陸上競技バヌアツ代表選手団を南太平洋の地域オリンピックへ

JICA海外協力隊員/陸上競技バヌアツ代表監督の糸見涼介です。2019年に新卒でJICA海外協力隊の陸上競技指導者としてバヌアツ共和国に派遣。現在は2023年11月にソロモン諸島で開催されるパシフィックゲームズソロモン大会（南太平洋等諸国の地域オリンピック）に向けて選手強化を指揮しています。

バヌアツ陸上競技協会はまだこの地域が英仏共同統治下にあった1965年に設立され、翌1966年に国際陸上競技連盟(IAAF)に加盟しました。設立以来約60年、私たちは「陸上競技の普及振興を通じて国内の子ども・青年・大人すべての人々の心身の発達に貢献すること」を目的に、選手育成、国内大会開催、国際競争力の向上に取り組んできました。現在は2023年パシフィックゲームズ、2024年パリ五輪、2025年世界陸上東京大会、さらには2032年ブリズベン五輪を目標に、国内陸上競技のさらなる発展を目指しています。

私たちの取り組みは陸上競技発展を超えて国内の様々な課題解決に貢献してきました。

バヌアツは小国・島国・発展途上国であるが故、国外に行く機会が極端に限られおり、人口30万人ほどの小さな社会で、一生のすべてを過ごす人が大勢います。世界で一番幸せな国ランキング1位に選ばれるなど (BBC, 2006) 、幸せに満ち溢れた国であることは確かなものの、国内に若者が活躍できる場は限られており、仕事にありつけず街をふらつく若者の姿がそこかしこにあるのが現状。そんな中、バヌアツスポーツ界は体力と時間の有り余る若者に目標を与え、活躍できる機会を提供し、次世代のロールモデルを育成してきました。特にバヌアツ代表を経験した選手たちの精神的な成長はめざましく、バヌアツスポーツ界のみならず地域の発展を牽引するリーダーとして各地で活躍しています。

2019年7月に開催されたパシフィックゲームズサモア大会では当時バヌアツ代表コーチを務めていた私が指導したマーガレット・クラス選手が靴を履かずに長距離種目に出場。短期間で驚くほどの成長を遂げた彼女は、10000mで銀メダル、ハーフマラソンで金メダルを獲得と素晴らしい成績を残しました。首都から離れた島出身の彼女の村は現在も自給自足の暮らしを続けており、ほとんどの子ども達が学校へ行っていない状況。彼女の場合は父親の方針で中心街の学校に通っており、学校体育の時間に長距離走の才能があることが発覚。国内の陸上競技大会で優勝したことで代表チームに選出され、本格的なトレーニングを開始しました。その村で初めての世界の舞台で活躍した人物となり、現在は村の英雄として親しまれています。

現在は競技から離れ先生として村の子どもたちの教育に携わる彼女。子たち達がいつも目にする先生は島を超え、国を超え、世界で戦ったことのある人物。現在その地域では「第二のマーガレットを」を合言葉に大人や子どもたちが世界を目指して陸上競技などの様々なスポーツに取り組むようになりました。

バヌアツ陸上競技代表はパシフィックゲームズに向けて海外での強化遠征を続けています。

直近では8月7-10日：トリニダード・トバゴにてYouth Commonwealth Games(イギリス連邦国家間によるU18のスポーツ大会)、 8月19-27日：ハンガリーにて世界陸上に選手を1人ずつ派遣し、国際競争力の向上も図っています。しかしながらバヌアツのみならず太平洋島嶼国と世界トップレベルには競技力に大きな差があるのが現状。どんな世界大会よりも島嶼国内No.1を決めるパシフィックゲームズに大きな力が注がれています。パンデミックで中断していたトレーニングも再開し、国内外における選手強化活動が軌道に乗ってきました。国内トップの選手層は過去最高成績だった前回大会(金メダル1、銀メダル1、銅メダル4)よりも厚く、前回を超える成績を期待できるまでになりました。

しかしながらパンデミックで大打撃を受けた陸上競技協会には金銭的な余裕がなく、20人もの選手団に必要な用具を揃え、充分な強化活動を行うことができていません。今回のパシフィックゲームズ派遣には300万円が必要となりそのうちの半分が足りていません。

目標金額: 150万円

使用用途:

50万円 => 陸上競技用具購入費 (ユニフォームやスパイクなど1人あたり約2-3万円)

50万円 => 強化合宿費

50万円 => VISAの申請やパスポート購入など選手派遣に必須な事務費

皆様からのご支援は、選手派遣に必要な用具購入などに大切に使わせていただきます。まずは11月にソロモンで過去最高成績を収められるように、その先には2024年パリ五輪・2025年世界陸上東京大会など世界で戦える選手を育成できるように、さらには将来バヌアツのより多くの子供たちがスポーツでより充実した生活を送れるように。陸上競技は競技参加のハードルが低く誰でも取り組めるとしてスポーツを通じた教育やキャリア開発など途上国の発展に影響を与えられる存在として注目されています。コロナ禍で途切れてしまったバヌアツ陸上競技を再び進めれるよう、スポーツを通じてこの国未来を担う人材育成が進むよう、皆様の支援とともに全力を尽くしてまいります。

*バヌアツ陸上競技協会より寄贈を行うことおよび名称掲載の許諾を取得しております。

*記事はバヌアツデイリーポストより掲載許諾取得済み