無罪のあと、ちゃんとしよう！プロジェクト

　弁護団の木村です。 

　もし，原告の優子さんが運転免許の取消処分を受けていなければ（あるいは取消処分が無効であれば），優子さんの免許の有効期限は，今年の８月１７日です。

そこで，弁護団としては，８月１７日を過ぎた場合に「訴えの利益」がなくなるのではないか，

つまり，たとえ，免許の取消処分に効力がないと裁判所に判断してもらっても，

免許の有効期限が切れた以上，意味が無いとされて，運転免許を取り戻せなくなるのではないか，心配してきました。

　この点について，最高裁昭和４０年８月２日判決（民集19巻6号1393頁）は「 自動車等運転免許の取消処分の取消を求める訴訟の継続中、当該運転免許証の有効期間が経過した場合でも、その訴は利益を失われない」という旨，判断しています。

　この最高裁判決は，裁判所が運転免許取消処分が違法であると判定した場合には，たとえ運転免許の有効期間を過ぎて，形式的には更新期間を過ぎていても，運転免許の更新ができると考えて，訴えの利益を認めているものです。

　昭和４０年と古い判決であることもあって，弁護団は，この最高裁判決の考え方が，優子さんのケースにも妥当するのかどうか，あれこれ悩み，考えました。

そして，「この最高裁判決の考え方は，現在も通用する」との結論に達しました。

　ご紹介した最高裁判決の調査官解説（判決に関与した最高裁判所調査官による解説）には，このような一説があります。

「その取消処分が違法で取り消さるべきものであったとすれば、被処分者を免許の更新のできないような羽目に置いたのは、処分庁の責任といえよう。そこで上告判決は、道交法が免許の有効期間を設けた目的は、運転適性を維持するかどうかの定期的の検査を強行するにあるものと認め、処分庁側の責に帰すべきような事由によって免許証の行使のできない者に対する運転適性の定期検査は、その事由が解消して再び免許証を行使しうる状態を回復する際まで延期されるものと解しても、なんらその制度の趣旨に反するところはなく、またそのように延期して適性検査の機会を与えることが信義則にも適合するものとして、前掲判示のような解釈をとったものと思われる。そして、このような検査の時期を延期するに足る事由のあるときは、法定の有効期間の経過によって免許は絶対的に消滅するものではなく、後に検査を経て更新されたならば、前述のように、免許は一貫して継続するものと解されよう。」

　つまり，運転免許取消処分が違法で効力がない場合，免許の更新ができないような羽目に置いたのは，処分庁（公安委員会）の責任だ，だから，期間が過ぎても更新はできる，ということです。

刑事裁判の判決では，警察が考えた事故態様は真実とは違っており，優子さんに過失は無かった，と判断されています。

優子さんの運転免許取消処分は，刑事裁判の起訴と同じく，真実とは異なる，間違った事故態様の理解に基づいてなされた誤った処分ですから，重大な違法があって，無効というべきです。

したがって，優子さんが，今現在，免許証を取り上げられて，免許の更新ができない様な羽目に置かれているのは，公安委員会の責任です。

　私達は，福岡地方裁判所で，きちんと，このことを認めて頂き，運転免許取消処分の無効を確認する判決を得て，優子さんの手に運転免許を取り戻したい，と考えています。

　支援の輪を広げていただきたく，シェアをいただけると幸いです！