福岡朝鮮初級学校の子ども達にお芝居を届けたい

　 日本政府は、一貫して朝鮮学校を認めようとせず、「日韓条約」締結後の1965年12月の文部次官通達には、「民族性又は国民性を涵養することを目的とする朝鮮人学校は、…各種学校として認可すべきではない、…なお朝鮮人を含めて一般に我が国に在住する外国人を専ら収容する教育施設については…新しい外国人学校の統一的取り扱いをはかりたい」とある。「学校」とは認めないという、民族教育への「敵意」を感じる。

 

　 しかし一方、1960年代に入り、各都道府県が朝鮮学校を各種学校として認可し、1975年にはすべての朝鮮学校が各種学校となった。福岡でも1966年２月、福岡県知事より学校法人福岡朝鮮学園として各種学校認可された。1965年文部次官通達は、一旦は事実上無効化されたとも言えるが、かといって、朝鮮学校に対する差別的扱いがなくなったわけでは決してない。

 

　 金平の学校はいよいよ手狭となり、1969年「福岡朝鮮初中級学校建設委員会」が発足し、新校舎建設へむけて具体的に動き出した。
　 そして1973年４月、福岡市東区和白に学校が移転し、1974年４月に6584坪の広大な敷地に鉄筋3階建て校舎、１千人を収容できる体育館が竣工した。建設費５億３千万円は、広範な在日コリアンの方々の寄付と朝鮮民主主義人民共和国からの教育援助費でまかなわれた。この頃は建設ラッシュで、工事途中でセメントが足りなくなり、一時工事を中断して、朝鮮民主主義人民共和国から贈られたセメントで工事を継続した。工事の一時中断と種類の違うセメントを使ったことで、校舎のセメント部分に少なくないひび割れが発生してしまったという。

 

建設中の和白の校舎

 

竣工した和白の校舎

 

　 移転と同時に中級部を併設し、校名を「福岡朝鮮初中級学校」と改称。1974年４月には九州朝鮮中高級学校（北九州市八幡西区）に通っていた校区内の中学生が同校に移籍し、大牟田朝鮮初級学校を統合移転した。
　 かつて、同校には福岡県外の佐賀、大分、熊本、長崎、鹿児島、宮崎、対馬から寄宿舎で生活しながら通う児童・生徒もいた。

 

　 2000年代に入り、少子高齢化に加え、在日コリアンと朝鮮学校を取り巻く状況が非常に厳しくなる中で、同校も園児・児童数の減少、そして校舎の老朽化が深刻である。2004年には中級部が九州朝鮮中高級学校に統合移転され、福岡は再び単独の初級学校に戻った。寄宿舎生活をおくる子どももいなくなり、現在は福岡市内および周辺地域から通っている。一方、学校が和白に移転してからも、金平の旧校舎は幼稚班園舎として使われたが、2005年に和白に移転統合された。その後、金平の旧校舎は老朽化を理由に2019年末取り壊された。

 

　 今年2021年1月31日に同校体育館で開催された「福岡朝鮮初級学校創立60周年記念式典および文化芸術発表会」において、同校の民族教育発展のための「５カ年計画」に関する骨子が発表された。その中で、老朽化した校舎を解決するため新たに「建設委員会」を発足させ「新校舎建設計画」を策定することが提起された。

 

現在の和白の校舎

 

　 福岡朝鮮初級学校は、日本全国に今ある朝鮮学校の中で、最も朝鮮半島に近いところに位置する朝鮮学校である。校舎の最上階から博多湾～玄界灘を望むことが出来、学校に近い和白干潟では朝鮮半島と日本を行き来する渡り鳥のクロツラヘラサギなどが観察されている。毎年８月におこなわれる「納涼祭」（昨年2020年はコロナ禍のため中止）や、グラウンドの貸し出しなど、地域の人々との交流も盛んだ。

 

納涼祭の様子

　 福岡朝鮮初級学校とそこで学ぶ子どもたちの未来を明るいものとするため、私たちもできること、なすべきことを一つ一つ重ねていきたいと思う。

 

【参考資料】
「私たちの街の朝鮮学校」と呼ばれるように…
朝鮮学校のある風景 PUBLISHED 2018年5月25日・UPDATED 2018年7月28日
https://www.urihakkyo.com/2018/05/25/hukuoka-csr/

〈特集・ウリハッキョの今〉福岡初級／「一心団結」で守りつづけた民族教育
朝鮮新報 2020.10.21
https://www.chosonsinbo.com/jp/2020/10/21-13/

文科省による朝鮮学校差別を検証する
https://imadr.net/books/203_4/

〈特集・ウリハッキョの今〉福岡初級／沿革
朝鮮新報 2020.10.21
https://www.chosonsinbo.com/jp/2020/10/21-14/

福岡初級創立60周年記念式典および文化芸術発表会／学び舎を守るため、代を継ぎ力と知恵を
朝鮮新報 2021.02.02
https://www.chosonsinbo.com/jp/2021/02/02-22/

 

（柴田一裕）