福岡朝鮮初級学校の子ども達にお芝居を届けたい

　最近、西日本新聞に載った記事です。

箱崎の元寇防塁と朝鮮使節 戦没兵士を悼み、白砂青松を詠う
2021/8/10 17:30 (2021/8/10 17:53 更新) [有料会員限定記事]
西日本新聞
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/783058/

　九州大学箱崎キャンパスの跡地に出現した石築地跡と隣接する溝状遺構が、この6月、国史跡の元寇防塁に追加されたことを伝える記事の中で、「元寇より140年後にこの防塁を訪ね、戦没戦士を悼んだ朝鮮王朝の使節がいた。訓民正音（ハングル）の創製を主宰した世宗（セジョン）大王時代の宋希璟（ソンヒギョン）（1376～1446）である。」としています。

　私たちは一般に、日本の学校教育の中で、「元寇」（文永の役・1274年と弘安の役・1281年の2回にわたるモンゴル帝国・元の日本侵攻）とは「モンゴル（元）軍と鎌倉幕府下の武士の戦い」というように刷り込まれています。しかし、思い返せば、大陸騎馬民族のモンゴル帝国（元）の軍隊は、大量の軍人や軍馬を渡海させるだけの水軍や軍船を持っていたでしょうか？

　実際には、「元寇」前の1231年から1259年の間に6回に渡ってモンゴル帝国は朝鮮半島に侵攻し、高麗王朝（918年～1392年）を降伏させ従属させました。高麗王朝は30年に渡ってモンゴル帝国へ抵抗し、高麗王朝の降伏後も武人勢力が首都警備軍である「三別抄（サムピョルチョ）」を主力として反乱を起こし、1273年まで抵抗を続けました。

　その後、モンゴル帝国・元の皇帝フビライ・ハーンは、服属した高麗に対して、日本遠征のための造船を命令しました。わずか10ヶ月の間に大型船300艘、中型船300艘、給水用の小型船300艘、あわせて900艘の船を作り、そのための人夫3万5千人と食糧、材料の木材を出すことになり大変な出費となり、船ができると今度は水夫と軍人として高麗の人々が駆り出されました。

　「元寇」での元軍は、実際には元軍と高麗軍との連合軍であったので、その戦死者の中には相当数の高麗の兵士もいたはずです。上記記事中「朝鮮王朝の使節が戦没兵士を悼んだ」の「戦没兵士」というのは、その高麗軍兵士のことを指しているのですが、前提としての高麗の歴史を知らないと、そのことが読み取れないかもしれません。

　元軍の侵攻の際に、対馬と壱岐で住民が大量虐殺されたことが日本側に伝えられたため、その報復として、荒天で転覆し志賀島に漂着した元軍兵士が地元の武士たちによって皆殺しに遭ったといいます。現在、志賀島や新宮町の相島など博多湾周辺の複数の場所に、元軍兵士の首を埋めたと伝えられる「蒙古塚」「首塚」が残っています。

志賀島の「蒙古塚」

　かつて今から2000年前、現在の朝鮮学校のある和白地区の丘陵の西側の新宮湊～三苫～和白潟の間は、三苫水道といわれる外海と博多湾がつながる水路となっていて、今の海の中道は「三苫島」「大岳島」「志賀島」の３つの島からなっていたといいます。それが、徐々に砂の堆積により、「元寇」の頃には徐々に陸地化が少しずつ進んでいたとのことで、弘安の役の際に香椎・和白方面の守備をしていた大友泰時の軍勢が、志賀島を占領した元軍を攻略するために、ここを通り志賀島へ向かった、と伝えられています。

参考資料：
「ふる里のむかし わじろ」2006 和白郷土史研究会編

（柴田一裕）