パグパグとは何？

 

ここはマニラから1時間半くらいかかるブラカン州の内陸部に位置するバティア市内にある農村地帯のなかに出現した新しい居住区、セントマーサ・エステートです。バティア地区に国の住宅局が約3年前にマニラからのスラム居住者たちを移住させるためにつくった新居住区で、元スラム居住者しか住んでいません。

 

ここで3,000世帯（1世帯は平均で5名以上居住しているので、1万5千人）以上が長屋に住んでいます。私たちが2011年から支援をはじめたスモーキーマウンテン出身の人々だけでなく、他のスラム～の人々もいます。

 

各長屋のユニットは、24平方メートルです。トイレもあり、キッチンスペースもあって、いままでの掘立小屋でトイレもない居住空間からすると夢のような家ではあります。

 

ただし、この空間は無料ではありません。いつ払い終えられるか分からない「ローン」を毎月小額ながらはらっています。収入のほとんどは食費に消えると以前書きましたが、その食費さえ十分でないので、人々は知恵をしぼって無料で得られる食事を調達してきます。そのひとつがパグパグとよばれるものです。

 

<写真左は残飯をよりわけてパグパグをつくっているところ＞

 

 

人々は貧しいために熱量がとれる安い食物をとろうとします。その結果、残飯あさりをするので、他のどの階層の人々よりビタミン欠乏による疾病にかかる可能性が高いのです。彼らの平均的な家族の全収入をもってしても最低レベルの食事のコストのわずか87％をカバーできるだけなので、食事を安くあげる為に残飯や捨ててあるものなので、雑菌は繁殖しています。これがパグパグです。

 

なんとこのパグパグを隣人に販売することもあります。 パグパグを食べ続けていると長期的に体力を消耗し、病気や死につながります。毒素があったり、食品を媒介とする病原菌の摂取などの深刻な健康上のリスクを持っています。適切な成長と健康のために必要な栄養素を得ることはできないので、子どもの健康にとっては特に有害です。

 

 

 

 

栄養失調の兆候がよくみられるのは身長です。フィリピンの12歳の子供の身長は平均155センチですが、左の少女、グロリアは126センチしかありません。右側のメアリーが144センチですが、この身長がセントマーサ地区の平均身長です。しかしそれでもフィリピン全体の同年代の子どもの身長は１５５センチなので、１１センチ低いのです。

 

ほとんどの世帯がマニラに働き手をだしていて、もともと廃品回収や荷揚げ作業、建設現場作業などのわずかなお金から稼いだなかで、二重生活をしいられています。仕事にあぶれるとそれすら稼げません。

 

そこで、なんとか副収入をつくりだして、少なくとも飢える生活から抜け出してほしいと考えました。幸いこの長屋の前後に小さなオープンスペースがあって、後が12平方メートル、家の前には畳1畳分、つまり3平方メートルのスペースがあり、野菜栽培が可能です。

 

 

<自宅スペースに菜園をつくっているおかあさん。野菜が収穫できて幸せいっぱいです＞

 

<写真は小学校の放課後を利用した栄養バランスの重要性と野菜栽培についてのクラス。中央はカマルフリーダ現地事務局長のデイヴボックマン＞