支援総額
目標金額 100,000,000円
- 支援者
- 56,584人
- 募集終了日
- 2023年11月5日
かはくの偏愛研究室|file.10 細矢剛先生が語る、カビへの愛
毎週木曜19:00〜19:30に放送中の、クラウドファンディング特別企画「かはくの偏愛研究室」。
かはくに所属するさまざまな分野の研究者が登場し、かはくに収容されている約500万点のコレクションの中から、自身の「推しコレクション」をご紹介。資料への愛を語るYouTube番組です。
本記事では、配信の内容を一部抜粋してご紹介します。
※配信内容は、YouTubeからアーカイブ視聴も可能です。
https://www.youtube.com/watch?v=sqELUKpCyRs&list=PL38SvBUmO1PemC1tsNtni7pCywLwAMoyl
編集:READYFOR かはく担当キュレーターチーム
\毎週木曜19:00〜19:30 生放送! /
第10回目のゲスト研究員は、植物研究部 部長の細矢剛(ほそやつよし)先生です。
かはくの偏愛研究室|file.10:カビが好きすぎる先生
ゲスト研究員:細矢剛(国立科学博物館 植物研究部 部長)
MC:土岐恭介(上野地区計画・評価担当)
profile
細矢 剛(ほそや・つよし)
東京生まれの東京育ち。大学の実習で菌類に出会って以来、菌類の研究ほぼ一筋。大学卒業後は民間の製薬会社の研究員を経て現職。専門は、菌類、特にビョウタケ目という微小なきのこをつくる菌類とカビの分類・進化・生態などの研究。
短い論文にドラマが濃縮「ヒメノスキフスフラキシネウス」
ーー今回ご紹介いただくコレクションを教えてください。
細矢:(紙の)パックに入っているものなのですが、「ヒメノスキフス・フラキシネウス」という菌です。残念ながら和名がないので、標本にも英語でしか書いていません。
この菌は、私が1992年に見つけた菌です。非常に小さくて乾燥標本を引きで見ると、ただの枯れた葉をいっぱい集めたようにしか見えないかもしれませんが、液浸標本にすると画びょうのようなものがポツポツと葉軸に突き刺さっているのが見えます。
当時、文献などを調べたところ、ヨーロッパでは知られている既知の菌ではあったのですが、日本では初めて見つかった日本新産(にほんしんさん)の菌だと分かったので、短い論文を書きました。論文には、顕微鏡的な構造を記載していますが、胞子を取って菌を培養したらカビのような構造が見えたので、これは新知見だと最後に強調して書いたんです。
そこから時が流れて2000年代に入ってから、ヨーロッパで菌類を研究している友人からメールが届きました。すると「1990年代の終わりぐらいから、ポーランドから始まってヨーロッパのセイヨウトネリコという木(スコップの柄や野球バットの材料などになる木)がどんどん枯れているが、その原因になっている菌は、かつてあなたが論文に書いていた菌なのではないか?」という話でした。
ーー先が気になる展開ですね。
細矢:もう少し深掘りしてお話しますと(笑)、その時セイヨウトネリコを枯らしている病原菌はすでに見つかっていたけど、病気になる木とならない木があることが分かったので、ヨーロッパの研究者たちは「識別ができないぐらい形が似てるけれども、病原性を持っているものと持っていないものの、2種いるんじゃないのか」と考えたんですね。さらに研究を進めると、菌を培養したら、病原性をもっているほうにはカビのような構造を作ることが分かった。そこで、私の短い論文がにわかに注目されたというわけなんです。
連絡を受けてから慌てて培養した菌からDNAを採って観察をして、標本も改めて観察しました。そうして、病原菌として新たに見つかった菌と私が記載した菌が同じだということが判明しました。要は、本当は新種だったのに、私がヨーロッパにいる既知の菌と勘違いしたということだったのですが、標本をちゃんと持っていたことが、問題解決の糸口になったんですね。
ーー短い論文の中にそんなドラマが......
細矢:惜しむらくは、 私が最初から新種だと書いておけばよかったなと(泣笑)。そこがちょっと残念なところではあります。でも後に新種として発表されて、私も(論文の)共著者として名前が入っていますので、めでたしめでたしということにはなります(笑)。
印象に残った恩師の言葉
ーー「ヒメノスキフス・フラキシネウス」が、先生にとって思い入れのあるコレクションであるということがよく分かりました。
細矢:はい(笑)。実はここまでの話でちょっとおかしな点があるんですけど、気が付きましたか? 実は、ヨーロッパで流行ったその病気は、日本で流行ったことがないんですよ。日本には、この病気の木がないんです。そもそもこの菌は、日本だとヤチダモという木にいるのですが、西洋にはヤチダモがない。ですので、ヤチダモがある日本及びアジアでは平和に暮らしていた菌が、なにかのきっかけでヨーロッパに持っていかれたのではないかと考えられています。
菌の方としては、ヤチダモの上でしか暮らせないわけだから、一大事ですよね。似たような木を探してセイヨウトネリコにたどり着いた(この2つは同属でなので、近縁なのです)けど、相手が死んで(枯れて)しまったから、また別の木に移って...それを繰り返してヨーロッパ中に広がった。このようなシナリオが分かってきたんですね。
現在日本では、どうやってヤチダモの上で暮らしているのだろうかということを継続して研究していますし、ヨーロッパでは耐性の獲得について研究しています。また、この菌の由来についても共同研究をしているところです。
私が論文に書いたことはとても小さなことでしたが、恩師に「科学者はどんなに小さいことでも、新しい事実を書かなくてはいけない」と言われたのが印象に残っていて、書いておこうという風に思ったんですよね。これをもし「短い論文だし、いいや」なんて思って書かなかったら、今お話した発見というのは、なかったかもしれない。ですので、やはり小さなことでも書いておく必要があるし、たった1点...実際には数点ありますが、少ない数の標本でも、侵略的外来種の由来解明という大きな問題を解決するきっかけになることがあるんだということを思い知りました。
コレクションとは……、
ーー最後に、先生にとって「コレクションとは何か」、教えていただけますか。
細矢:コレクションとは「噛めば噛むほど味が出る資源」です。同じ標本でも、違う見方をすることによって、新しい事実に辿り着くことがあるということを、「噛めば噛むほど」という風にまとめてみました。
標本の価値をしっかり理解していない、あるいは誤解をしていると、種を特定したら標本なんて捨ててもいいと思う方もいるかもしれません。ですが、新たにDNAを分析をしたり再検討することによって、(それ以前には分からなかった)新しい事実が分かったりします。ですので我々は、研究の資源として、この立派なコレクションを保管し続けるべきだと思っています。
= = = = =
本記事でご紹介したのは、配信のごく一部。
全貌はぜひアーカイブ動画で。
▼file.10:カビが好きすぎる先生【細矢剛先生(国立科学博物館 植物研究部 部長)】
引き続き活動報告では「かはくの偏愛研究室」シリーズのレポートをはじめ、リターン情報や本プロジェクトの進捗状況などをご報告してまいります。今後とも応援のほど、よろしくお願い申し上げます。
リターン
15,000円+システム利用料
【一押し!】【寄付控除あり】 かはくオリジナル図鑑
※本コースも、「寄付控除あり」に変更いたしました(10/20変更)
●御礼メール
●かはくオリジナル図鑑
当館の全研究者が、自身の「最推し」標本を選び、解説したものを1冊にまとめた本クラウドファンディングのオリジナル「図鑑」。
●寄付金領収証
--------
※図鑑は、130ページ前後になる予定です。画像は、そのうちの一部(恐竜の専門家・真鍋副館長の担当ページ)のイメージです。最終的なデザイン・内容は変更となる可能性もございます。
※寄付金領収証のみ、2023年12月中にお送り予定です。
>>詳細は「活動報告」欄にも紹介記事がございます。
- 申込数
- 39,306
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2024年3月
5,000円+システム利用料
【オリジナルグッズ】【寄付控除あり】 トートバッグ
※本コースも、「寄付控除あり」に変更いたしました(10/20変更)
●御礼メール
●トートバッグ
研究者が日々の研究で使用した「研究ノート」の一部をデザインとした、本クラウドファンディングのオリジナル「トートバック(全5種類)」。
●寄付金領収証
--------
<デザイン>
以下の5種から1つ【ランダムで】お届けいたします。
■モグラの歯の変異原図
■貝のスケッチ
■微細藻スケッチ
■ボーリングコアのスケッチ
■太陽黒点スケッチ
※画像は、5種のうち3種のイメージです。デザインや形状などは変更となる可能性もあります。
※寄付金領収証のみ、2023年12月中にお送り予定です。
>>詳細は「活動報告」欄にも紹介記事がございます。
- 申込数
- 15,665
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2024年3月
15,000円+システム利用料
【一押し!】【寄付控除あり】 かはくオリジナル図鑑
※本コースも、「寄付控除あり」に変更いたしました(10/20変更)
●御礼メール
●かはくオリジナル図鑑
当館の全研究者が、自身の「最推し」標本を選び、解説したものを1冊にまとめた本クラウドファンディングのオリジナル「図鑑」。
●寄付金領収証
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※図鑑は、130ページ前後になる予定です。画像は、そのうちの一部(恐竜の専門家・真鍋副館長の担当ページ)のイメージです。最終的なデザイン・内容は変更となる可能性もございます。
※寄付金領収証のみ、2023年12月中にお送り予定です。
>>詳細は「活動報告」欄にも紹介記事がございます。
- 申込数
- 39,306
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2024年3月
5,000円+システム利用料
【オリジナルグッズ】【寄付控除あり】 トートバッグ
※本コースも、「寄付控除あり」に変更いたしました(10/20変更)
●御礼メール
●トートバッグ
研究者が日々の研究で使用した「研究ノート」の一部をデザインとした、本クラウドファンディングのオリジナル「トートバック(全5種類)」。
●寄付金領収証
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<デザイン>
以下の5種から1つ【ランダムで】お届けいたします。
■モグラの歯の変異原図
■貝のスケッチ
■微細藻スケッチ
■ボーリングコアのスケッチ
■太陽黒点スケッチ
※画像は、5種のうち3種のイメージです。デザインや形状などは変更となる可能性もあります。
※寄付金領収証のみ、2023年12月中にお送り予定です。
>>詳細は「活動報告」欄にも紹介記事がございます。
- 申込数
- 15,665
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2024年3月
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- 634人
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- 7,720,000円
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- 391人
- 残り
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