プロジェクト概要

 

ベトナム演劇の未来をつくるための土壌づくりを。

 

はじめまして、一般社団法人「壁なき演劇センター」の西村寛子と申します。私たちは「人種や文化などは関係なく、さまざまな人が集まり、演劇活動を行えるプラットフォームはつくれないだろうか」と話し合い、2015年に設立されました。現在は、「国内外での演劇公演の開催・制作・プロデュース」「アジアの若者向け演劇ワークショップ」「各国の俳優育成」という3本柱をベースに、日々邁進しています。

 

また、中東欧ヨーロッパや東南アジアを中心に日本で広く知られているとは言い難い国で、その国の人々と演劇でつながり、作品をつくり、発表し、新しくできたつながりを他のプレイヤーにつなげていくことを指針に、演出、俳優、プロデュース、舞台美術など、さまざまな形で舞台芸術に携わるメンバー5名で活動を行っています。

 

今回は、ベトナム現代演劇の課題を解決するために、チェーホフ作品の「ワーニャ伯父さん」をベトナムで制作します。この挑戦を通して、資金調達はもちろんですが、ベトナム現代演劇の未来を皆さまと一緒につくっていくきっかけにできればと考えています。そこで、ベトナムでの活動費用を集めるため、お力をお借りしたいと思います。ご協力のほど、よろしくお願いいたします。

 

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中央列左から西村寛子、杉山剛志 中央奥 宗重博之 中央列右四番目 加藤ちか

 

 

プロデューサーと演出家、ベトナムとの縁が交差した瞬間。

 

今回、ベトナムで公演を行うことになったきっかけには、プロデューサーの宗重博之と演出家の杉山剛志に関する2つの物語があります。(以下、参考リンク)

 

 

2014年青年劇場俳優を相手にWSを行なった杉山剛志と、同年全く別の機会にベトナム俳優と出会っていた宗重博之。魅了された宗重博之は、2015年現代演劇調査のためベトナムへ渡りました。そんな折、「2016年国際実験演劇祭に日本からの作品を紹介してほしい」と、ベトナム国立ドラマ劇場の当時の館長から相談があり、チェーホフ作品の「かもめ」を上演することになりました。その後、2016年ベトナム国際実験演劇祭では最優秀演出家賞、最優秀作品賞をはじめとする7つの賞を受賞しました。

 

これをきっかけにベトナムの複数の劇場から上演オファーがあり、その中でもベトナム青年劇場と共同制作を始めることになりました。これは宗重博之、杉山剛志、それぞれ別のフィールドでベトナムの演劇人と関わりをもっていた2人がベトナムの地でそのつながりを集結させたことで走り出したのです。

 

「いっこうに観客が増えない」「演劇がすべてハッピーエンド」「トップダウンな現場のため、俳優個人の想像力が活かされない」などのベトナム現代演劇の課題に解決するため、具体的な今回の企画へと進んでいきました。 

 

現地メディア掲載 かもめ 2016年国際実験演劇祭上演
20/11/2016 “Sân khấu thử nghiệm: thiếu tiền cho một cuộc chơi”

 

 

なぜ、古典作品の「ワーニャ伯父さん」を上演するのか。

 

コラボレーション先であるベトナム青年劇場から「チェーホフ作品に挑戦したい、その中でも"ワーニャ伯父さん"が今のベトナムにとって一番上演するにふさわしい」と提案されました。ベトナムは社会主義国家のため、ロシアの影響を強く受けており、演劇のほとんどがロシア式のスタイルに基づいています。

 

ロシア演劇=チェーホフ作品といわれる中、ベトナム青年劇場は何度も挑戦したものの、上演まで至らなかったそうです。そこには、演出家が絶対的権威を持ち、俳優の意見や表されるものが作品に力を持つことが難しい"トップダウン式"の現場であることが課題となっています。そのため、「演出家に力がなければ上演することは不可能だ」とベトナム人俳優から聞きました。

 

また、私たちが単に「かもめ」を当時の古典作品の再現として上演したのではなく、現代に通じる問題を提起し、今を生きる人々の共鳴するような新しい形を目指していたという点に、新しい芽を発見してくれました。

 

当団体では、「自分たちもそのような作品をつくる方法論を吸収したい」「共同制作を通してベトナムを代表する国立劇場の一つとして、次のステップへと成長したい」という強い想いを彼らから感じたのです。そして現在は、演劇環境の違いなどの困難を抱えつつもユーモアを持ちながら、少しずつ2018年12月からのベトナム3都市5公演の実現へ、一丸となって頑張っています。

 

ベトナム青年劇場副館長 シテイン氏

 

 

「ワーニャ伯父さん」〜ベトナム人俳優と日本人俳優のコラボ公演〜

 

<演目:ワーニャ伯父さん(作:アントン・P・チェーホフ)>

 

日程:2018年 11月30日(金)〜12月6日(木)

場所:ベトナム青年劇場、ハロン市、ハイフォンオペラハウス

開演:20:00(※11月30日はプレビュー公演)

 

内容:長い歳月に渡って、大学教授セレブリャコーフの活動を崇拝し、献身的に支えてきたワーニャが、その男の無能さが明らかになったとき、彼は今までの自分の行為が全くの無意味だったことに気づく。

 

そんな中、セレブリャコーフがワーニャ、ソーニャ、乳母、居候のテレーギンが暮らす屋敷へと彼の後妻エレーナを連れてやって来たことにより、彼らのそれまでの人生は一変する。ワーニャの親友である医師アーストロフもまた美しきエレーナに惹かれていくのであった。失った幻を必死で追い求めるかのように皆の人生が熱を帯び交差していく中、セレブリャコーフが発表したある提案が引き金となって、発砲事件にまで至る大事件へと発展してくことになり...。

 

本プロジェクトは、平成30年度文化庁国際芸術交流支援事業​からの助成金により、「衣裳デザイン料・照明プラン料・映像プラン料・音響プラン料・台本翻訳料」など、全体予算の一部がまかなわれていますが、それはほんの一部にすぎません。

 

ベトナム戦争の影響で配給制度が色濃く残っているため「チケットを購入して演劇を見る」という習慣がほとんどないことから、通常は演劇活動を行うための収入の大半を占めるチケット収入が見込めません。それに伴い、滞在制作費、現地調査やプラン決めに必要なベトナム人スタッフとの事前打ち合わせにかかる渡航費(助成金対象外)をはじめ、作品制作期間の現地での活動費用が足りていないのが実情です。

 

そこで、皆さまからのご支援は、滞在制作費や渡航費等、作品を支えるための一部に充てさせていただきます。

 

言葉に頼らない演劇を目指して

 

 

次世代にバトンを渡し、将来の舞台芸術交流を支える人づくりを。

 

今回は新しい観客層の開拓および、10代〜30代(全人口の25%を占める)の若い世代がチケットを購入して作品を観にくるという経験を少しでも積んでもらえれば成功だと考えています。お客さんに何を伝えたいかは俳優それぞれですが、演劇は人と人を結びつけ、社会に参画し、他者に向かって働きかけ、さまざまな人生や行動に影響を与えるのです。演劇は演じる側の自己表現である前に、ひとつの社会的な行為であることを知ってもらいたいです。

 

また、2019年にはベトナム人俳優たちを日本に招聘し、年々増え続ける在日ベトナム人、そして彼らに関わる日本人を主な観客とする日本公演も行います。

 

すでに、2019年11月世田谷にあるシアタートラムという劇場での公演を予定しており、その他劇場での公演も具体的に準備が進んでいます。ベトナムは、その政治体制の性質上、現代演劇に変化をもたらしていくことは容易ではありません。5年10年とかかる長いスパンで、私たちはベトナムと関わって行いきたいと考えています。どうか、応援のほど、よろしくお願いいたします。

 

 

 

「壁なき演劇センター」メンバー紹介

 

宗重博之

 

1978年に「68/71黒色テント」(現・劇団黒テント)の活動に参加。旧西ドイツ留学や、セルビア在外研修などを通じ、ヨーロッパ大陸における演劇交流を行う。2016年からベトナムに在住し、インドシナ半島を視野に入れた舞台芸術交流を推進している。黒テント所属。国際演劇協会日本センター会員。

 

 

杉山剛志

 

一般社団法人 壁なき演劇センター 代表理事。1974年生まれ。1995年よりフランス・パリ国立高等演劇学校教授に師事し、スタニスラフスキー・システムをベースにした5年制の体系的俳優教育を受ける。2000年よりロシア・フランス・ドイツ・ベルギーなどから招聘した各国の第一線で活躍する演出家と国際共同創作プロジェクトを4年間に渡り行なう。

 

2004年に演劇集団ア・ラ・プラスを結成し、演出家として活動を開始。2008年からロシア国立Mossovet劇場にて芸術監督演出家ユーリー・エリョーミン氏に師事し、研修演出家として作品創作に携わりながら、2年間モスクワで本格的に演出を学ぶ。2012年からは東京で国際スタンダードの体系的俳優育成も開始。アジア諸国の子供たちを対象にしたシアター・エデュケーションも継続的に実施している。

 

主な代表作は、『僕らは生まれ変わった木の葉のように』(東京/パリ公演)、『授業』(利賀演劇人コンクール2011選出)、『バルカンのスパイ』(東京公演/ステーリノ・ポゾリェ国際演劇祭(第4位受賞)を含むセルビア5都市ツアー)、『ビザール〜奇妙な午後〜』(東京公演)、『かもめ』(東京公演/ベトナム国際実験演劇祭(最優秀作品賞/最優秀演出家賞を受賞)/ベオグラード国際演劇祭を含む南東欧3カ国5都市ツアー)など。

 

 

加藤ちか
加藤ちか

 

1962年名古屋生まれ。多摩美術大学絵画科日本画科卒。劇団第三エロチカのスタッフを経てフリーに。小劇団からプロデュース公演まで500作以上の作品を手掛ける。

 

川村毅『マクベスという名の男』ワールドツアー、野田秀樹『走れメルス』、渡辺えり『新版舌切雀』(歌舞伎座)、NHK50周年記念『おかあさんといっしょ』、劇団EXILE『レッドクリフ-戦-』等。99年、坂手洋二作・演出の燐光群『トーキョー裁判1999』『天皇と接吻』で読売演劇大賞最優秀スタッフ賞。

 

 

後藤絢子

 

結城座、SPAC(静岡県舞台芸術センター)制作部を経て、現在、国際演劇協会(ITI)日本センターで働く傍ら、舞台字幕、翻訳等に携わり、舞台作品の製作を通じた国際交流を続けている。


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