。ハワイから帰国後、数名のメンバーとともに5年以内に世界ツアーをおこなうことを目標に掲げ、プロメンバーの募集をはじめました。

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米澤渉さん

―菊地さんはどのように寶船に出会ったのでしょうか?

菊地智巳さん(以下、菊地): ぼくは3歳のころから、阿波踊りをやっていました。おばあちゃん子だったこともあり、若者限定の踊りではなく、子どもからお年寄りまで楽しんでくれる阿波踊りが好きで、高校生のときにはいつか仕事にしたいと思っていたほどでした。ただ、阿波踊りだけで働くことができるところがなかったので、大学に進学し、阿波踊り以外の道を探すようになりました。そんなときに、たまたまフェイスブックで、友人が阿波踊りの法被を着てタグ付けされていたんです。「阿波踊りになんのゆかりもない人なのに・・・」と思って調べてみると、寶船が出てきました。世界に出たいという旨のことが書かれていて、メンバー募集に応募して参加することになりました。

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菊地智巳さん

Story 2.

キュレーターからの問いかけで、
活動の原点を問い直す

―ReadyforではJapan Expoの渡航費集めとしてプロジェクトを達成しましたが、過去に別のサービスで一度失敗していたとも聞きました。二度目の挑戦にReadyforを選んだ理由はなんだったのでしょうか?

米澤: もともとクラウドファンディングと出会ったのは、スポンサー集めに苦戦していたときのことです。菊地がクラウドファンディングという仕組みを見つけてきて、さっそくチャレンジしてみました。ただ、そのときはクラウドファンディングに対して甘い幻想を抱いていて、「それなりにおもしろいことをやっていたので、サイトに登録してプロジェクトページを開設すれば、お金が集まるだろう」と半ば本気で思っていたところがありました。結局、一度目のプロジェクトはシェアもほとんどせず、たった3,000円しか集まりませんでした。主体性ゼロだったことがよくなかったんです。当初からReadyforの利用も検討していて連絡をしていたこともあり、一度目のクラウドファンディング終了後にはReadyforで新しいプロジェクトの準備をはじめました。

菊地: 実はそこでもまだ夢を抱いていた気がします(笑)。Readyforは日本最大級だから違うだろうと。

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―二回目となるクラウドファンディング利用ではどんなことが違いましたか?

米澤: キュレーターという存在がなにより大きかったです。ぼくらの場合は担当のキュレーター・菊川恵さんからプロジェクト立ち上げ前に「なぜあなたたちは阿波踊りをやっているのか?」「阿波踊りでなければいけない理由はなにか?」「なぜ支援者がお金を払わなくてはならないのですか?」「なぜ海外なのですか?」といった問いかけが菊地のもとに届いていて、それがとてもよかったです。クラウドファンディングを甘く考えていたところに、ムチを打ってもらったというか。実際そのおかげもあり、目標が108万円のところ、111万5千万円の支援が集まりました。振り返ってみても、本当にお金を集めたいという思いをキュレーターの方が引っ張り上げてくれました。さきほどのような問いを投げてくれることで、根源的にプロジェクトをやりたい人のカウンセリングになっているのではないかと思います。Readyforを利用したことで、活動の軸や原点など本質的な部分を問い直すいい機会になり、考え方を学びました。これからもさまざまなところでパフォーマンスをおこないますが、そのたびに「なんのためにここで踊るのか」といった根本の部分を考えるクセがつきました。きれいごとではなく、深堀りして考えて答えを導き出す。心から思っていることを確固たる意志で実現していかないとうまくいかないんだと勉強になりました。

菊地: 担当キュレーターさんから文章の構成や写真のレイアウトなどに関してフィードバックをいただき、何度も考えることで、プロジェクトページの質であり伝わりやすさが向上していったと思います。

―1万円のリターンが二つあるなど工夫もあるように思いましたが、ページづくりやリターンはどのように相談したのでしょうか?

菊地: その点でも担当キュレーターさんの存在が大きかったです。「このリターンを2つにしたほうが支援は集まりやすいです」「公演に来れない方のためのリターンも重要です」といった提案やアドバイスがあったときに、ぼくらのプロジェクトのことをちゃんと考えてくれていて信頼することができると思いました。メールでやりとりしていたのですが、毎回盛りだくさんな内容をいただけたことがよかったです。担当キュレーターさんのお力添えもあり、プロジェクトを達成することができました。

―プロジェクトの広報はどのようにおこなっていたんですか?

米澤: 初期はソーシャルメディアを中心に情報発信していきました。「毎日SNSで投稿する」「投稿は画像付き」「朝の通勤時間を狙ってください」といったアドバイスを受け、情報発信をおこないました。最初は知り合い経由で伸びましたが、60万円くらいのところで止まってしまいました。そんなときも担当キュレーターさんから「このペースでは成功できません」という言葉とともに改善点をもらいました。ぼくらは公演をしているのでお客さんに呼びかけたり、フェイスブックでの情報では流してしまう人もいるので専用のチラシを制作して配布しました。

―事前準備を含めると半年近くのプロジェクトでした。利用したことでなにか変化はありましたか?

米澤: まず、担当キュレーターさんからの問いを考えることで、自分たちはなぜ阿波踊りをやっているのかを再認識することができました。やはりプロジェクトの支援を集めるためには、「海外になぜ行きたいのか」という部分でも説明責任が出てきます。改めて言葉にして相手に伝えることで「おもしろい活動やっていたんだね」と言ってくれる人も増えました。たとえ支援に結びつかなくても、阿波踊り自体の応援者が増える機会になったと思います。また、Readyforがきっかけでお仕事も増えました。

菊池: クラウドファンディングはSNSで広がっていくイメージだったんですが、ぼくらのプロジェクトは知人からの支援も多く集まりました。プロジェクトを通じて、身近に応援してくれている人がたくさんいることに気づく機会になってとてもよかったです。

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―知り合いに支援の依頼をしたときの反応はいかがでしたか?

米澤: 前提として、自分たちがなぜその活動をしていて、どうして支援を集めなければならないのかを考え抜いていることが大切だと痛感しました。Readyforがやっているのは、夢を追うことの後押しはもちろん、それに共感してくれる健全な支援者を探すことだと思います。友人に電話してプロジェクトの説明や支援の依頼もしましたが、自信をもって健全な活動をしているならば、支援を集めることに遠慮はいらないと思います。未来に実現したいことを表明して、共感してくれる人がいたら、それぞれの支援者が額を選ぶ。Readyforでは「未来に実現したいこと」に焦点が置かれているので、けっしてお金集めだけが目的ではないと感じました。プロジェクトをこれからやりたいという人にとっては、いかに自信を持つことができるかが壁になるのかなと思います。

Story 3.

Readyforを通じて
信頼やつながりを再確認

―Readyforのプロジェクトを振り返ってみて、もっとこうすればよかったという改善点はありますか?

米澤: プロジェクト自体は満足しています。ただ、昔の自分を振り返ってみたときに、やるべきことは友達など身近な人間関係や出会いを大切にすることだったと思いました。これからクラウドファンディングをやりたいという人がいたら、実行者がコミュニティからどれだけの信頼を得ているかが大事だということを伝えたいです。良好な人間関係からの高い信頼は、プロジェクトの達成率を上げるのではないかと思います。そういう意味では、Readyforを利用したことが、信頼やつながりを再確認する機会にもなりました。昔バンドをやっていたと言いましたが、当時は孤高に活動することがかっこいいと思っていたこともありました。しかし、自分たちが未熟な段階から応援してくれる人を増やしていかないと、クラウドファンディングに成功するわけがありません。

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Story 4.

だれでも踊れて、
その体験が思い出になる

―2014年7月、フランスのパリで行われるJapan Expo 2014に出演されました。合計4公演を行い、約3,000人の観客にパフォーマンスしたとのことですが、そのときの反応を教えてください。

米澤: メジャーなアーティスト――乃木坂46、Berry's工房、℃-ute、YOSHIKIなど――も多数出演するJapan Expoのなかでぼくらは無名でしたが、いちばん会場をパンパンにさせて、熱狂させたのはぼくらだったんじゃないかという話をメンバーとしました。アーティストの方々はライブハウスステージという音楽のステージに出演し、ぼくらは日本の伝統文化を披露するトラディッショナルステージに立ちました。ふなっしーやくまモンなどとも同じステージでしたが、入場規制がかかるくらいだったので大きな手応えがありました。Japan Expoを含め、海外でパフォーマンスすると、表現や温度は違うものの、日本と同じように盛り上がります。日本という島国のなかの小さな地域でかっこいいとされている伝統芸能が、海外でもかっこいいと思ってもらえるのはすごいことだと思います。

菊地: 年代を限定していないので、オープンにだれでも楽しめる参加型の芸能として、どの国でも盛り上がるのかもしれません。和の文化といえど、ただの阿波踊りではなく、ベースの表現をもとにフェスのようにしたり、パントマイムを取り入れたり、海外でのパフォーマンスは工夫を凝らしています。

―参加しやすい伝統文化は稀ですよね。

米澤: たとえば和太鼓はとても盛り上がりますが、台数分しか体験できません。一方、阿波踊りはその場でなんの道具もなしに誰もが楽しむことができるのは特徴的だと思います。Japan Expoは世界中から約26万人が来場する世界一大きい日本の祭典です。Readyforを利用したのも、そこに出演できたら未来が変わるんじゃないかと思ったからです。実際、Japan Expoでのパフォーマンスを見てくださった方からの出演依頼もあり、あの経験はいまの活動に確実につながっていると思います。

―最後にメッセージをお願いします。

菊地: クラウドファンディングの概念自体はこの数年で広まっているので、これから挑戦したい人はやりやすいのではないでしょうか。まずは身の丈にあった金額でもいいので、チャレンジしてみることをおすすめします。ぼくらは一度ほかのプラットフォームで失敗していますが、たとえ成功しても失敗しても、その後の活動や事業にいい影響があると思います。Readyforではキュレーターの方が活動の本質に迫る問いを投げてくれるので、自分の夢を伝えるむずかしさを実感しつつも、主体性の大切さを学ぶことができました。

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文:佐藤慶一/写真:佐藤寛峻

※文中の記述はインタビュー当時の内容です。

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