大坪武廣さんからの開発エピソード　～スライドリコーダーの生みの親～

　スライドリコーダーの生みの親である大坪武廣さん（工学博士）から、指一本で奏でるスライドリコーダー開発記をお寄せいただきました！

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　みんなが音楽を楽しめる笛がほしい。その思いから生まれたのが、片手の指一本で演奏できるスライドリコーダーです。

　このスライドリコーダーは、従来のように複数の指で音孔を開閉するのではなく、片手の指一本、あるいはその一部でも音を奏でられるように設計された、新しいスライド式の笛です。従来のリコーダーの操作が難しい子どもたちにも、気軽に音楽の世界にふれてほしい。そんな願いから、開発は始まりました。音楽は「すべての人が平等に楽しめるもの」であるという信念が、長い歩みを支え続けてきました。

　完成に至るまでには、数え切れないほどの試行錯誤がありました。特に、「片手の指一本で操作できる構造」をどう実現するかにおいては、何度も壁にぶつかりました。しかしある日、かつて考案していたハーモニカ用のスライド式口唇保護ピースからヒントを得ました。そして、「片手の代わりに口で歌口をくわえる」という新しい発想が生まれたのです。試作を重ねた結果、ようやく「歌口をくわえて息を吹き込みながら、外周のスライダーを前後に動かして音孔を開閉する」という二重構造の笛が完成しました。息を吹き込むと、澄んだ音色が広がり、胸の奥にまで響きました。完成までにかかった年月は、約七年に及びました。

　このスライドリコーダーは、小学生だけでなく、手や指に障がいのある人々にも新たな音楽の可能性を開いています。ある日、一通の手紙が届きました。

「片手が不自由で、楽器の演奏はあきらめていましたが、この笛のおかげで音楽を愛する喜びを取り戻せました。」

その手紙を読んだ瞬間、私はあらためて音楽の力を実感しました。

　音楽には、人の心を癒し、命に新たな光を灯す力があります。このスライドリコーダーが、音楽を楽しみたいすべての人の笛となることを、心から願っています。

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　大坪さん、心温まるストーリーと素敵なイラストをありがとうございました！
　また、2025年10月11日付の佐賀新聞にて、
「障害のある人も演奏を　7年かけて完成、大坪さん（みやき町）開発の『スライドリコーダー』　東京で発表会」
と題し、大坪さんのご活躍と、ハビリスジャパンでの発表会の様子が紹介されました。

（ご参考）
佐賀新聞の記事は こちら　https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1570987