旅する茶白猫のお話（その5）

 

私の家の駐車場を住処としたエリちゃんは、1日2回ご飯を食べに来るようになりました。

 

しかし、目立つ場所で私が来るのを待つようになったことで、周囲の住人の目に触れるようになってしまったのです。

 

しかも、エリちゃんはご飯を要求する時に、甲高い良く通る声で鳴く癖がありました。

 

そのせいもあって、駐車場で人目を避けてご飯をあげ続ける生活に限界を感じるようになり、ついにはエリちゃんの保護を決意しました。

 

 

しかし、エリちゃんを保護するにあたって、問題点が2つありました。

 

1つ目はエリちゃんが捕獲機に入ってくれるかどうかです。

 

私の経験上、メス猫は警戒心が強く、捕獲機に上手く入ってくれないのです。

 

特にエリちゃんは、過去に不妊手術を受ける際に捕獲機を経験してるはずなので、捕獲機に対して強い警戒心を持っている可能性が高いと思われました。

 

2つ目は寒い時期になったせいか、エリちゃんが深夜にご飯を食べに来なくなったことです。

 

相変わらず夕方はご飯を食べに来ていましたが、深夜に姿を見ることはほとんど無くなってしまいました。

 

エリちゃんを捕獲するなら人目に付かない深夜が良いのですが、エリちゃんが深夜に来ない状況では夕方に捕獲するしかありません。

 

そんなことを色々考えているうちに、あっという間に時間が過ぎていきました。

 

 

そして2022年の終わりが近づいてきたクリスマスイブのことです。

 

もうイブからクリスマスへ日付が変わろうとする時間帯ではありましたが、私は人並みにクリスマス気分を味わおうと、チキンとケーキを買ってから家に帰ってきました。

 

すると、車を降りた私のところへ、エリちゃんが駆け寄ってきたのです。

 

私はまだ温かいチキンを抱えながら、少し迷ってしまいました。

 

家でのんびりチキンを食べるつもりだったところへ、エリちゃんが来てしまったからです。

 

あまりの間の悪さにぐったりとしましたが、深夜にエリちゃんを捕獲するチャンスは本当に希少ですし、ここを逃すと次のチャンスはいつになるか分かりません。

 

私はため息をつきながらチキンを助手席に戻し、捕獲機の準備をはじめました。

 

捕獲機には今まであまり食べさせてこなかった、とっておきの猫用ササミをセットして、エリちゃんの様子を窺うことにしました。

 

 

エリちゃんは猫用ササミの美味しさに我慢できなかったのか、あっさりと捕獲機に入ってくれました。

 

私はササミで捕獲されたエリちゃんを見ながら、クリスマスだからエリちゃんもチキンが食べたかったのかな、と妙な感想を抱いたのです。

 

その後、私は捕獲したエリちゃんと一緒に、そのまま保護猫シェルターへ直行しました。

 

 

保護猫シェルターに着いてからはまず駆虫薬を施して、用意しておいた3段ケージにエリちゃんを入れました。

 

 

捕獲機の中では少し暴れたエリちゃんでしたが、ケージに入ってからは落ち着いた表情に見えました。

 

ただ、少し怖いのかいつものように鳴き声をあげることはありません。

 

 

とりあえずケージの上段にご飯とお水を入れ、下段に設置したベッドには湯たんぽを置いてから、その日は家に帰ることにしました。

 

（つづく）