詩「王冠」

クラウドファンディングとうとうはじまりました。どきどきしています。初日から、心のこもった応援いただいて、うれしく心強く、ありがとうございます。

 

蝦名泰洋さんは、伊丹イタリアというペンネームで『カール・ハインツ・ベルナルト』（1994）という私家版の詩集を出しています。

亡くなる前に、いつか詩集を出すとき、名前はどうしますか、と聞いたら、蝦名泰洋で、ということでした。

『カール・ハインツ・ベルナルト』から、詩をひとつ紹介します。詩人の河津聖恵さんが、推薦文で触れてくださった「王冠」という詩。

 

 

　　　　王冠　　　　　

 

だれかが

だれかを応援してる

そう思わなければ

つらいじゃない

迎えにくる人がいなかったら

いつまででも一人でジャングルジムにいた

生きるということは

家に帰ったあとも

あのジャングルジムで

一人で老いるということだ

けれども怖いのは

そんなことじゃない

だれでも

だれかに応援されてる

そう感じなければつらいじゃない

地球が青いのはひかりのせいだけど

ひとのまなこの裂け目から流れるものが

血でない理由はなんなんだろう

すくなくとも五千年にひとりのワタシが

りんごの木の下で待っている

ワタシが

おりてくるのを待っている

 

　　リンドヴァーグのヴォーカルはね

　　風の谷のナウシカでね

　　グリフィス天文台で

　　泣いているよ

 

だれでも

だれかに応援されてる

そう誤解する権利を

神さまに要求できなかったらつらいじゃない

その

　地球色の液体をぬぐって

　　りんごの木の下に

　　　おりておいで