高齢者や障がい者が、沖縄旅行を楽しめる仕組みづくりをしたい！

その方との出会いは、添乗員のとき、島を周遊するツアーでした。

 

〈ご主人が奥様のそばにいつも寄り添う、とても仲の良いご夫婦〉

これが第一印象でした。

 

私が違和感を感じたのは旅行2日目。この日、ひとつめのイベントである、マングローブクルーズを終えたときでした。

最後に船を下りる奥様の動きが少しゆっくりとしていて、顔には少し疲労感がうかがえます。

 

「お疲れの様子ですが、大丈夫ですか？船酔いはされていませんか？」と、声をかけました。

「ちょっと疲れやすくて。次の船の時間まで休みます」とのお返事だったので、待合所へご案内しました。

 

この日は、4島を巡る行程。

船やバス・水牛車と、乗り換えが非常に多く、船での移動中はエンジン音があるために、休息をとることが難しいものでした。

そこで私は、以下のことをお伝えしました。

 

「できる限り休息の時間を確保できるよう、各観光場所での解散時には、座ることができる場所をお伝えしますね。」

「乗車・乗船のお声かけを、最後にしますね。他の方をお待たせしないように配慮しますので、休めるときにはお休みなってください。」

 

「ありがとうございます」とのお返事でした。

 

 

その日の後半、ビーチ散策の際に私は、「お写真をお撮りしましょうか」とお客様に声をかけてまわっていました。最後にそのご夫婦にも。

おふたりの写真を撮影すると、少しお話しをしました。

すると、

「実は先日、私の余命は半年だとお医者さんに言われたんです。残りの半年をどう過ごそうかと、夫とふたりで話し合いました。そして、ふたりで旅行をしようと決めたんです。日本の素晴らしい場所へ行こうと。」

ご自身のことを話す奥様のそばで、ご主人は見守っていました。

 

奥様は決して弱々しくはなく、凛としていました。

ご夫婦の絆を感じ、なんて素敵な夫婦なんだろう、と思いました。

 

 

そして最終日の空港で奥様から、「少しだけど良かったら食べて」と、小さな袋をいただきました。

中には飴とクッキー、それから、小さく折りたたまれたお手紙が入っていました。

 

優しさにあふれたお手紙に、今でも読み返すたびに涙が出てきます。

 

 

この出会いで私がしたことは、お声かけだけです。余命を知ったからと言って、特別なことは何もしませんでした。

しかしこのお手紙から、添乗員であり看護師の私だからこそできることを知らせてもらいました。

 

観光地のバリアフリー化と旅行専門の看護師や介護士の育成を行い、そして、高齢でも障害があっても旅行を楽しむことができるようにしていきたいと思います。