石川卓磨(建築家)

 

今年の8月、高円寺で初めての危口のいない「搬入プロジェクト」の公演を行った。初演から8年、21回目のことだった。搬入プロジェクトは変わらない作品の強度をもっていた。始まった瞬間に頭が真っ白になる(協力者・「快快」佐々木文美談 )し、やっている本人達も何をすべきかわからなくなる。それでも搬入物体は自身が戯曲であるかのように人を動かしていく。混乱した狭小の現場の中、空間から導き出されて自分らが作った物体に翻弄されつつ、気がつくと汗だくで担ぐ人々、汗だくで見守る人々。役者として訓練していない人々が輝ける場が作られていた。それはまさに危口統之の「演出」だった。多くの人が感じたであろう。危口の作ったルールによってこのゲームは本人不在でも完全に機能していたことに改めて感心した。そしてやっぱり終わった後にいつもの彼の笑顔が見られない寂しさも噛み締めた。

 

搬入プロジェクトは著作権フリーで、誰でもやっていいし、誰でもできる演目だ。と口癖のように言っていた。我々の手を離れて上演されることを望み、実際に企てようとしていた。時が経ち、どこか遠くの知らない村の祭りや行事などとして定着したらそれはこの作品の最長到達地点なのかもしれない。今はまだこの作品は完成していないのではないか。

彼がいない今、新しい演劇作品を実際に作りだすことは困難だ。でも「搬入プロジェクト」は今からでも誰がやってもその場所での新作としての価値を持っている。

実際に誰でもできるように、できる限り手法や情報をまとめて発信することで、「搬入プロジェクト」という作品がもう少しだけ先に届くような手助けができないかと願っています。

 

 

石川卓磨

1978年神奈川県生まれ。建築家。NEWEST一級建築士事務所共同主宰。危口とともに、舞台や装置から観客席までを意識した「体験の設計」を担当。全ての搬入プロジェクトに関わる。悪魔のしるしメンバー。

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