がんゲノム医療の実践を目指して -難治胆道癌に新たな治療選択肢を-

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がんゲノム医療の実践を目指して -難治胆道癌に新たな治療選択肢を- 2枚目
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プロジェクト本文

 

がんゲノム医療の実践を目指して

-難治胆道癌に新たな治療選択肢を-

 

横浜市立大学附属市民総合医療センター がんゲノム診療科・消化器病センターでは、胆道癌の遺伝子変化に応じた新規薬物療法を確立するため、臨床試験に取り組んでいます

 

胆道癌は、予後不良の難治癌の一つであり、他の癌種に比べると多彩な遺伝子変化を認めることから、遺伝子変化に応じた 個別化医療の実践 が求められてきました。

しかしながら、がんゲノム検査によって癌の原因となっている遺伝子変化を特定出来る時代が到来したにも関わらず、遺伝子変化に応じた薬剤は未だ十分に開発されていない現状 にあります。

 

『難治胆道癌に、できるだけ早く有効な薬を届けたい。』 

 

これが、本プロジェクトの立ち上げの原点です。

 

現在、私たちは一部の遺伝子変化を有する胆道癌を対象とした2件の臨床研究を実施しています。いずれも 他癌種で既に保険承認されている薬剤を胆道癌へと応用することを目的とし、私たちが独自に立案した臨床試験 です。

 

・EGFR増幅胆道癌に対するネシツムマブ・ゲムシタビン併用療法の第2相試験(NG-BEAT試験)

・PI3K亢進型胆道癌に対するカピバセルチブ単剤療法の第2相試験(CAPiaB試験)

 

今回のクラウドファンディングでは、この臨床研究を推し進めるべく、皆様からのご支援を募らせていただきます。  

本研究が、困難を極める胆道癌治療の可能性を広げ、さらには次世代のがんゲノム医療を切り開く一歩となりますよう、皆様どうかご支援をお願い申し上げます。

 

 

 

プロジェクトの背景

 

 

がんゲノム検査の現状と課題

 

2019年にがんゲノムプロファイリング検査」(詳細情報)が保険収載されました。

 

これは、個々の患者さんの癌細胞の遺伝子を調べ、癌化を引き起こしている遺伝子変化を特定し、薬剤の探索を試みる検査です。

 

しばしば『ゲノム』という言葉は、あたかも万能の検査であるかのようなイメージをもたらしますが、実際に薬剤が投与されるケースは全体の約9.4%(※1)とされ、治療につながるケースの少なさが問題となっています。(※1 全癌種、 がんゲノム情報管理センター調査)

 

つまり、遺伝子変化を調べることが出来ても、対応する薬剤が極めて不足している状況にあるのです。

 

 


 

他の癌種で保険承認済みの薬剤が存在しても...

 

がんゲノム検査によって判明した遺伝子の変化に対し、他の癌種であれば提案される、保険承認された薬剤が存在するケースもあります。

 

このような場合にも保険外での薬剤投与が可能となる訳ではなく、薬剤を使用できる治験や臨床試験を探索することになりますが、該当する試験は極めて少ない現状にあります

(保険適応外薬剤を使用する制度として、「患者申出療養制度」が存在しますが、実施に係る申請条項などから、癌患者さん個人が迅速に適応外薬の使用に到達できる制度とは言い難い状況です。)

 

もちろん、癌種が異なることによって治療効果にも差がある(有効ではない)可能性も挙げられますが、このような検証は速やかに行われるべきであると私たちは考えています。

 

 

 

胆道癌に対する薬物療法

 

 

胆道癌の現状

 

胆道癌は、肝内胆管・肝外胆管・胆のう・十二指腸乳頭部に生じる癌を指します。

日本国内で年間約 2.3万人が新たに診断され、約 1.78万人の方が亡くなられています。  

 

早期の段階では症状を伴わないことも多いため、進行してから見つかる事例が多く、5年相対生存率は約24%、予後不良の難治癌の一つに挙げられます。(2024年推計・胆のう・胆管 国立がん研究センター がん情報サービス)。

 

 

 

胆道癌に対する薬物療法 -未だ少ない保険承認薬-

 

胆道癌に対する薬物療法は、未だ極めて不足している状況にあります。

これまでに、殺細胞性の抗がん剤である「ゲムシタビン」+「シスプラチン」を中心とした薬物療法が開発され、近年では、「ゲムシタビン」+「シスプラチン」に、免疫チェックポイント阻害薬である「デュルバルマブ」や「ペムブロリズマブ」を上乗せした3剤併用療法が国際的な第一選択療法として確立されてきました。

 

しかしながら、この3剤併用療法での治療効果が乏しいと判断された場合には、使用できる薬剤が極めて少ない状況にあります

 

また下図の右側に示しますように、がんゲノム検査による遺伝子異常に応じて保険承認された薬剤も存在しますが、該当する頻度は極めて低い状況です

 

 

 

 

胆道癌における個別化医療の実践を目指して

 

胆道癌は、他の癌種に比べ、多彩な遺伝子変化が認められることから、個別化医療(Precision medicine)の実践 が求められて来ました。

 

まだまだ、人類として有効に使用できる薬剤は限られている現状ですが、一部の遺伝子異常に対しては、既に他癌種で臨床応用されているものが存在します。

私たちは、胆道癌の多岐にわたるゲノム異常の中で、「EGFR増幅」と「PI3K経路亢進」タイプの胆道癌に着目し、他の癌種で保険承認されている薬剤を応用する形で臨床試験を開始しました。

 

 

 

 

具体的な研究内容

 

現在、胆道癌に対するゲノム異常に応じた新規薬物療法の確立を目指し、以下の2つの臨床試験と付随研究を実施しています。

 

臨床研究①
EGFR増幅胆道癌に対するネシツムマブ(抗EGFR抗体薬)とゲムシタビン併用療法の第2相試験(NG-BEAT試験)詳細情報

 

EGFR(Epidermal Growth Factor Receptor:上皮成長因子受容体)は、細胞の表面に存在する受容体で、細胞の増殖シグナルを制御することが知られてきました。大腸癌や頭頸部癌や肺癌では、このEGFRの発現量が高く、このEGFRに結合してEGFRの働きをブロックする薬剤(抗EGFR抗体薬)の治療有効性が示され、実際に保険診療で使用されています。

 

一部の癌では、このEGFRの増幅(遺伝子の数が増える変化を指します)が癌化を引き起こすケースが報告されています。EGFRが遺伝子レベルで増幅している癌に対して、EGFRの働きをブロックする抗EGFR抗体薬を使用することは、非常に理にかなっていると考えられます。実際、抗EGFR抗体薬が有効であったという報告が散見されますが、世界的に見ても保険承認には至っていない現状です。

 

このような有効性が示唆される薬剤が存在するにも関わらず、未だ検証が行われていない理由の一つとして、EGFR増幅癌が稀少であることが挙げられます。文献上、EGFR増幅を有する胆道癌は約2-3%程度と見積もられ、極めて稀少なフラクションであると考えられます。このような稀少さも相まって、未だ薬剤の有効性の検証が行われていない現状を打開すべく、私たちは、肺癌で保険承認されているネシツムマブ(抗EGFR抗体薬)とゲムシタビンの併用療法を、EGFR増幅を有する胆道癌を対象に応用する第2相試験を開始しました

また実際に、EGFR増幅を有する胆道癌の患者さんにネシツムマブ(抗EGFR抗体薬)が有用であったケースを報告しています。(Cancer Reports. 2024 Nov;7(11):e70053.

 

 

臨床研究②
PI3K亢進型胆道癌に対するカピバセルチブ単剤療法の第2相試験(CAPiaB試験)詳細情報

 

PI3K(Phosphatidylinositol-3 Kinase)経路は、細胞内のエネルギー代謝や増殖に関わる経路で、過剰な活性化が癌化を引き起こすことが知られてきました。このPI3K経路の異常は乳癌で高頻度に確認され、PI3K経路をブロックする薬剤であるカピバセルチブが、PI3K経路の遺伝子異常を有する一部の乳癌に対して保険承認されています。

 

私たちは、胆道癌におけるPI3K経路の活性化について基礎研究を行ってきました。培養細胞やマウスモデルを用いて、PI3K経路の過剰な活性化が胆道癌を引き起こすこと、PI3K経路をブロックする薬剤が有効であることを確認しています(論文作成中)。

 

PI3K経路の活性化が示唆される胆道癌は、文献上、約7-12%程度と見積もられ、稀少なフラクションであることが想定されます。カピバセルチブは2024年に保険承認された薬剤ですが、いち早く胆道癌へ応用したいと考え、第2相試験を開始しました。

 

 

トランスレーショナル研究

 

トランスレーショナル研究とは、患者さんの臨床検体を用いた基礎研究を意味します。臨床試験と基礎研究の融合によるアプローチは、アカデミアでしか出来ない、医学の発展に重要な取り組みの一つです。

 

私たちは、上述の臨床研究に並行し、患者様の血液検体等の臨床検体を用いた付随研究を進めさせて頂いています。

近年、『リキッドバイオプシー』という、血液中に循環する癌細胞由来の遺伝子を解析する技術が確立し、血液を用いて腫瘍の遺伝子変化を捉えることが可能となりました。当施設からも、血液中の癌細胞由来遺伝子が、治療のマーカーとして有用であることを報告してきました(Cancer Sci. 2020 Jan;111(1):266-278.)。

 

どのような場合に薬剤の効果が期待できるか、どのようにして耐性化が生じるのか、その機序の解明は医療の発展に資するものであると考えています。

 

 

 

大学アカデミアの強みを活かした医学研究を

 

このように、本試験で着目する「EGFR増幅」と「PI3K経路遺伝子の異常」に関しては、他癌種では、既に対応する薬剤が保険承認されている状況にありますが、胆道癌に対しては、未だ薬剤の有効性の検証すらなされていない現状です。

 

胆道癌全体のうち、EGFR増幅型は頻度約2-3%、PI3K亢進型は頻度約7-12%、と見積もられ、極めて稀少なフラクションに該当することも検証が進んでいない要因の1つに挙げられます。つまり、対象者が少ないために、小さなマーケットとしてみなされている(見過ごされている)可能性があります。

 

このようなアンメットニーズに対するアプローチは、利益追求を第一の目的としない、大学アカデミアの重要な使命であると考えています。がんゲノム診療科・消化器病センター内科、チーム一丸となって、次世代の胆道癌治療法開発を推し進めたい所存です。

 

 

 

皆様へご支援のお願い

 

臨床研究とトランスレーショナルリサーチの実施により、難治胆道癌に対するゲノム異常に応じた新規薬物療法の開発に取り組んで参ります。

 

こうした臨床・基礎研究には多くの資金を要し、現有の研究資金では全てをまかなうことが難しいため、この度、寄付金控除型のクラウドファンディングによる御寄付を募集させて頂きます。

 

『がんゲノムに基づいた次世代のがん治療』を、胆道癌の患者さんへ。

 

難治胆道癌に対するゲノム医療の未来を実現するため、皆様からの温かいご支援を、クラウドファンディングにて賜りたく存じます。

 

胆道癌治療の新たな可能性を、皆様とともに切り拓いていきたいと願っています。

どうか、御支援の程、宜しくお願いします。

 

クラウドファンディング概要

第一目標金額 :1,500万円

募集締切:2026年2月28日(土) 23:00まで

資金使途:難治胆道癌における臨床試験、付随研究に係る研究費として

※本プロジェクトは、寄付総額が期日までに目標金額に届かなかった場合でも、自己負担するなどして、必ず予定していた規模の実施内容の通り実行致します。

 

 

 

プロジェクト代表者より

 

横浜市立大学附属市民総合医療センターの杉森 慎と申します。

これまで消化器内科医として、消化器癌の病態解明と治療法開発を目標に、診療と基礎研究に取り組んできました。最近では、がんゲノム検査を実施する部署を担当しています。

 

がんゲノム検査は、癌の種類ではなく、遺伝子異常に基づいた臓器横断的な薬剤治療(tumor-agnostic治療)の考え方に基づき推進されてきました。つまり、癌の発生臓器が異なっていても、遺伝子異常別に薬剤の有効性を期待出来るのではないか、という考え方です。

 

 

「ゲノム」という言葉から「最新で万能」という印象を持たれがちですが、検査結果から実際に薬剤使用に至る症例は、依然として非常に少ない状況です。これには、遺伝子異常に対応した薬剤のラインナップが少ないことだけでなく、薬剤へのアクセス面も、まだまだ未成熟であることが原因に挙げられます。

 

日常診療の中で最も悩ましく思うのは、がんゲノム検査で特定された遺伝子異常に対して、他の癌種では保険承認された薬剤が存在するケースです。もし、こうした薬剤が存在したならば、当然、「試してみたい」と思うのは皆同じはないでしょうか。

 

保険診療というルールの中で、私自身も「適応外の薬剤を目の前の患者さんに使うなんて、漫画のようなことだ」と思ってきましたが、ある患者さんとの出会いを機に、このような葛藤について深く考えるようになりました。

とはいえ、遺伝子異常が同じでも治療効果が必ずしも保証されるわけではありません。言うまでもなく、医療においては科学的根拠を持った薬剤の使用・選択が不可欠です。

 

私たちはこのようなジレンマを克服するため、速やかに薬剤の有効性を検証できる体制作りが喫緊の課題だと考え、このたび特定臨床研究として、遺伝子変化に対応した薬剤の有効性を検証する2つの第2相試験を立ち上げました。いずれも、他の癌種で既に保険承認されている薬剤を胆道癌へと応用した試験です。本研究により、難治胆道癌への更なる個別化医療の実装を目指します。

 

研究・開発を発展させる資金として、広く皆様からのクラウドファンディングでの御寄付を募集させていただきます。

皆様のご支援を結実させ、胆道癌治療の発展に尽力したい所存です。何卒、温かいご支援の程、宜しく御願い申し上げます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

横浜市立大学附属市民総合医療センター 

がんゲノム診療科・消化器病センター

助教 杉森 慎

 

 

税制上の優遇措置について

 

税制上の優遇措置

 

個人や法人からの本学に対する奨学を目的とする寄附については、法人税法及び所得税法による税制上の優遇措置があります。※日本の納税者のみ対象となり、海外の方は優遇を受けることはできません。


●法人様
全額損金算入可能です。(一般の寄附金に係る損金算入限度額とは別枠です。)

 

●個人の皆様
2千円を超える部分については、その超えた金額が当該年の所得から控除されます。
ただし、寄付金の額が総所得金額の40%を超える場合は、40%を限度とします。
詳細情報は以下の文部科学省のホームページをご覧ください。
寄附金関係の税制について(文部科学省ホームページ

 

受領証明書の発行


寄附金控除等の証明書として「受領証明書」を入金確認後に送付いたします。控除等を受けるために、確定申告に際してこの「受領証明書」が必要となりますので、相当期間大切に保管してください。


・受領証明書送付期日
2026年5月末までに送付いたします。

 

・受領証明書日付

READYFORから横浜市立大学への入金日の、2026年4月10日(金)付けで発行いたします。

 

・その他

受領証明書のお名前は、ギフトお届け先にご登録いただいたお名前となります。

 

 

本プロジェクト実施施設に関する情報

 

実施施設:横浜市立大学附属市民総合医療センター(市大センター病院) がんゲノム診療科・消化器病センター内科

所在:横浜市 南区 浦舟町 4-57

電話:045-261-5656 (代表)

 

当施設のホームページ

横浜市立大学附属市民総合医療センター がんゲノム診療科 (詳細情報)

 

横浜市立大学附属市民総合医療センター 消化器病センター (詳細情報) 

 

当施設における本プロジェクトの特集ページ (詳細情報)

 

本プロジェクトで実施中の臨床試験については、下記をご覧下さい。

(臨床試験へのエントリーを希望される場合には、まずは通院中の医療機関にてご相談ください。)

EGFR増幅胆道癌に対するネシツムマブ・ゲムシタビン併用療法の第2相試験

  (NG-BEAT試験, 詳細情報)

 

PI3K亢進型胆道癌に対するカピバセルチブ単剤療法の第2相試験

  (CAPiab試験, 詳細情報)

 

 

▼ご寄付ご寄付にあたってのご注意事項▼

※ご寄付の前に、READYFOR利用規約(https://legal.readyfor.jp/guidelines/terms_of_service_index/terms_of_service/)を必ずご一読ください。ご寄付確定後の返金やキャンセルは、ご対応致しかねますので、何卒ご了承ください。

※ご寄付のお手続き時に「応援コメント」としていただいたメッセージは、本プロジェクトのPRのために利用させていただく場合がございます。あらかじめご了承ください。

 

プロジェクト実行責任者:
横浜市立大学附属市民総合医療センター がんゲノム診療科・消化器病センター内科 杉森 慎
プロジェクト実施完了日:
2030年3月31日

プロジェクト概要と集めた資金の使途

支援頂きました資金は,特定臨床研究と付随研究の実施に使用させていただきます.実施する2つの特定臨床研究,及び付随研究の成果を報告します.

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