地方の殖産産業を通じて日本の少子化対策慈業

大学の学生が居住する住所で一番多いのは、東京23区をひとまとめにすると東京23区で2番目が京都市、3番目が福岡市です。

このうち、福岡市を例にとると、福岡市には国立大学1校、県立大学1校（女子大）、私立大学13校（うち1校女子大）があります。

学生数の多い主要な大学は最寄駅から徒歩数分で大学の校門にまでたどり着くことができ、中でも福岡大学は、学生数2万人を誇る西日本有数のマンモス大学で、最寄りの福岡市地下鉄七隈線福大前駅より徒歩数秒といった好立地にあります。

福岡市は人口増加数・増加率とも全国一で、平成7年（1995年）には128.5万人だった人口が、現在では165万人を超え、この30年弱で36.5万人も増加したことになります。

福岡市は最初から九州の中心だったかというとそういうわけではありません。

今も、ですが、国の出先機関の本局は熊本にあることが多いです（例：九州財務局・九州農政局などは熊本に在庁している）。

また、戦前までは九州最大の人口を誇っていたのは熊本・長崎でありました。福岡は九州でも3番目という控えめなポジションでした。

ただ、福岡を九州最大の都市に押し上げた最大の功績は新幹線の博多までの開業ですが、それよりずっと前に、大きな功績を果たしていた存在があります。

九州帝国大学の福岡誘致です。

九大を九州のどこかに進出させるにあたり、当初熊本が有力視されておりましたが、福岡の熱心な誘致により、九州でも一地方都市にすぎなかった福岡に九州帝国大学は開学することになりました。

これが、その後、学園都市福岡を構築するうえで非常に有効に働きます。

九州大学の福岡市への誘致は、市の教育環境と経済発展に大きな影響を与えました。

福岡市は、九州地方の経済、行政、交通の中心地として位置づけられており、九州大学のような大学の存在は、地域の学術研究能力を高めるだけでなく、学生や研究者を惹きつけることで、地域経済の活性化にも寄与しています​​。

具体的には、高等教育機関の誘致は新しいビジネスチャンスを生み出し、地域のビジネスとの連携を促進します。

また、研究開発の強化は地域のイノベーションを推進し、新たな産業の創出を助ける可能性があります。さらに、学生や教職員の消費活動は地域経済に直接的な影響を与えるため、大学の存在は経済的利益をもたらすと考えられています。

九州大学のような教育機関が地域に定着することで、地域のブランド価値も向上し、福岡市がより魅力的な学術都市として認識されるようになります。これにより、さらに多くの研究投資や学術的な活動が地域に集まることが期待されます。

このように、大学が集積するということは地域の発展に直結します。

少々話は変わりますが、東京の過度な過密を避けるため、政府は都内の大学を郊外、特に多摩地区に移転させました。

多摩地区の方言で、ぬかるみに足を取られたりしたときに「うざったい」という方言があるのですが、このうざったいが若者に浸透し、湘南爆走族という漫画を通じて、今のように「うざい」と言われるようになったと考えられています。

つまり、それだけ大学生には文化の発信力があるということです。

福岡は、九大の誘致並びに新幹線の終点として発展し、現在では日本で5番目に人口の多い都市へと発展を遂げました。

人口が増えてよかった、おしまい、という話ではありません。

問題はここからです。実は大学に入学する際、学生人口が増えている都道府県は10都府県しかありません。

実は福岡のケースは全国的にまれであり、多くの道県で、学生人口が減少しております。

北海道を除き、その他の都府県に所在する旧帝大の都府県では人口は流入しているものの、それ以外では、人口が流出しており、その都道府県で実施される高等教育と、学生が受けたい高等教育の間でアンマッチが発生している可能性があります。

国立大学で一番学部数が少ない滋賀大学は、これまで、経済学部と教育学部しかありませんでしたが、データサイエンス学部を設立し、これまでの国立大学の枠組みから離れる方向で大学運営を行っております。

恐らく、こういった新しい取り組み、学部学科をつくっていくことが、地域の未来をつくっていくであろうと思われます。

国立大学はその都道府県に必ず1校以上あるのですが、国立大学が地のものをよく研究し、地域の発展に貢献していかないと、地域の発展は望めません。単なる駅弁大学と呼ばれて地元でまあまあ頭のいい人がいくだけの学校になってしまいます。きちんと地域と連携し、新しいイノベーションを起こさない限り、福岡のような発展は望めません。

地方産業の活性化は大学にあります。