こんにちは!皆さまご支援ありがとうございます。コーディネーター兼リサーチャーの野島です。


今回の企画ではジョグジャカルタの「バイオテクノロジーアーティスト集団」なる Lifepatch のもとに滞在するわけですが、そもそもバイオテクノロジーアートってなんだよというツッコミを多数頂いたので簡単にお答えします。ただ、この辺りの活動は多岐にわたる & 分野をまたいだ活動が当たり前なので、あまりかっちりした定義はしにくいです。なおLifepatchの活動はバイオ技術に限らず機械は電子技術のようなハードウェア、あるいはソフトウェアのプログラミングも使っているのでバイオテクノロジーアーティスト集団と呼ばれています。彼らの活動詳細はまた追って更新していきます。


あまり馴染みがないかもしれませんが、バイオ技術を用いたアートは主に「バイオアート」と呼ばれます。ちょうど今年の1月に、美術雑誌の『美術手帖』で特集が組まれていたのでご紹介します。

ざっくりしたイメージを持ってもらうために、わかりやすい例となる作品を挙げます。

 

  • クラゲの遺伝子をウサギの遺伝子に組み込むことで作った蛍光色のウサギ(エドゥアルド・カック)
  • キノコの菌を特殊培養して作り出した繊維(キャロル・コレット)
  • ゴッホの親族のDNAからゴッホのDNAを再構成し、それをもとに生成したゴッホの耳(ディムット・ストレーブ)
  • 遺伝子組換えによって金属と一体化した絹糸を作りだすカイコガ(瀬筒秀樹)
  • 初音ミクの外見からそのDNAを作り、それをもとに初音ミクの心臓の培養を試みるプロジェクト(福原志保)

アートの中でメジャーな表現方法には、絵画や彫刻、映像、空間展示(インスタレーション)などがありますが、バイオアートは生きた生物そのものを表現メディアとして使って作品を作ります。人工細胞なども使われるので、かなりキワドいというか、社会的に論争を呼んでしまうようなものもあるのは事実です。だいたい20世紀末くらいからクローン技術や遺伝子組み換え技術などが急速に発達したことを受け、それらの技術がバイオアートシーンも発展させていったようです。


また、上には日本人の作品も紹介しましたが、日本でもバイオアートに関連する活動は盛んになってきています。山口にあるメディアアート施設YCAMの中にバイオリサーチのラボが作られたり、上記福原氏らが中心になってバイオクラブという活動が立ち上げられたり、日本人のバイオアーティストがヨーロッパの大きなイベントで表彰されたりもしています。2月にMeCAというメディアアート系の複合イベントがありましたが、バイオクラブはその中でも主要な役割を担い、バイオテクノロジーとアートに関する数日間にわたるキャンプを開催したりしています。ちなみにその主催メンバーにはLifepatchのメンバーも入ったりしています。

 

遺伝子技術が発達して生命さえも人工的に作り出せる可能性が出てくると、そもそも人はなぜ生まれるのかとか、どこからが人でどこまでが人ではないのかとか、そういった疑問が出てきます。アートは人間の価値観について考えさせるものが多くあり、それは社会におけるアートの大きな価値の1つだと思っていますが、バイオアートは先に書いたような疑問に対して考えさせたり、価値観を提示したりするもの、とも言えます。


生命の根幹に関わる部分を扱う作品という意味では過激に見えるし、まるで生命操作のように見えてしまうキワドい作品もあります。が、バイオアーティストの中にも、技術先行で色々とやりすぎてしまうことを危険だと考える人も確実にいるので、みんながみんなヤバい人というわけでは全然ありません。むしろこうした作品を通して、バイオ技術の発展でこういうこともできるようになったわけだけど、どう思いますか?といった問いかけをしてくれています。


バイオ技術の発展はさらに加速していくことが予想されるので、その中で人間が何を大事にし、どう生きていくべきかということを考えるのはとても重要なことであり、バイオアートはそのヒントを与えてくれます。10年後にはあなたの価値観や生命観がいまと大きく変わっている可能性がありますが、バイオアート作品に触れると、それに少しだけ早く気付けるかもしれません。

新着情報一覧へ