プロジェクト終了の御報告
サポーターの皆様のご支援のもと、本プロジェクト「パーキンソン病の病態解明を目指して、アフリカメダカを使った研究を」がひとまずの終了という区切りを迎えました。研究費としてのご寄付のみならず、たくさんの応援メッセージをいただき、大変感謝しております。ありがとうございます!それだけでなく、普段は研究室の中でともすれば閉鎖的に集中しがちな研究という営みを、市民の皆様と共有できたことを大変意義深く感じています。私のパーキンソン病の病態解明を目指した研究はまだまだ続きますが、一旦の区切りということでここに終了報告を投稿させていただきます。なお詳細な活動報告は別途該当者様にご報告予定です。
【研究結果】
パーキンソン病の病態解明を目指すという意味ではさまざまな取り組みが必要ですので私たちの研究室に限ってもさまざまな取り組みを行っています。ここでは本プロジェクト「パーキンソン病の病態解明を目指して、アフリカメダカを使った研究を」に関係したものをご報告いたします。
パーキンソン病ではαシヌクレインという分子が最も病態に関係する分子の1つと考えられています。これはパーキンソン病の患者さんの脳にαシヌクレインの凝集体が存在すること、稀な遺伝性のパーキンソン病の家系においてαシヌクレインの変異が存在すること、などが根拠として挙げられます。これまでの研究からαシヌクレインが加齢に伴いなんらかの構造をとり、その構造が病態の進展や細胞毒性に関わると考えられています。とはいえ、まだ詳細な病態は不明です。
まずアフリカメダカがパーキンソン病になるにもかかわらず似た種類の日本のメダカはパーキンソン病にならない、ということに注目し2つの研究を進めました。1つ目ではアフリカメダカと日本のメダカのαシヌクレインのタンパク質のアミノ酸配列のわずかな違いに注目し、ある部分のアミノ酸が凝集体形成にとても重要であることを見出しました。この研究に関してはまだその後の実験途中であり、培養細胞や小型魚類を使った研究を実施しています。そのために詳細は記載できませんが、引き続き研究を進めていきます。2つ目はアフリカメダカと日本のメダカのαシヌクレインの翻訳後修飾(タンパク質に対して、酸化ストレスやリン酸基付加などによるさまざまな変化が起こることを意味します)を比較し、ある部分のリン酸化修飾がアフリカメダカとヒトパーキンソン病に特徴的であることを見出しました。その部位のリン酸化修飾はαシヌクレイン多量体(αシヌクレインがたくさん集まったものとお考えください)の構造を大きく変化させ、細胞毒性を発揮します。こちらは論文を投稿し、査読者の意見に対して改訂を加えて再投稿した段階です。残念ながら論文に至るまでには科学的な要素だけではない様々なハードルがあり、どうなるか心配していますが、採択されましたら活動報告やプレスリリースあるいはホームページなどでより詳細をご報告します。1つ目の発見はパーキンソン病のαシヌクレイン病態がどう広がっていくかに重要で、2つ目の発見はパーキンソン病におけるαシヌクレインの毒性のメカニズム解明に重要です。いずれも他の研究とも合わせて引き続き進め、パーキンソン病の病態解明に役立てるように心がけていきます。
なお研究室は新しい入学者などもあり、さらに活気付いています。その写真を添付しておきます。
【収支報告】
魚の産卵用の装置、魚の卵や稚魚を飼育するためのシャーレ魚: 45,000円
魚や細胞の実験に必要なチューブやスライドなどの消耗品: 1,444,984円
DNAの精製、あるいはタンパク質の抽出、分子の標識などに必要な試薬: 1,265,195円
DNA配列の解析費用: 40,810円
合計2,795,989円を2023年3月31日までに使用しました。残額の5,070,546円は引き続き本研究「パーキンソン病の病態解明を目指して、アフリカメダカを使った研究を」のために使用してまいります。
一点、関連するご報告ですが、2022年4月1日に科研費基盤研究Aというものに採択されました。基盤研究にはSからCまであってAというのはそこそこ名誉ある研究費となります。これもひとえに皆様のご寄付があることで応募できたものであり、改めまして感謝申し上げます。科研費基盤研究Aには使用期限があるため、そちらを優先して使用したため、当初想定よりもクラウドファンディングからの使用金額が少なくなっております。科研費も元はといえば皆様の税金です。クラウドファンディングもその他の研究費もあわせて大事に、しかし機敏に今後の研究に使用させていただきます。
【リターンについて】
該当者の方には活動報告を別途送付します。今しばらくお待ちください。
【今後について】
READYFORでのプロジェクトはこれで一区切りがつきますが、私たちにはまだやるべきことがたくさんあります。私たちの研究室のなすべきこと、それは「難病を克服する」、「障がいを支え合う」、「科学の歴史を刻む」です。そしてその目標のいの一番にパーキンソン病の病態解明を掲げています。これらの目標はどれもそれ1つだけでもとても困難であることは十分理解しています。しかし、どこかで誰かがこれをやらなければならないですし、それをやるのは私と私たちの研究室だと思っています。引き続き私たちの研究に関心を持っていただき、ご声援をいただければとても励みになります。今後も何卒よろしくお願いします。