プロジェクト概要

東京藝術大学の前身である東京美術学校は、明治時代、大正時代と、歴史的な建築物やモニュメントの制作に力を注いできました。今は焼失してしまったものも多い、それらにまつわる資料を引き継いでいくことは、日本文化の歴史の1ページを未来に引き継いでいくことにもつながります。東京藝術大学大学美術館はかけがえのないその資料の保存・修復に取り組み続けています。

 

今回私たちは、幕末・明治期の激動の時代を生きた絵師・柴田是真の作品≪千種之間天井綴織下図≫112枚の修復に取り組みます。

 

 

 

 

130年前に皇居の天井画の下図として描かれた、柴田是真の作品≪千種之間天井綴織下図≫の修復プロジェクトが始動します。

 

ページをご覧いただき、ありがとうございます。東京藝術大学大学美術館の岡本明子です。東京藝術大学には、明治時代から収集されてきた作品や芸術資料が約2万9,000件あります。この膨大な数の作品を、守り、公開し、未来へ伝えるのが大学美術館の役割です。


今回私たちが挑戦するプロジェクトは、柴田是真(しばたぜしん)によって描かれた112枚の≪千種之間天井綴織下図(ちぐさのまてんじょうつづれおりしたず)≫の修復です。≪千種之間天井綴織下図≫とは、旧皇居・明治宮殿の「千種之間」の天井を飾っていた綴錦の下絵のことです。

 

明治宮殿は第二次世界大戦末期の1945年5月25日の空襲によって類焼、天井画も焼失してしまいました。その天井画を見ることは二度と叶わないのですが、幸いにも下絵が残されており、東京藝大が保管しています。約130年前の≪千種之間天井綴織下図≫は、宮殿の豪華絢爛さを忍ばせる、藝大コレクションのなかでも人気の作品です。

 

しかし、その下絵はしわや折れ目、破れ目があるものや、中には部分的に酸化してしまっているものもあります。この作品を丁寧に裏打ちして、しわや折れ目を伸ばし、破れ目を補修するなどの作業が必要になります。

 

この修復の費用は、すべてを合わせると約350万円以上の費用が必要となります。どうか皆様、この柴田是真の作品を未来へ残していくために、お力添え願えませんでしょうか?

 

≪千種之間天井綴織下図≫(一部)の展示風景。 

 

 

激動の幕末明治を絵師、蒔絵師として生き抜いた柴田是真。明治宮殿《千種之間天井綴織下図》は、是真が晩年に描いた112枚もの優美で壮麗な草花図です。

 

柴田是真は文化4年(1807年)に江戸両国に生まれ、漆工家、絵師として活躍した人物です。蒔絵師として、また円山四条派の絵師として、幕末から明治にかけて活躍し、近世から近代への橋渡しをする役割を果たしました。激動の幕末・維新を生き、初代帝室技芸員のひとりとして明治24年(1891年)に85歳でこの世を去るまで、 絵を描くことと、蒔絵に生涯を捧げました。

 

卓越した画技とウィットに富んだデザインは、今日でも高く評価され、国内ばかりでなく海外にもすぐれたコレクションがあり、しばしば展覧会が開かれています。また近年は、漆絵と呼ばれる漆を塗り重ねた、だまし絵のような絵画作品が人気を集めるなど、明治の超絶技巧を代表する作家としても注目が高まっています。

 

柴田是真肖像。

 

 

東京藝術大学は昭和50(1975)年に、是真の遺族が震災や戦災を越えて大切に守って来られた原寸大下絵と写生帖を譲り受けました。現在、東京藝術大学が所蔵する是真の資料は、明治宮殿≪千種之間天井綴織下図≫112枚、写生帖95冊など、是真の芸術を凝縮させたような質の高い貴重なコレクションです。

 

とりわけ≪千種之間天井綴織下図≫の、鋭い観察に基づく、流麗かつ確実な線で精緻に描かれた草花の表現は、大作におとらない芸術作品として十分に観賞に値し、さらに、現代の様々なデザインの参考資料にもなりうる魅力を持っています。


 

現存する径97cm、計112枚の下絵。薄手の和紙に描かれた是真の精緻な草花図は、流れるような筆線と美しい色彩によって、リズミカルに鑑賞者の心を揺さぶります。


≪千種之間天井綴織下図≫に描かれる花は繊細で優美、一律に弧を描くようにデザインされていて、葉のあしらい、円のなかでの花顔の捉え方、花の組み合わせ、どれをとってもこの花にしてこの表現、と思わせる造形となっています。


下絵は和紙を何枚も継いだものに描かれており、原寸大なので一枚が約1メートル四方の大きなもの。それらの一つ一つに一種類ないし二種類ほどの草花が描かれており、それが112枚あります。


その下絵を見た方は、まずその巨大さに圧倒されます。勢いのある筆ですばやく描かれた植物画はいきいきと色鮮やかで、円形の画面にあわせるための構図も大胆かつ緻密に考えられており、まさに驚くべき完成度です。

 

≪千種之間天井綴織下図≫の112枚のうちの一部。

 

 

この巨大な草花図が天井に収まったさまは、どんなにか壮麗で美しかったことでしょう。是真が巨大な和紙に目いっぱいに草花の図を描き出したので、見た人は皆不思議に思ったが、これを天井にあげてみると、ぴたりとおさまり、人々は驚嘆したといいます。是真は宮殿の天井の高さを見越して、下から見上げた時に美しく映えるサイズに、草花を描きだしたのです。

 

また描かれた草花には、デザイン的な美しさと、写生に基づく精緻な描写が同居し、絶妙な調和を見せています。

 

東京藝術大学大学美術館(2005)『芸大コレクション展 柴田是真 明治宮殿の天井画と写生帖』  

 

 

具体的な修復方法

 

現在折りたたまれて保管されている≪千種之間天井綴織下図≫112枚の下絵を一枚一枚裏打ち(裏に紙を貼り重ねて補強)をして、平滑な状態に伸ばします。現在は薄い紙に下塗りをして、そこに直接絵が描かれているために大変脆弱な状態です。折り目から破れている箇所や、かつて修復した際に貼られたと思われる補紙が剥がれかかっている箇所がたくさんあります。

 

折り目から破れており、補紙が剥がれかかっています。

 

 

また、折りたたまれているため、紙が部分的に酸化している箇所があります。これらを可能な限りより良い状態にして、未来に伝えるために修復を行ないます。まず一枚一枚の状態を確認し、絵の具が作業中に流れてしまわないように、必要な場合には絵の具の剥落止めをします。

 

酸化して茶色くなっている補紙が点々と見えます。

 

 

つぎに、剥がれかかっている補紙、酸化している補紙を取り除いて、裏打ちをしつつ時間をかけて折れ皺を伸ばしていきます。最終的には最適な保存環境を整えて保管します。このような作業を繰り返し行い、≪千種之間天井綴織下図≫の修復を行なっていきます。

 

こうした作業を112枚分繰り返して、大量の紙作品の修復を行っていきます。

 

 

作品を後世に残し、先人が作り上げた歴史をこれからも紡いでいくために―。東京藝術大学大学美術館は、その役割を果たし続けます。


東京藝術大学には約2万9,000件の作品や資料がありますが、必ずしも良いコンディションのものばかりではありません。それどころか、人気の高い作品や、名品と言われるものでさえ、修復が必要なものがたくさんあります。しかし、大学では作品修復の予算が潤沢ではありません。

 

もちろん学内の研究室の協力も仰いで、毎年少しずつ修復をしていますが、そのなかでは、この是真の112枚という大部の紙作品の修復を行うことは容易ではありません。この先の100年、200年と、是真の素晴らしい仕事と、明治宮殿の天井絵にかけた人々の情熱を伝えていくためには、このプロジェクトが不可欠です。

 

修復が必要な是真作品112枚。

 


今回のプロジェクトも含めて、東京藝術大学では継続的に作品修復のプロジェクトを進めていく予定です。先人たちから引き継いできた作品は、展覧会を見に来られたお客様の目を楽しませ、心を豊かにするだけでなく、学生たちにとっても大切な勉強の材料となり、インスピレーションの源となっています。

 

未来においてもそうであるために、作品の修復は継続的に続けていかなければならない使命です。この活動を継続していくためにもどうか皆様ご支援、お力添えのほどよろしくお願い申し上げます。

 

 

税制上のメリットについて

 

■個人の寄附の場合:

個人で2,000円以上の寄附をされた方は、本学の発行した寄附金領収書を添えて確定申告を行うことにより、以下の措置が受けられます。

 

(所得税)

下記の金額が、その年の所得税の課税所得から控除されます。

課税所得の控除額=寄附金額(所得の40%を上限)-2,000円

 

(住民税)

所得税のほか、次の自治体にお住まいの方は住民税が一部控除されます。

・東京都足立区、神奈川県横浜市にお住まいの方

都道府県民税の控除額:(寄附金額-2,000円)×4%控除
市区町村民税の控除額:(寄附金額-2,000円)×6%控除
…合計10%

・東京都、神奈川県にお住まいの方

都道府県民税の控除額:(寄附金額-2,000円)×4%控除
…合計4%

※確定申告を行わない方は、上記自治体に住民税の申告を行っていただく必要があります。

 

■法人の寄附の場合:

寄附金は、全額損金に算入することができます。

 

【参考】文部科学省ホームページ「寄附金の税制について」

 

 

寄附金領収書の発行について

 

本学にご寄附いただきましたら、後日「寄附金領収書」を送付いたします。確定申告の際、証明書としてご活用ください。

 

■領収書名義:

Readyforアカウントにご登録の氏名を宛名として作成します。

■領収書発送先:

Readyforアカウントにご登録の「リターンの発送先ご住所」にお送りします。

■寄附の受領日(領収日):

Readyforから本学に入金された日となります。

■領収書の発送日:

12月ごろを予定しています。発行までお時間をいただきますが予めご了承願います。

 


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