僕が彼に出会ったのは正に壁にメタリカの絵の描かれた大学の練習場でした。

 

 

何か別の部と勘違いしているようでもあったけれどその場にいたメンバーと一緒に何気ない会話をし、気がついたら一緒に毎日練習場という学生生活の中、彼はいつも何かを読み何かを描き、そしてギターを奏でていた。

彼は何かを始める前にいつも手にしたものの匂いを一瞬嗅ぐ。

本人も自覚していて、よく癖なんですとシニカルな笑みを浮かべていました。

とにかく思い出されるのはどこにいても何かの匂いを嗅いでいる姿。練習後の中華料理屋で手にする少年漫画雑誌、何かをしたためるためのスケッチブック。そこに何かを描き出すためのペンや鉛筆。とにかく手にした最初に一瞬匂いを嗅ぐ。

今思うと彼の創作は思考というよりも匂いという原始的な感覚とのダイレクトなコミュニケーションだったのかなと思います。その場所の匂い、共にいる人の匂い、一緒に飲み食いするときの匂い、彼が作り出すものの匂い。

「悪魔のしるし」に触れるたびに彼の匂いを感じずにはいられません。

それは空間だけでなく彼の書くテキスト、描くスケッチ、奏でる音、そういったものにいつも潜んでいてしかもいつも微妙な可愛げをもって放たれるのです。

彼の作品や活動に親近感を覚えるのは、頭で何かを考えて理解するというのとは違って親しいものに触れるときの喜びに近い感覚なのかと思います。

だからこそ彼を失ったことに対して、未だに死んでしまいやがってという気持ちとこれまで何気なく感じていたかもしれない愛おしさのような気持ちが入り混じってしまいます。

 

彼の作品のアーカイブ化・プラットフォーム化を支援します。

この計画を立案し実行してくださった発起人のみなさまの努力に感謝します。

これから先も彼の作品やテキストが放つ可愛げのある匂いに触れることができること、そして彼の思想や思いとともに作品や活動が独り立ちして様々な形で世に現れる事ができるきっかけになることをとてもうれしく思います。

すでに多くの人に支えられるこのファンディングのサイトからでさえ独特の「悪魔のしるし」の匂いがするのではないかと思わず画面に鼻を近づけたくなるかもしれません。

 

彼と出会い彼の出会いに関わることができた者の一人として多くの人の賛同と支援を期待します。

 

 

久山幸成(ひさやま ゆきなり) 建築家/ クライン ダイサム アーキテクツ所属、 横浜国立大学演劇研究会OB

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