医療体験に価値を; 医療提供の機会損失や不要な鎮静検査を減らしたい

 

治療や検査を受ける子どもに対して、認知発達に応じた方法で説明（プレパレーション）を行うことで、対処能力を引き出し、少しでも心理的負担の軽減を！

 

 

アメリカの主な公的医療保険には「メディケア」と「メディケイド」があります。メディケアは高齢者や障害者、メディケイドは低所得者を対象とする制度です。

 

公的医療保険の対象とならない人たちは、各自で民間医療保険に加入しなければなりません。検査や入院、手術などにかかる医療費の自己負担額は、加入している保険プランや居住エリア、医療機関によって異なります。

 

アメリカの保険料や医療費は、日本に比べて非常に高額であり、無保険の人や医療費が支払えない人も少なくありません。

 

〜日本とアメリカの医療費比較〜

●      胃腸炎による外来受診（初診）でかかる費用

日本：2880円〜

アメリカ：（公立病院）16,000〜32,000円（私立病院）32,000〜44,000円

 

●      虫垂炎で入院した際にかかる費用

日本：およそ310,000円〜

アメリカ：（公立病院）およそ2,090,000円〜（私立病院）およそ5,995,000〜8,165,000円

 

アメリカの医療は自由診療であり、検査や治療にかかる費用は医療機関によって異なります。受診する医療機関や加入している保険プランによっては、上記よりもさらに高額な医療費を請求されるかもしれません。

 

レントゲン検査も例外ではなく、日本で胸部レントゲンを撮影すると医療費は2300円/枚ほどですが、アメリカではおよそ10,300〜12,300円/枚かかります。

 

日本の病院でよくみられる「念のためレントゲンを撮りましょう」といったやり取りはなく、検査を受けるかどうかは患者側も慎重に判断する傾向があります。

 

日本では「念のためレントゲンを撮りましょう」というケースが多くみられ、特に乳幼児や幼児の場合は保護者も一緒になって検査のサポートをしなければならない事もあります。

 

今回は、お子さんに生後すぐに先天性の心疾患が見つかり、その後も何度もお子さんが検査経験のある一般社団法人チャーミングケア代表理事石嶋瑞穂さんにお話を伺いました。

 

 

お子さんの検査はどのようなものがありましたか？

レントゲンと心エコー、心電図がセットでした。赤ちゃんの頃はトリクロリールシロップを飲ませて眠らせて検査を受けていましたが、寝かしつけは保護者の役割なので、すごく苦労しました。

 

今考えると、小さい頃から感覚過敏のある子で、人見知りや場所見知りも激しくなかなか寝ついてくれず、検査の日はずっと抱っこをして一日丸々かかり、帰宅した時はもうクタクタという感じでした。

 

小学校に入って、今度は小児白血病に罹患し、定期的にMRIを撮らねばならなくて、最初は鎮静をかけてやってもらったんですが、マルク（骨髄穿刺）や髄注（骨髄から薬剤を投与するもの）という処置も定期的にあり、その際は必ず麻酔をします。

 

こんな短期間に複数回麻酔して大丈夫なんだろうか？と心配になって、

「ちゃんと本人が納得するように説明したら、MRIに関しては鎮静はいらないと思います」と医療者の方にお伝えしました。

 

結局、話をしても一人になるというのが嫌だったみたいで、研修医の方に毎回MRIの検査室までついてきてもらっていました。

 

以前、大脇さんと小野さんにはチャーミングケアのポッドキャストに出演していただいたことがあるので、その際にも子どもの経験に関して少しお話しさせていただきました。

https://note.com/charmingcare/n/nd5bfc09e665b

 

プレパレーションってご存知でしたか？

運営しているチャーミングケアでは研修事業を行なっています。その中で大脇さんにお話ししていただく機会があって、その際に色々と教えていただきました。

 

検査前の事前説明であるという認識はあったんですが、医療点数がつかないとか病院ごとに説明に違いがあるというのは、お話を伺うまで深く考えたことがありませんでした。

 

よくよく考えてみれば、子供の検査に病院の職員の方に付き添いをしてもらうのだってコストのかかっている話なんですが、日本の医療保険って本当によくできていて、子どもに至っては1ヶ月500円-1000円とかで受けられてしまうので、コスト面のことは全然頭に浮かんでこないですよね。

 

ですが、息子が白血病で入院した2ヶ月目に前月の請求が来たんですが、病院の手違いで保険が適応されてない金額で請求書が来て『360万円』って書いてあって、ひっくり返りそうになりました。がんの治療をしているわけなので、そりゃそうなんですが。

 

手厚い制度が当たり前になっているので、検査も言われるがまま身を任せるというか流れ作業になりがちという感じはします。

 

鎮静に関して、うちは何度もしないといけなかったので、どうにかならないか相談させてもらいましたが、1回限りの話だったら早く終わることを優先して、「仕方ないことだ」と何も意見しなかったかもしれないですね。

 

そういう意味で言うと、子どもにとっての適切なプレパレーションが当たり前になってくれたら保護者も安心するのになぁと思います。

 

最後に応援メッセージをいただけますでしょうか？

医療において、誰でも経験したことのない事をするのは不安が大きいし、行動するにしても勇気が必要だったりします。子供だと尚のことです。

 

物心がつきだしたくらいから小学校低学年くらいまでは、プレパレーションは必要だと思います。

その上で鎮静が必要だったら処置をするという形が望ましいように思います。

鎮静にもリスクはあるので、なるだけ少なく済むに越したことはないと思います。

 

ほんの5分立ち止まる時間を設けるだけで、リスクが回避できるかもしれないのであれば、今回のクラウドファンディングに関わる絵本や動画はとても重要な役割を果たしていると感じます。

 

プロジェクトを推進している大脇さんや小野さんは、とてもボランタリー精神の高い方々でチャーミングケアでも大変お世話になっています。

 

こういう子供目線にたてる方々が、このツールを手にすることでもっと増えていけばいいなぁと感じています。

（中央）一般社団法人チャーミングケア代表理事　石嶋瑞穂さん

（左）NPO法人Medical PLAY代表　小野、（右）同、大脇