「北海道百年記念塔」解体差し止め住民訴訟にご支援を！

前回、札幌地裁と谷口裁判長について報告し、札幌地裁が特定の傾向をもった裁判所であることをお示ししました。

では、なぜそんな地裁を選んだのか？　という疑問があるかと思います。「裁判籍」といって事案により提訴できる裁判所は「処分・裁決をした行政庁の所在地を管轄する裁判所」と決まっているからです。北海道百年記念塔訴訟では、道庁と記念塔が置かれた札幌の裁判所以外は選べません。

もうひとつ、担当判事が谷口裁判長と分かったときに、原告弁護士はどんな手を打ったのか？　という疑問もあると思います。判例と法的環境整備の遅れた行政訴訟の取消し請求では、裁判長の裁量権が大きい。裁判長の価値観が判断に大きな影響を与えるといいました。

そうした疑問に対する答えがこれです。これは第一準備書面に添付した証拠説明書の鏡ですが、最高裁調査官の森英明氏の『判例解説』という文書のコピーを証拠として提出しています。

行政訴訟法において、住民が行政を訴えることのできる要件は限定的という話をしました。記念当訴訟では、被告・道はこれにより原告の訴えを退けるように求めました。対して原告弁護士は、「司法制度改革により訴訟要件は拡大している」と反論しましたが、その証拠として提出したのがこの書です。

筆者の森英明氏は、この書の中で「国民の権利利益の救済のために差止め訴訟の原告適格が拡大している」と論じてています。森氏は現在、最高裁判決の動向に強い影響力を持つ最高裁判所調査官で最高裁裁判官の候補ですが、その前は札幌地裁所長でした。つまり記念当訴訟の谷口裁判長の直属の上司だったのです。

https://www.sn-hoki.co.jp/judge/judge2821/

原告が証拠として提出した書類は、最高裁調査官の文献であるとともに、谷口裁判長も頭が上がらないだろう直近の上司の文献だったのです。一審で原告は、差止め訴訟の原告適格を広げるよう求めましたが、谷口裁判長にとってこの文献の意味は明白でしょう。

被告道が論拠とした昭和39年の最高裁判決に基づいて原告の訴えを退けるのは簡単ですが、それを踏み越えて新しい判断を示すには、裁判官に自分のキャリアも含めた踏ん切りが必要です。この文献は、そうした踏ん切りを裁判長に与えるものであったでしょう。記念塔訴訟の争点を切り崩す作戦ですが、プロの弁護士はここまでするんだと思いました。

一方で、訴訟を通して（事実上これが唯一の方法ですが）、北海道百年記念塔が救われる道は、「司法の民主化」の方向にしか窓が開いてなかったということができます。原告弁護士は準備書面の中でこの「司法の民主化」を盛んに強調していました。

こうした弁護士の努力にもかかわらず、運動の側はどうだったのか？　司法の民主化――我々はこのことにどこまで意識的であったのか？　が問われています。言うまでもなく我々の目的は、百年記念塔の存続であって、鈴木直道の追い落としではありません。

訴訟はまだ続きます。今後の運動の方向性を改めて考えたいと思います。