災害による停電の危機から医療的ケア児の命を守る“K-DiPS”

子どもの頃に見た「2001年宇宙の旅」に登場するHAL9000というコンピュータに僕は衝撃を受けました。姿形は赤いランプしかないけど、宇宙船をコントロールし、人間と会話し、知性を感じさせるコンピュータです。

大学進学は当時まだ新設されたばかりの情報工学科を目指し、そのまま人工知能の研究を専門としながら、コンピュータが変革するであろう社会の姿についても強い興味を持って勉強をしていました。
やがて僕は、ITを活用して社会の課題を解決することをビジネスの領域とする会社を創っていました。それが僕の会社アイパブリッシングです。

もう5年以上前に、金沢医科大学の中井先生から直接会社に電話をいただき、研究室でお話をお聞きしました。
自宅にて過ごす医療的なケアが必要な方々（例えば人工呼吸器が必須の方々）は地域には必ずいるが、その正確な情報をしっかり集中管理しているところはない。そのため、大規模災害が起きたとき、彼らに十分なケアが可能なのかどうかも分からないのが実情にあると。

僕はそれまで恥ずかしながら、そういったことはしっかり行政か何かの機関がしっかりやってくれているのだろうと勝手に思っていました。自分が知らないだけで、きっとうまく社会はやっているのだろうと。
でも、そんなことはなかったんですね。だから、かなり衝撃的でした。だって、津波が来ると分かっても逃げられないかもしれないんです。停電したら、人工呼吸器が止まってしまうかもしれないんです。

「私はITを活用して、当事者の方とともに必要な備えの情報を管理、更新できる仕組みを作りたい。そして、それを地域に届けることで、多くの要配慮者が万が一の災害時でも安心していられる社会を作りたい」

中井先生の考え方に僕は強く共感し、そこから資金もない中で（！）共同開発を始めることにしました。

この話を他の人にすると「良い人ですね」って言われることもあるんですが、僕はそういうことだけでやっているのではないんです。

今は健康な僕も病気になるかもしれないし、突然の事故により医療的なケアが欠かせなくなるかもしれません。つまり、他人事ではないんですね。それはこれを読んでいるあなたも同じです。
あなたも明日から薬や特別な設備や介護がないと生きていくことが難しい状態になるかもしれないんです。

想像してください。その時にどんな社会が望みかって。
平時のときはもちろん、気遣う余裕もなくなるほどの大災害時でも、ちゃんと平時に備えておいてくれる社会にすることで、僕らは安心して生きることができます。

中井先生と会って早いものであれからもう5年です。でも、まだ十分な段階には至っていません。

ぜひ、中井先生と進めるこの取り組みにご支援いただけたらと思います。
明日のあなたのためにも、早くこの取り組みを多くの地域に届けたいと思っています。よろしくお願いします。

プロジェクトメンバー 福島