誰もいなくならない社会を作りたい！　認知症の徘徊対策インソール

 

こんにちは！株式会社イル、代表取締役の山本 裕晃です。

私達は認知症や高齢者の方を安心して見守ることができるGPSを内蔵した靴の中敷き(インソール)デバイスを開発しています。

 

認知症による大きな問題の一つに「徘徊問題」があります。

現在４０代以上の行方不明者のうち、半数が認知症が原因といわれており、

これは短期記憶障害や失見当識障害などの認知症の中核症状が原因になっているとされています。

 

そういった症状が発症すると「道を思い出せない」「昔の生活をしているつもりになってしまう」といった状況に陥ってしまい、普段生活していた家に帰ってこれなくなってしまう徘徊に繋がります。

2023年には国内で19,000件以上の認知症徘徊による捜索願が出されており、そのうち200件以上は年内に見つかることなく、また500件以上はご遺体で見つかってしまっています。

 

※写真はイメージです。

 

 

私は身近に父がおらず、散歩や喫茶店が好きな祖父が父親代わりでした。

イル！開発のきっかけは、2021年に祖父の介護に関わった経験から。

当時コロナウイルスが蔓延していた時期で、私も在宅勤務の傍らで、祖父の様子を見ていました。

 

介護で疲弊していく家族や、行動制限がかかる中で弱っていく祖父の姿を見ていて、自分にできることは何かないだろうかと思い、

調べては試すような日々を送っていました。

そんな中、担当のケアマネージャーさんや、同じように認知症の介護をされている方など多くの方と話す機会があり、同じように認知症に関わる悩みや不安を抱えているかたが多く居ることを知りました。

認知症による徘徊は、本人の不安や事故リスクを負うことももちろん、介護する家族にも精神的・肉体的に大きな負担が伴います。

 

誰もが安心して暮らせる社会にしたいという想いから本製品の構想・開発に至りました。

 

存命の頃の祖父との思い出の写真

 

私達の開発しているGPS内蔵型インソールは、インソール内にアプリケーションと連動して位置情報を取得できるGPSが格納されています。

大きな特徴として以下の2つのポイントがあります。

 

1. インソール型なので様々な靴の中敷き(インソール)を取り替えるだけで利用でき、普段遣いの靴のまま使える
2. 着用時に違和感を感じないよう、薄さ12mm（※駆動部）を実現。3点アーチサポート形状で高齢者の足にフィットする設計

 

 

認知症には「失見当識障害」という中核症状があります。

徘徊の大きな原因の1つでもある本症状により、「自分の名前」「今いる場所」「現在の日時」など自分の状況を把握する能力が低下してしまいます。

またそういったものが把握できなくなることによる大きな不安やパニックを引き起こすことも少なくありません。

結果として失見当識障害の症状が出てしまうと、私が祖父にスマートフォンを持ち歩いてもらうことができなかったように「長年見慣れていないもの」への不安からの忌避や、「持ち歩かなければならないことの失念」が発生します。

また中には認知症であることを受け入れることができず、介護用品への強い抵抗感があることも少なくありません。

 

そこで私達は、実際に認知症介護をされている方や施設の方へのヒアリングを繰り返し、「インソールという形状であれば認知症徘徊に訴求できるのではないか」と思い至りました。

日頃から使用されている靴に入れていただくことで「見慣れないものへの忌避」リスクを大きく減らすことができ、意識して持ち歩く必要などもないことから介護用品を導入することへの心理的なハードルも低くなります。

 

 

“靴さえ履き忘れなければ”位置情報の変動すぐにキャッチしてスマートフォンへ通知し、そのまま位置の確認ができるため、利用される方だけでなくご家族・介護者の方も、必要以上に干渉・監視・拘束することなく安心して暮らすことができます。

 

また、在宅で介護する方の半数以上が高齢者が高齢者を介護する「老老介護」である日本。

そんなニーズにもマッチするよう、ユニバーサルデザインでのアプリケーション設計で開発を進めています。

 

本商品は「靴を履いていただくこと」が前提となっているため、「認知症ならその中核症状で靴を履き忘れて出かけてしまうこともあるのではないか？」というご質問をいただくことも少なくありません。

私達もその点は当初より懸念しておりましたが、警察等公的機関へのアンケートを取らせていただいたところ、「裸足での徘徊はすぐに通報・保護されるほか、遠くまで歩いてしまうことも少ないので死亡事故などへと深刻化しづらい」ことがわかっています。

 

もちろん可能性は0ではありませんが、まずは事態の深刻化が激しい、着靴状態での徘徊事故を防ぐために今回のクラウドファンディングを開始しました。

 

なお、普段の移動傾向から徘徊時の位置をAIが予測する機能の2025年中での搭載を目指した開発も開始しており、最終的には「靴を履き忘れても事態を深刻化させない」ことを目指します。

 

※AIによる位置予測機能はソフトウェアのアップデートのみで対応となるため、本体の買い替え不要となります。

 

 

本商品には上記のAI機能の他に「転倒検知機能」「環境給電機能」の実装も2025年中で予定しています。

 

「転倒検知機能」では、着用時に利用者が転倒した際に介護者に通知する機能となっており、「環境給電機能」では普段の歩行によるエネルギーを微弱な電力として蓄積し、万が一充電が切れても位置情報が取得し続けられるような構造を予定しています。

 

 

特に「転倒検知機能」では、靴を履くだけで利用者の転倒情報がリアルタイムに通知・確認できるため、認知症だけでなく幅広く高齢者施設等でも緊急事態の早期発見に活躍できるのではないかと考えております。

 

※転倒検知機能はソフトウェアのアップデートのみで対応となるため、本体の買い替え不要となります。

※環境給電機能はインソール自体の拡張機能となるため、本体の再購入が必要になります。

 

 

 

 

最新の厚生労働省の研究では2040年には65歳以上の高齢者で認知症の人(軽度含む)は1,200万人近くまで達すると推計されており、今以上に大きな社会問題になることが確実視されています。

また認知症有病者数が増えるだけでなく、少子高齢化も進行しているため、2040年時点では全国民の10人に1人は認知機能になにかの障害を抱えた社会を迎えると言われています。

 

家庭にて認知症の介護を行っている場合、1人の認知症に対して2～3人で介護するパターンが多いというデータがあります。

単純計算になりますが、全国民の半数弱が認知症に何かしらの形で関わっていかなければならない時代が15年後にはやってきます。

 

私達はそのような状況に備え、どれだけ認知症の方が増えても、徘徊による事故が起きず、また認知症だけでなく高齢者の方やその周りの方が安心して生活できる社会を目指します。

 

 

▼現在の開発状況

現在、PoCという「機能の検証をするための試験版」まで開発が進行しており、愛知県の特別養護老人ホーム 平田豊生苑様にご協力いただきながら機能実証評価を進めています。根本的な機能面だけでなく、実際に施設利用者の方にインソールを試していただき、装着時のちょっとした違和感などの感想やフィードバックを参考にしながら日々改善・調整を行っています。

開発コストに圧迫しており、26年3月に資金が尽きる状態のため、年内に資金調達を目指しています。

2025年の春頃には製品として提供開始する予定です。

 

 

2024年11月-12月　クラウドファンディング実施期間

2025年1月　　　　製造・量産開始

2025年2月-3月　　順次リターン発送

2025年4月頃　　　　正式販売開始

※ご支援いただいた皆様には、リターンのサービス内容や日程調整の方法などの詳細についてメールにてご連絡いたします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛知県が主催する「AichiStartupCamp2022」メンバーのスタートアップとして2023年2月に設立。

「足元から安心をHACKする」をビジョンに掲げ、認知症の介護を支援するインソール型のみまもりサービス「イル！」を開発している。

2023年7月より愛知県が主催するスタートアップ支援拠点「Pre-StationAi」に採択され、販売開始に向けての事業体制の構築を進めている。