藝大キャッスル 閉店。85年の歴史に「ありがとう」を届けよう。

キャッスル

85年間、ありがとう。

東京藝術大学の学生・職員の心と体を満たしてきた

洋食レストラン「キャッスル」は、

2021年11月30日をもって閉店しました。

惜しまれながらも学内での85年の歴史に

終止符を打ったキャッスルに、

私達なりの方法で感謝の気持ちを届けたい。

その想いのもと立ち上がったのが、

「キャッスルありがとうコンサート」と

このクラウドファンディングの企画です。

キャッスルの従業員の皆様に、

感謝の念が少しでも届くことを願って。

皆様からのご支援をお待ちしております。

キャッスルありがとうコンサート実行委員会

キャッスルありがとうコンサート詳細

日時：2022年4月28日（木）18：00開演

会場：台東区 旧東京音楽学校奏楽堂

出演：

■トランペット＆オルガン

　トランペット：杉木峯夫

　オルガン：浅井美紀

■木管四重奏＆ピアノ

　オーボエ：古部賢一

　クラリネット：山本正治

　ファゴット：岡本正之

　ホルン：山本真

　ピアノ：植田克己

■金管五重奏

　トランペット：野田亮

　トランペット：濱口勝治

　ホルン：岸上穣

　トロンボーン：東川暁洋

　バス・トロンボーン：黒金寛行

■ピアノ三重奏

　ヴァイオリン：澤和樹

　チェロ：黒川正三

　ピアノ：渡辺健二

曲目：

　ヴァヴィロフ　カッチーニのアヴェマリア

　モーツアル　ピアノと管楽のための五重奏曲 変ホ長調 K.452

　アーノルド　金管五重奏曲第1番 Op.73

　ブラームス　ピアノ三重奏曲 第2番 ハ長調 Op.87
　

※曲目、演奏者は都合により変更となることもあります。

 台東区旧東京音楽学校奏楽堂

杉木 峯夫｜実行委員長・東京藝術大学名誉教授

キャッスルには、学生時代〜教員時代と、実に色々な思い出があります。

学生時代（1966年頃）は、コップに入ったレモンジュースとカレーまたは盛り合わせなどが思い出されます。短い昼休みで如何に速く食べるかが競争でした。

また教員になってから（1986年以降）も色々な思い出があります。例えば毎年4月には管打楽器生全員がキャッスルに集合して、新入生の紹介を兼ねた歓迎会が行われていたり（その後、残念ながら途絶えてしまいましたが・・・）、美術学部の先生の退任記念懇親会で学生達と一緒に入場ファンファーレ・退場曲を演奏したり、毎年1月には両学部の先生方や定年退職された先生方と「新年賀詞交換会」が、また夏休み前にも美術・音楽両学部の懇親会があり、学部を越えた交流の場でもありました。・・・握り寿司や稲荷寿司、春巻きや唐揚げなど、サンドイッチやデザート、果物コーヒー紅茶が出されるとそろそろお開きかな・・・と豊さん始めとするキャッスルスタッフの心遣いの中で楽しい懇親会でした。

60歳になったある日、キャッスルへ来るようにと学生から連絡があり、行くと還暦祝いの席が準備されていました。一瞬驚いて帰ろうとしましたが、学生達に説得されて赤いチャンチャンコを着たのも良い思い出です。

他にもマグロ一本を差し入れられての「マグロパーティー」や転勤する職員の送別会でピアノと歌で送り出したことも思い出されます。この思い出を上げていくと話しが尽きません・・・・学生として1966年から2012年に定年退職するまでの46年間と退職してからの10年間、キャッスルの味は「盛り合わせ」に代表されるソースの味だと思います。本当にお世話になりました。

橋本 久美子 | 実行委員・東京藝術大学音楽学部大学史史料室

キャッスルさん三代への「ありがとう」

学部に入学してかれこれ50年近く藝大に通い、キャッスルで英気を養ったことになる。
 

修士課程を修了するとき、思いがけない仕事を授かった。大学百年史の編纂である。5年間と言われて始まったが、音楽篇全6巻を終えたときには20年を越えていた。
 

あるとき、テューバの大石清教授が「キャッスルのおやじ」（初代店主の福本亘さん）に昔話を伺うことになりお供した。それまでは食券を買う時の一言、二言のお付き合いだったが、キャッスル開業当時のこと、戦前の学生が食事を注文するときの様子、先生方のお好みで料理を作った話など、亘さんの実体験が語られると、当時の学生たちの表情や会話まで目の当たりにするような臨場感があった。男女学生が勝手に話をしないよう、注文のカウンターには男子学生と女子学生を隔てる衝立が置かれたが、その衝立を挟んで背中合わせに、衝立越しに叫んで待ち合わる強者もいたとか。先生方の体調や好みに合わせ、料理の内容や味付けを調整したという。昭和17年(1942)に予科に入学された大石先生は、翌年12月、ツケを残して「学徒出陣」で海軍に入団し、戦後、払いに行ったらお金の価値が違っていて奥様に叱られたそうだ。

コースで提供するフランス料理が正式の洋食とされた時代に、キャッスルは、一皿に盛り合わせる「アメリカ式」を基本とし、それが豊さんにも受け継がれた。亘さんへのインタビューは昭和60年6月なので、もう37年前になる。亘さんのお話は『東京芸術大学百年史　東京音楽学校篇第二巻』1520-1522頁に掲載されている。
 

空(す)いた時間に一人で食事に行くと、「一人？寂しいねえ」と、豊さんはレモネードにストローを２本入れて持って来てくださる。豊さん一流のおもてなしだった。大学史史料室が現在の２号館１階に入る前の半年ほど、工事の関係で大学会館の大関売店跡、つまりキャッスルの目と鼻の先が職場となった。引越しの挨拶をすると、夕方、ポット入りのコーヒーが運ばれてきた。ウェルカムドリンクかと思ったら、ポットサービスは大学会館から退去する日まで続いた。豊さんの愛情あふれるおふるまいは大勢の卒業生、学生、教職員の心を温めた。その採算度外視のサービスを裕子さんが心配されたのも無理はない。

「注文したら後ろに下がって！いつから藝大生やってるの！？」　料理を待つ学生たちを一声で整列させる裕子さん。混雑時間帯が過ぎれば、カウンターの外で学生の相談事や近況報告に耳を傾け、一人一人の顔と情報を瞬時に記憶する能力は豊さん譲りか。豊さんが亡くなられるとご夫君も協力され、ヘルシーメニューなど新展開もあった。が、強敵は新型コロナ。値上げもせず、数少ないお客様に変わらぬ味を提供しておられたが、ご苦慮の末、お祖父様、お父様の想いを受け継いだキャッスルの閉店を決断された。

長年にわたり、本当にありがとうございました。ご馳走様でした。

山本 正治｜実行委員・東京藝術大学名誉教授

©Ayane Shindo

キャッスルの思い出の味は　あの、少し硬めのハンバーグと、記憶が正しければセロリの入ったカレー。僕の学生時代には昔の奏楽堂の後ろにあり、昼休みには食事をする学生も多く、食事を受け取って外で食べた事もありました。僕がドイツから帰ってきた時には、新しい奏楽堂が出来ていてキャッスルも今の所にありました。味は懐かしい味のままでした。夏の時期は冷やし中華、冬は野菜の多く入ったラーメン。
今となっては全て懐かしい味です。

僕にとって一番大事なキャッスルの思い出は福本家の暖かい人柄です。父の関係で子供の頃にもキャッスルに行っていました。その時はゆたかさんのお父さんの（おじさん）時代でした。僕が藝大に入った時もおじさんに優しくしてもらい、僕がドイツから帰ってきたらゆたかさん、ゆたかさんの奥さんに気をかけてもらいました。ハンバーグなども貰って帰った事もありました。祐子さんの時代になっても僕にとってはキャッスルは特別な場所でした。無くなると聞いた時寂しく思いました。