映画「丸八やたら漬 Komian」製作/上映 応援ファンディング

【番外編！ 紅花農家 長瀬さんご夫妻による丸八ファンディング応援漫談】

正美「今日は『香味庵』の蔵座敷についての座談会ということで、長瀬ひろこさんにお越しいただきました」

ひろこ「お越しいただきました…って、すぐ隣の部屋から来ただけなんですけど…」

正美「ま、内輪話はその辺にして…。本題に入りますが、ひろこさんは香味庵の蔵座敷で印象的な経験をされたそうですね」

ひろこ「よくぞ聞いてくれました。あれは２０数年前になるかしら。舞踏家で役者の田中泯さんの公演が山形であったんですけど、その打ち上げをしたのが香味庵だったんです。泯さんが座敷に入って来て、漆喰の白壁に背をもたれる、その立ち居振る舞いですよ。静にして動。動にして静。さすが舞踏家ですよねえ。年代物の黒光りした太い柱が泯さんを囲んでいる。一幅の絵でしたよ」

正美「田中泯さんと蔵、役者が揃いましたね」

ひろこ「そういうことです。それから３、４年してからですよ。あの『たそがれ清兵衛』が世に送り出されたのは。真田広之さん演じる清兵衛と田中泯さん演じる余吾善右衛門の壮絶な斬り合いは名シーンだったでしょう？」

正美「確かに。今思い出しても震えが来ますね」

ひろこ「みすぼらしい家で余吾が待ち受けていたでしょう？ 虚無感を抱いて余吾がじっと待っている。あのシーンを見たとき、閃光が走りましたよ。香味庵の蔵座敷の白壁に背をもたれていた泯さんがオーバーラップしたんです。情景はまったく違うんですけど、香味庵の泯さんの姿が『たそがれ清兵衛』のプロローグみたいに思えたんです」

正美「蔵の持つ力ですかね。蔵は人と一緒に呼吸している」

ひろこ「ところで、正美さんも香味庵を訪れたことがありましたよね？」。

正美「実は私、紅花を栽培しておりまして」

ひろこ「なんか格好つけてません？ 百も承知ですよ」

正美「まあまあ、そう興奮なさらずに…。香味庵の話ですね。以前京都の染師の方や紅花関係者の方をお連れしたことがありました。皆さんわが家のようにくつろがれて、『ただいま！』を言いたくなる雰囲気がありますよね」

ひろこ「国際ドキュメンタリー映画祭で香味庵を訪れた海外の方々が『I‘ｍ home』と言う理由が分かります」

正美「紅花を栽培している自分としては、長年にわたって食文化、蔵文化を守って来られた新関さんには共感するところが多くあります。店を閉じる際の思いは外からは推し量れないですが、その決断と覚悟はものすごい熱量をはらんだ助走になったと考えているんですよ」

ひろこ「覚悟を佐藤監督と高橋プロデューサー、スタッフ、支援者が引き受けましたね」

正美「あの渾身の助走があったから力強く踏み切ることができて、映像は長い見事な放物線を描きましたね」

ひろこ「映画がどこに着地するか楽しみです」

正美「まだ旅の途中ですね。どんな広がりを見せるのか、着地点はどこなのか、見届けたいですね」

正美・ひろこ「応援していきましょう！」

長瀬正美・ひろこ/プロフィール

山形市出羽地区で紅花栽培を４０年以上続けている。

映画「紅花の守人」製作委員会会長（及び製作委員）と出演を兼任。