1人の100歩より100人の1歩〜プロジェクト実施終了報告〜
【未来への一石が投じられました】
このプロジェクトは、劇団石(トル)のお芝居を子どもたちに贈ることで、福岡朝鮮初級学校に通う子どもたちの尊厳に寄り添い、心の成長を応援するという取り組みでした。
2021年10月20日。私たちは、福岡朝鮮初級学校の体育館にお芝居の舞台を用意し、その観客席に、皆さまからお預かりした支援金で購入させていただいたアルミ製のひな壇を組みました。
劇団石(トル)主宰・きむきがんは100%の力でマダンノリ(劇遊び)『カンアジトン(こいぬのうんち)』に挑み、抱腹絶倒・大興奮の時間と空間を子どもたちとともに創り上げてくれました。
誤解を恐れずに言えば、本来、文化芸術は人間の暮らしにおいて必要不可欠です。そしてそれは、年齢や性別、境遇やルーツなどに関係なく、誰にでも平等に享受する機会が保証されるべきです。中でも幼少期に本物の芸術に出会い、心を動かされる体験をするということは、メディアによって偏向した情報が混在する情報過多な現代において、普遍的な価値を届ける非常に重要な" 種まき "です。
「人間は感動の方向に育つ」とは、児童文学作家・椋鳩十さんが残した言葉です。
『カンアジトン(こいぬのうんち)』という作品には、誰にでも生きる意味があり、みんな誰かのために生きている。目立たないものも、弱いものも、どんなに小さく役に立たないように思えるものでも、それぞれの存在はとっても大事。私たちは知らないうちにお互い支えあいながら生きている。そんなメッセージが込められています。
本物の芸術を全身で受け止め、弾ける笑顔を見せて楽しんでいた子どもたちは、この日得た感動の方向に、すくすくと育っていってくれるのではないでしょうか。
そして、こうも思います。
"私たちの暮らしにある様々な矛盾や差別にお芝居で一石を投じる"、"ゴツゴツしていた人々がぶつかり合って丸くなり、仲の良い一粒の”石”になってほしい" という、「石(トル)」の意味に込められた願いのとおり、このプロジェクトによって確実に、キラキラと輝く貴重な一石が投じられたはず、と。
今回、本プロジェクトにご参加いただいた200名を超える支援者の方々および、有形無形様々な形でご支援・ご協力いただいた数え切れないほどの方々に、改めてお礼を申し上げます。そして何より、素晴らしい舞台を全力投球で演じてくださった劇団石(トル)には、感謝と感動しかありません!
本当に、本当に、ありがとうございました。
カムサハムニダ
대단히 감사합니다
【収支報告】
<収入>
クラウドファンディング決済完了総額 1,586,000円
<支出>
READYFORシステム利用手数料 209,352円
劇団石(トル)公演料 500,000円
(但し、ツアー経費(滞在費・交通費)負担分 50,000円を差し引く)
リターン諸経費 83,000円
・『キャラメル』公演チケット 19枚
・劇団石(トル)オリジナルTシャツ 2枚
・劇団石(トル)オリジナルエコバッグ 27個
・発送料
<福岡朝鮮初級学校への支援総額>
① クラウドファンディング 793,648円
② 実行委員に直接寄せられた支援金 265,000円
① + ② = 1,058,648円
<福岡朝鮮初級学校が購入したもの>
ひな壇 707,740円(税込み・送料込み)
検温器 44,799円(税込み・送料込み)
合計 752,539円・・・残り 306,109円
今後の使途として、朝鮮学校の方で計画中なのは・・・
体育館内の
・舞台用の装飾幕1点(5万円前後)
・照明器具2台(20万円前後)
・電気系統及び内壁補修補強工事(5~8万円程度)だそうです。
【会場作りの様子】
2021年10月17日。朝鮮学校と同じ和白の丘の上にある立花高校の齋藤校長先生の粋な計らいにより、1年生の生徒さんたちの有志が全面的に働いて、朝鮮学校の体育館に会場を作ってくださいました。引率の先生の話によると、生徒さんたちが自分から「やりたい!」と志願し、実際に朝鮮学校に来てくれた16人よりももっとたくさんの手が上がっていたそうです。
続々と駆けつける生徒さんたちを、
趙校長先生とハッキョの子どもたちがお出迎え
念願だった御対面を交わした齋藤校長ちゃんと劇団石(トル)
限られたマットをどう活用するかを考えながら…
いよいよひな壇登場!
とっても丁寧に組み立ててくれました
16人全員が余裕で座れることを確認して写真を撮ろうとしたら、
きむきがんが猛ダッシュで滑り込んできました(笑)
パイプ椅子ならべに取り掛かります
気持ちよく座れるように全部の座席を水拭きしてくれました
立花高校の生徒さんたちのおかげで、120人が座るための観客席が、あっという間に出来上がりました。それだけではなく、『カンアジトン(こいぬのうんち)』公演の後には25人の生徒さんたちが自主的に撤収に駆けつけてくれ、ものの10分ほどで体育館は元通りになりました。
日本社会で暮らす在日コリアンとして民族的アイデンティティーを育んでいる幼稚園・小学生の子どもたちのために、同じ丘の上の隣同士に並ぶ日本の学校の高校生たちが自らの意思で動いてサポートをしてくれる。朝鮮学校に通う子どもたちの尊厳に寄り添い、心の成長を応援するという私たちの願いが早くも可視化されている瞬間だなぁと、写真を撮りながら目頭が熱くなりました。
後日、会場作りをしてくれた生徒さんたちに、朝鮮学校に初めて来た印象を尋ねると、「イスがガタガタやった」「体育館がボロかった」「子どもたちの韓国語のあいさつがかわいかった」などの声が返ってきました。これでいいのでしょう。朝鮮学校のことを体で知って肌で感じ、まっさらな心で受け止めた高校生たちが、あと数年で社会に巣立っていくのです。こうやって、小さな一歩でもいいからちょっとずつちょっとずつ…でも確実に、社会の意識が「朝鮮学校」や「在日コリアン」という存在に向かっていくことが、大事だなと思いました。
今回生まれた、この、温かくてまあるい繋がりが、今後も繋がり続けて輪となって、そして広がっていくことを願わずにはいられません。
【贈呈式の様子】
『カンアジトン(こいぬのうんち)』の公演の前に、クラウドファンディングによって集まった支援金の贈呈式を行いました。
チョゴリを身に纏って司会をする先生
"もの"のうしろにあるものがたり
支援者の方々のコメントも紹介しました
目録を手にする、実行委員会共同代表 嶽村久美子(左)と趙星来校長(右)
「スイミー」を例えに、クラウドファンディングを説明
「今回の取り組みを、子どもにもわかるように実行委員会の方たちから説明してほしい」という校長先生からのリクエストに応え、実行委員会からは、みんなが座っているひな壇という"もの"の背景にある物語を、スライドを使ってお話しさせていただきました。さらに共同代表の嶽村が、絵本『スイミー』を用いて、さらに噛み砕いてわかりやすく話しました。「私たちはあなたたちと共にいるよ」というメッセージが子どもたちに伝わっていたらいいなと思います。
そういえば!…ちょうどこの日が誕生日というお友だちがいました。当然会場は、「センイル チュッカーハムニダ〜(ハッピバースデー トゥーユー) ♪」の大合唱と拍手に包まれました。なんとも微笑ましい光景でした ^ ^ ٭¨̮♫*
【今後について】
READYFORでのプロジェクトはこれで一区切りがつきますが、私たちの活動や夢はこれで終わりではありません。差別や分断のない社会をつくっていくために、福岡朝鮮初級学校と共同で行う取り組み、朝鮮学校に関連する行事やイベント、支援方法の紹介などなど…、今後もこのサイトページの新着情報を通じて発信をさせていただきます。
もちろん、また劇団石(トル)のお芝居を福岡で企画します!!!
ひとまずは、今回の劇団石(トル)のツアーをちょっとずつ振り返っていきたいと思っています。ゆっくりとお付き合いいただけると幸いです。
今後とも、劇団石(トル)福岡公演実行委員会を、どうぞよろしくお願いいたします。
2021年10月26日 劇団石(トル)福岡公演実行委員会
深水登志子が書きました