ネコを加害者にしない為に　野生動物への被害

 

　今、様々な理由で多くの野生動物が絶滅に追いやられていますが、そのひとつに、『ネコに襲われて命を落とした』野生動物がかなりの数を占めていることを、皆様ご存じでしょうか。

 

　放し飼いを含む外で暮らす猫の野生動物への被害は、あまり知られていませんが、実は深刻な問題となっています。　

　奄美大島でも絶滅危惧種であるアマミノクロウサギが離乳期にネコに襲われ、数を減らしているという現状があり、また、 昨年の4月にも天然記念物のケナガネズミが猫に襲われて亡くなったことがニュースとして取り上げられました。

 

　実際、JWCに保護されてくる野鳥の中でもかなりの割合を占めるのが『ネコによる被害』です。
　ネコは、空腹を満たす為に小動物を捕まえるというよりも、本能で狩りをすることが多いのですが、鋭い牙や爪が深く突き刺さった場合の治療は難しく、ほとんどが数日中に亡くなってしまいます。

 

 

　このようなネコが生態系に及ぼす影響は日本に限らず、環境保全の観点からは世界的にも問題視されており、オーストラリアでも環境エネルギー省が2019年に発表した数値で、『ネコの獲物になるオーストラリアの固有種は、全土で野鳥は1日当たり100万羽以上、爬虫類は170万匹以上』と推計されているそうです。

　ネコは、『イエネコ(ノネコ)』として実は“外来種”とされています。外来種というと、『海外から持ち込まれ、繁殖してしまったもの』というイメージが強いかと思いますが、元々日本に生息していたツシマヤマネコやイリオモテヤマネコ等の野生のネコと違い、『日本の自然の中で生息していた訳ではなく、飼育下にいるべきものが逃げ出し、繁殖してしまったもの』ということで外来種とされているのです。

　その中でも、イエネコは特定外来種であるアライグマと同じ、『緊急対策外来種』のカテゴリーに分類されていて、生態系に及ぼす危険度はハクビシンやドブネズミよりも高く設定されています。
(※イエネコはあくまで外来種の中の緊急対策外来種であり、特定外来種ではありません)

 

　更に残念なことに、ネコは世界各地でも在来種の減少や絶滅 を引き起こす要因に成り得るとされ、 IUCN(国際自然保護連合)の世界のワースト外来種 100 にも入ってしまっています。

 

　ですが、私達はネコの駆除など決して望んではいません。

　現在、各所で行われている活動のひとつとして、TNRというものがあります。これは、野良猫を捕まえて(Trap)、避妊・去勢手術(Neuter)を行い、また元居た場所へ帰す(Return)、という取り組みです。

　それに合わせ、ぜひ私達としては、『ペットのネコは外に放さない、放し飼いにしないで欲しい』という想いと共に、『野良猫たちに生涯安心して暮らせる温かい家庭を与えてあげて欲しい』という願いがあります。

　実は、私の家でもネコを3匹飼っているのですが、みんな元は野良猫でした。うち、2匹はある程度大きくなっていたので、初めの頃は警戒心もありましたが、今ではすっかりその面影もありません。みんな、大切な家族です。

 

　たくさんの人から愛されるネコを加害者としない為にも、少しでも多くの子が温かい家庭に迎えられることを願っています。

 

 

※ちなみに、トップ画像も子猫の時に保護したうちの子です。先日15歳で天国へと旅立ってしまいました。