南極望遠鏡の目的(8)：光では見えない銀河

遠方の銀河を検出するのに電波が非常に有利であることを述べました。実際にその例を示します。図のカラーはハッブル宇宙望遠鏡が高感度で観測した天空上のある領域の光学写真です。点のように見えるのは全部、銀河です。同じ領域をハワイにある英国のJCMTという電波望遠鏡が350GHzで観測して検出した銀河が等強度線で示したものです。望遠鏡の角分解能が光学望遠鏡に比べて悪いので広がって見えます。

　この電波で発見された銀河のところに可視光の対応天体が見えません。左側の２つの銀河のところに小さな光学銀河がいるように見えますが、距離が全く違います。可視光で見えている銀河は28億年先にあるのですが、電波で検出された左側の銀河は110億年先にある銀河です。このように電波で発見された遠方銀河が可視光では全く見えない例というのが非常に沢山あるのです。いかに電波の観測が重要かということがわかります。

　一方、図の可視光で見えている銀河は電波では見えていません。実は、遠方宇宙で可視光と電波で見える銀河がきれいに分かれるという現象が起きています（ダストが非常に多い銀河と非常に少ない銀河）。これがまた、大きな謎です。これも解明していきたいと思います。中井

（図：A.W. Blain, et al. 2002, Physics Report 368, 111より）