関西医科大学｜起立性調節障害の子どもたちへ

　起立性調節障害の患者さんに私は「しんどくても完全に横になるのではなく、足は伸ばしていてもいいから頭が心臓より上になるように座りましょう」と伝えています。

 それは何故でしょうか？人間は直立二足歩行する動物ですから、頭は心臓より上にあり、心臓は重力に逆らって血液を脳に送り出しています。重力にさからって体を起こしたり、動いたりせずに横になっていると、心臓が頑張らなくてもよい状態から頑張れなくなってしまいます。おおざっぱにいうとこれがデコンディショニングです。

 では頭と心臓の高さが同じだったら、心臓はさほど頑張らなくて良いのでしょうか？…四つ足で歩き、頭と心臓の高さがほぼ同じ犬や猫はその通りです。また水の中に住む動物はあまり重力の影響をうけません。

　面白いことにヘビは生きている環境によって、心臓の位置（頭と心臓との距離）が違います。「樹上で生活するヘビ」は木に登るときに頭を上にして登っていくので、重力にさからって血液を脳に送らねばなりません。ですから心臓が頭部に近いところにあります。一方「重力のかからない水中にすむヘビ」はその必要がないので、心臓は頑張らなくても血液を送り出すことができるため、頭から3分の１のところになります。そして「草原を這って水平に移動するヘビ」は、樹上ヘビと水中ヘビの間の位置に心臓があります。

　四つ足の動物でも犬や猫と違い、キリンは首が長く心臓から遠い頭に血液を送らねばなりません。ですからキリンはとんでもなく高血圧です。では、首の長い恐竜は？？？重力生理の国際学会で聞いたお話では、心臓から頭に血液を送る動脈に弁があり、頭をあげても逆流しないようになっていたそうです、頸部の骨の化石から確認できるとか…

　話が脱線してしまいましたが、これで今回開発する運動療法では、臥位で運動を開始し、運動耐容能が上がればベッドを起こして頭部を挙げていく理由がご理解いただけましたか？　頭を上げると心臓はがんばって血液を送り出さなければならないのです。ですからベッドを挙げること自体がトレーニングの強度を上げることになります。

臥位でスタート！

ベッドを起こして強度をUP！

＜重力と循環との関係、もっと知りたいという方には、以下の2冊をお勧めします！＞

三井いわね．ヒトは宇宙で進化する　―無重力とかただの不思議な関係―、ポプラ社、1999．

森　滋夫．宇宙とからだ　無重力への挑戦、南山堂、1998．