支援総額
目標金額 1,000,000円
- 支援者
- 202人
- 募集終了日
- 2021年8月26日
沖縄からの風 <前編>
阿部岳さんの講演会に参加しました。講演タイトルのように、まさしく「沖縄からの風」が吹き抜けていった、そんな講演会でした。(※ 文中のオレンジ色の文字をクリックするとリンク先にとべます)
沖縄的カウンター
阿部さんの那覇ヘイト街宣への取材のきっかけは大きく3つ。
2017年に、ヘイトスピーチ問題の第一人者である師岡康子弁護士、神奈川新聞の石橋学記者、川崎市の崔江以子(チェ・カンイジャ)さんと出会ったこと。
2019年に、同じ新聞記者として影響を受けた石橋さんが、レイシストから名誉毀損で訴えられたこと。
同じく2019年、川崎市がヘイトスピーチに刑事罰を科す、全国初の条例(「差別のない人権尊重のまちづくり条例」)を制定したことだったそうです。
川崎でのきっかけから足元の沖縄を見直し、それまで5年も続いていた毎週水曜日の「シーサー平和運動センター」の定期街宣の現場に向かいました。聞くに耐えない街宣の様子を記事に書くと、「よくぞ書いてくれた」と反響が広がりました。
阿部さんが最初に書いた反ヘイトの記事
その後もヘイト街宣は止みませんでしたが、一度記事を書いた責任感から現場に通い続けると、やがてTwitterでの呼びかけに結びつき、2020年5月20日の水曜日にはカウンターをする市民有志が20人近く集まったといいます。
興味深かったのは、阿部さんが語るカウンターの様子でした。
「先回りして座り込む」
「(レイシストに)場所を渡さない」
「お茶やお菓子を手にゆんたく(おしゃべり)する」
「映画情報や本の交換をする平和的サロン」
ガジュマルの木陰に集まって"ゆんたくはんたく"する様子は、罵声と怒号が飛び交うような一般的なカウンターのイメージとはまるで重なりません。なんと、北関東から段ボールいっぱいのお菓子が届いたこともあったそうです。
そんな沖縄カウンターズ(Twitterアカウント @no_hate_okinawa)の様子を、阿部さんは「ゆんたくカウンター」と形容していました。
また、毎回掲げる虹色フラッグは、関東で活動する「NOHATE 風を届け隊(Twitterアカウント @nohatewindsblo1)」がデザインして贈ってくれたもので、他にも新宿アルタ前や秋葉原や川崎駅前など、「各地のカウンターは横につながり合って、刺激を受け合っている」という報告には、グッときました。
“包み込み力”が半端ない
沖縄カウンターズは、2020年5月20日からカウントを始め、つい先日の2021年7月7日水曜日に、那覇のヘイト街宣連続完封60週を達成しました。「実際にヘイト街宣を止めた少ない例」として、沖縄カウンターズの快挙は本土のカウンターに称賛されているそうです。
阻止し続けた1年3ヶ月以上の期間、阿部さんはいくつも印象的な記事を書いています。
例えば、身長180cm・体重100kg超の見るからに屈強な身体で「僕、右なんで」と近づいてきた男性と、沖縄カウンターズとの交流の話や、
職場で外国人差別を受けているタイの方と、カウンターを飛び越えた交流が生まれた話
<「私はカウンターに救われた」那覇市役所前1年 タイ女性、参加者と交流>
などのように、阿部さんを通して見えてくる沖縄カウンターズの地道な取り組みと広がりの変遷は、なんだかとても温かくて希望を感じるものでした。
タイの方の「小さくなった心が大きくなったみたい」や、阿部さんの「沖縄のカウンターの皆さんの”包み込み力(りょく)”はすごいんですよ」という言葉に、高江や辺野古での日々が一瞬にして呼び起こされて、ちょっとウルウルしてしまいました。
ライバル社も駆け付けてくれた
とはいえ、阿部さん個人に対する攻撃も当然増えていきました。阿部さんが取材のためにレイシストに接触する際に構えたスマホの動画には、阿部さんが近づいただけなのに「皆さん、見てください。これは当たり屋的行為です!」「阿部記者が言論妨害をしてきます!」などと、窓を閉めた車の中から拡声器を通してことさらに騒ぎ立てる様子が映っていて、コントかヤラセ芝居かのようでした。
レイシストの車の窓に映り込む阿部さんのスマホ
正面は県議会で右奥が県庁、那覇のど真ん中
しかしそもそも、その場所は那覇市役所前というロケーション。街宣車からの大音量は、県庁の中で働いている人たち含め、数千人が聞いているレベルです。レイシストたちから拡声器で「阿部が~」「阿部が~」と騒ぎ立てられていると、それを聞きつけた県庁記者クラブや琉球新報社内から記者たちが駆けつけてきてくれたこともあるのだそうです。
「たまたま阿部がたたかれている」のではなく「これは、差別とたたかう側への攻撃だ」と記者仲間たちがすぐに感じ取ってくれたとして、「うれしかった」と話していました。阿部さんは、「差別に反対する人間・抗議する人間という属性に当てはめて攻撃するというのは、レイシズムの一環でヘイトの延長線上にあるもの」と説明していました。沖縄二紙は熾烈なライバル同士だけれども、ヘイトに向かって一緒に応戦したという、これもまた印象深いエピソードでした。
条例制定へのハードル
気になる条例制定ですが、沖縄県では、すでにその動きが進められています。沖縄カウンターズの方々による「ヘイトスピーチ・セミナー」やロビイング活動も、条例制定の必要性を促したんだと思います。
ですが、阿部さんによると、どうやらいま県議会の中では、大きく2つの懸案事項によって議論が停滞しているとのこと。1つは罰則をつけるかどうか。もう1つは「沖縄ヘイト」を対象に入れるかどうか。阿部さんは両方盛り込むべきという意見でした。
玉城デニー知事が「制定する」と明言しているにもかかわらず事務方の動きが鈍いそうです。罰則付きの条例を制定した川崎市でも、今なおヘイトスピーチにさらされているという現実に「腰が引けている」のか…「事務方のサボタージュ」か「知事の指導力の弱さ」か…もしくは「どちらとも」かもしれないそうですが、私は、理念法にとどまらない実効性のある条例が沖縄に誕生するよう、応援したいと思います。
無関心という罪の重さ
2013年の、オスプレイ反対の銀座でのパレードの写真が表示されました。当時の那覇市長・元県知事の翁長雄志さんが「本土の沖縄差別」を肌で感じ、後に「イデオロギーよりアイデンティティ」「誇りある豊かさを」というスローガンを掲げる大きなきっかけとなったパレードです。
沖縄県下の全首長による「オスプレイは落ちるから、危ないから、(沖縄への配備は)やめてください」というこの主張は、思想とか信条とかではなく、命の問題としての訴えなのに、レイシストたちによってあからさまなヘイトが投げつけられました。しかし翁長さんは当時を振り返り、「私がほんとに心が寒い思いをしたのは、レイシストではなく無関心の沿道の人たちだった」と取材に答えたそうです。阿部さん自身も、沿道にいた買い物中の女性に話を聞いたら、沖縄のことを気の毒がりつつも「でも、この警備の費用は私たちの税金から出ているんでしょ」と言われ、本土の無関心をつくづく感じたと話していました。
2016年の、高江のヘリパッド建設の際には、大阪から派遣された機動隊員が、座り込み抗議者に向けて「土人」「支那人」という差別用語を浴びせました。
実はこの発言現場には、当時、関西から在日特権を許さない市民の会が来ていて、この差別用語を使ったヘイトスピーチを行っていたのだそうです。若い機動隊員は、それに煽られるような形、いわばネトウヨと警察とが渾然一体となった状態だったそうです。
しかし、当時の沖縄及び北方対策担当大臣 鶴保庸介は「差別とは言い切れない」、当時の大阪府知事 松井一郎は「どっちもどっち」「反対する側もめちゃくちゃ言ってるでしょ」と、官僚と派遣元のそれぞれのトップが問題視しないどころか差別発言を庇いました。「全然”どっちもどっち”じゃない」と阿部さんは断言します。これは、地元住民が「やめてくれ」と言って身体を張って抵抗している基地(ヘリパッド)を無理やり建設しようとしている国=公権力から投げかけられた、明確な「ヘイトスピーチ」なのだと。
「まるで民から官まで沖縄ヘイトに染め抜かれている」、阿部さんはそう表現していました。そのことばには、日本人としての「傍観することの罪深さ」や、「社会の無関心によって「ヘイト」が許されてしまっている現状への危機感」が込められているようでした。
差別者は笑ってる
のりこえねっと代表の辛淑玉(シン・スゴ)さんについても触れられました。DHCテレビジョン制作の『ニュース女子』という"地上波"で、"名指し"での差別の威力は格段にすごく、その被害の実態を聞いて恐ろしくなりました。辛さんは生活圏の駅で罵倒されるようになり、身の危険を感じて国外に逃れざるを得ず、「私に起こることが何かの引き金になるのが怖い」と周囲に漏らしていたそうです。
阿部さんは、辛さんの場合は「沖縄」と「在日コリアン」と「女性」を一緒くたにした"複合差別"だと言っていて、それはもう、生きた心地がしなかったはずです。
ドイツへ行ったのは、実質「亡命」だった
BPOは番組を放送倫理違反、人権侵害に認定
辛淑玉さんが、制作元の「DHCテレビジョン」(当時は「DHCシアター」)と、番組で司会を務めた長谷川幸洋氏(当時「東京新聞」論説副主幹)を、名誉毀損だとして訴えた裁判の証人尋問を傍聴した阿部さんの報告で、一番ショックだったのは、これだけの想像を絶する被害を被った辛淑玉さんが、番組プロデューサーと長谷川氏との3人でいっしょに宣誓文を読まされたという話です。裁判所のあまりの配慮の無さに、しばらく信じられませんでした。あり得ないと思いました。
「ニュース女子」の内容はデマだらけだった
そして証言中も、番組側の2人はヘラヘラと笑い、被害者ポジションに逃げ込んで茶化し、尋問の場でもヘイトが繰り返されたそうです。「娯楽として差別をしているようだった」という阿部さんの感想に、ヘイト問題の闇の深さを感じました。なぜ被差別者が、司法の場においてもまた身も心も切り刻まれる思いをしないといけないのか、怒りがわきました。
<後編>に続く
深水登志子が書きました
リターン
3,000円
応援3,000円コース
感謝のメールをお送りします。
- 支援者
- 65人
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2021年9月
3,000円
手作り栞3,000円コース(数量限定)
朝鮮学校の子ども達が心を込めて作った栞をお送りします。
- 支援者
- 24人
- 在庫数
- 25
- 発送完了予定月
- 2021年9月
5,000円
応援5,000円コース
感謝のメールをお送りします。
- 支援者
- 39人
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2021年9月
5,000円
エコバッグ5,000円コース
劇団石オリジナルエコバッグをお送りします。
- 支援者
- 27人
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2021年9月
10,000円
応援10,000円コース
感謝のメールをお送りします。
- 支援者
- 26人
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2021年9月
10,000円
キャラメル観劇10,000円コース
劇団石ひとり芝居キャラメル福岡公演(10月16日13時コミセンわじろ)チケット1枚をお送りします。
コロナウイルスの影響によりキャラメル福岡公演が中止となった場合、公演可能な状況になった際に必ず再公演を行います。再公演のチケットをお送りいたします。
- 支援者
- 16人
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2021年9月
30,000円
応援30,000円コース
感謝のメールをお送りします。
- 支援者
- 6人
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2021年9月
30,000円
キャラメル観劇・Tシャツ30,000円コース
・劇団石ひとり芝居キャラメル福岡公演(10月16日13時コミセンわじろ)チケット1枚
・劇団石オリジナル オーガニックコットンTシャツ
をお送りします。
コロナウイルスの影響によりキャラメル福岡公演が中止となった場合、公演可能な状況になった際に必ず再公演を行います。再公演のチケットをお送りいたします。
- 支援者
- 1人
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2021年9月
50,000円
応援50,000円コース
感謝のメールをお送りします。
- 支援者
- 5人
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2021年9月
50,000円
キャラメルペアチケット・Tシャツ・エコバッグ50,000円コース
・劇団石ひとり芝居キャラメル福岡公演(10月16日13時コミセンわじろ)チケット2枚
・劇団石オリジナルオーガニックコットンTシャツ
・劇団石オリジナルエコバッグ
をお送りします。
コロナウイルスの影響によりキャラメル福岡公演が中止となった場合、後援可能な状況になった際に必ず再公演を行います。再公演のチケットをお送りいたします。
- 支援者
- 1人
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2021年9月