テトラポッドの子猫

 

５年前に出会った子猫のこと。

 

 

この猫はいつもここにいて、
人影が見えるとすぐにテトラポッドの下に逃げ込みました

ここが一番安全なところだと思っているようで
台風が近づいてもここを離れようとせず

風が強くなると人でもよろめくほどなのに
小さい身体でテトラポッドを飛び移っていました。

風にあおられて、海に落ちれば

波にのまれてしまうと思うと心配で、

台風前には何とか捕まえたいと思っていました。

 

でも、近づこうとするだけでテトラポッドのすきまに
逃げ込んでしまう子猫をどうすることもできませんでした。

 

いよいよ台風が迫ってくる頃に、見に行くと
子猫はテトラポッドの上に座っていました。
近づいても逃げないので、不思議に思いましたが
よく見ると、目の焦点もあっていないようで
なんだかぼうっとしたようすでした。

 

 

そのまま抱き上げても、あばれるでもなく
キャリーに入っても、ただぼうっと座っていました。

 

 

病院で補液してもらい、お薬ももらいましたが
すでに遅かったようです。

何も食べられないまま、４日後に命の灯が消えました。

ガリガリに痩せて、身体じゅう海の潮でべとべとでした。

海の水はうっかり飲みこむとのどが痛くなるほど塩辛いのに、
いつも波しぶきを浴びて、毛づくろいするたびに
塩をなめてしまったのでしょう。

水も充分に飲めない状況で、
内臓はすでにひどいダメージをうけていたのかもしれません。

 

もっと早くに助けてあげたかった。
美味しいものも食べさせてあげたかった。

今度は幸せなところに生まれてきますように・・・