中京大学教養教育研究院 松原 幹様からの応援メッセージのご紹介

私はゴリラの飼育頭数が世界一のイギリスにあるハウレッツ＆ポートリム野生動物公園で、ニシゴリラの家族の遊びを中心としたコミュニケーションを調査したことがあります。その飼育環境は野生ゴリラの行動、例えば木に登って採食し、枝葉のベッドで眠り、子ゴリラがつる植物を昇って草に覆われた林床に飛び降りて遊べる”ゴリラ工学”的なデザインでした。イギリスで入手できる素材ですが、ガボン共和国のニシゴリラやコンゴ民主共和国のヒガシゴリラの調査で私が見て体感した森の木々や林床、湿地の構造が絶妙に再現されています。また１日何度も採食する野生の行動に合わせて、毎日5回以上の給餌や、屋内・屋外放飼場にゴリラがつまみ食いできる植物があるといった工夫がされています。

ゴリラが安心して子育てし、やんちゃなオス同士が一緒に暮らせる飼育環境には気温や湿度の快適さや、登って遊んだり、互いの距離を調節できる樹上を模した高所構造物、ストレスを緩和する植栽や遊び道具が必要不可欠です。
 

他の海外の動物園でも”ゴリラ工学”に基づいた様々な工夫や高度医療の取り組みがあり、国際ゴリラワークショップ等でトライ＆エラーも含めて情報交換されています。ワークショップ参加とIUCNのゴリラSSP（種の保存委員会）の視察通訳をした経験から、海外のゴリラ飼育関係者が千葉市動物園の飼育改善を歓迎するのは確実と思われます。

動物園は絶滅危惧種の保全という社会貢献を担っています。私が翻訳した”ゴリラウィリーBとアトランタ動物園の再生”でメイプル教授が”来園者に自然保護を伝えようとしても質の低い飼育環境では信頼性されない”と書いています。確かにゴリラが幸せに生きられる動物園はファンも多く、野生の保全活動も実施できるほど支援され、地域住民に愛されています。

千葉市動物園でゴリラが幸せに暮らし、それを子どもたちが見ることで、熱帯雨林や環境問題に興味を持ち、保全活動に参加する勇気をもたらす可能性に期待して、この活動を応援しています。