9月24日・インカーブ主催シンポの基調講演をNHK・Eテレ「オイコノミア」の解説でもお馴染みの東大大学院の松井彰彦教授にお願いしました。いま、シンポ終盤に開催される松井さんと私の「対談」のネタ集めをしています。まずは、オイコノミアから(20170607)松井さんの言葉を拾ってみたいと思います。松井さんは、突然「心サルコイドーシス」という100万人に1人の難病(心臓の動きが弱い。ペースメーカーを装着)になり、世の中のマイノリティの存在を再認識したといいます。そして、マイノリティが多数派にどのように関わっていくのかを問うた「マイノリティの経済学」をテーマに選ぶことになったそうです。
これまでの経済学で「市場」といえば「需要と供給」でしたが、2010年のノーベル経済賞を受賞した「サーチ理論」は、「自分にあった相手を探すことで『市場』が成立する」ことを示したといいます。経済学は、人間の経済活動の分析から捉えられていますが、もとを正せば<人間関係をどう科学するか>が根本にありました。経済学の祖:アダム・スミス(スコットランド・1723〜1790・『国富論』『道徳感情論』)は、経済学に「共感Sympathy」)を持ち込んでいます。一旦、経済学は「モノの消費」に舵をきった訳ですが、現代の経済学はもともとの「人間関係を考える」共感の経済学にシフトしているのですね。共感とは「相手のことを考える」・「相手の立場に立ってものを見る」ことです。
一方、松井さんは、障がい者が「ハタラク」ことについて次のように述べています。「トランプ大統領がラストベルトの製造業を保護しようとするように、『障害者だから保護する』『冷徹な競争原理が支配する市場の場には出さない』という考えだけでは、その人の価値を見いだすことはできない。障害者は福祉の対象かもしれないが、だからと言って市場で活躍する機会が失われる必要はない」(朝日新聞20170429)。弱肉強食だけではない、人の価値を見出す力が、市場にはある。その市場は、カネのやりとりだけではなく、お互いを「共感」する場であり、その「共感」でやり取りされる感情(エネルギー)もハタラクと呼ぼう!私は、松井さんの語りをこのように解釈しています。障がい者の法定雇用率に現れないハタラキ方の提案です。障がい者の創作活動で生み出された「作品」は、お互いが共感する装置です。場合によっては彼らの収益を確保する装置になりえるのです。彼らが市場に出たい(出たくない人を支援者が引っ張りだすことは論外)と言った時(つまり自己実現)の「下支え」する制度と支援者のクオリティがすべてのキモ。障がい者の創作活動で言えば福祉とアート・デザインの両輪がバランスよく起動/継続することで前進するはずです。経済学者の松井さんは「障がい者の創作と市場」をどのように解釈し、その未来を述べるのか。共感の経済学、楽しみにしていてください。

筆:今中博之
http://incurve.jp/sympo.html

 

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