写真集　KATACHIのコンセプト　　クラウドファンディング終了まであと6日

 クレドールマウンテン

タスマニア

Nikon D800E+Carl Zeiss Otus55mm

もうすぐクラウドファンディングは終了しますが、もう一度今回のプロジェクトを始めたコンセプトをお話します

原点に返るために写真集を作った。写真家生活30周年を迎えるにあたり、写真の原点モノクロームで標準レンズによる作品を中心に１冊にまとめた。被写体の色や、珍しさに頼るのではなく、自分の視点で、奇をてらわず、自分の脳内映像を作品化したかった。

今から10数年前　Carl Zeis社よりOtus55mmという

レンズが送られてきた。剃刀のような切れ味の標準レンズ。しかもそのレンズは写真家に「お前は何を表現したいのだ？」と問うてくる神レンズだった。そのころ、僕は写真家生活20周年を迎えようとしていた。いろいろな視点でオーストラリアのランドスケープを撮っていたが、どうしても、かの地でしか見られない色や絶景的な被写体への依存度が高くなっていた。自分としては被写体依存度が高くなると、自分の独自の世界観はどこにあるのだろうと悩んだ。被写体に撮らされている感が強まった。

そのタイミングで、新しいレンズがやってきた。考えたのは基本に戻ること。写真の原点であるモノクロで森羅万象のフォルムを、作品コンセプトKatachiとした撮影を始めた。撮影開始後５年、コロナ禍という予想しない世界に覆われた。オーストラリアには行けない。それどころか家から外出もままならない。では作品は撮れないのか？否である。四面楚歌の環境で思いついたのは、利休の言うところの茶室の中の宇宙。家にある日常の物を、わが家の小さなスタジオで撮ること。被写体は「野菜」。どの家庭にもある日常の物を、自分で好きな光を創り出し作品にする。コロナという禍が四畳半の宇宙という自分の世界を与えてくれた。

今回の写真集。神羅万象すべてを作品にした。しかも普通の視点で。昨今　過剰な画像処理　フィルターワークそして絶景写真が幅を利かす。30年間に得た自分なりの答えは、基本に立ち返り、奇をてらわず見過ごしてしまいそうな日常から、自分の世界を見出すこと。特に今回は硬めの諧調で、強めのコントラストで、より物のフォルムの線の美しさを表現した。モノクロームは中間調が命というテーゼを無視する表現も多々ある。だが最初に被写体を心で見たときに、残像として、残った光のラインと陰影を最優先として作品にした。この強いコントラストの世界観は、オーストラリアという強烈な光と色彩の大陸で長い間撮影した記憶色の刷り込みから来ていると感ずる。今回の写真集はゴールではない、長い写真家人生の1つのマイルポスト。次の30年はどうなるだろう。それは僕にもわからない。答えは前に進むことで見つかるはずだ。

追申

引き続き　クラウドファンディング終了まで皆様の御支援をよろしくお願いいたします。そして今までご支援いただきました皆様　本当にありがとうございます。

2025年6月　　　写真家　相原正明