プロジェクト概要

中世から続く伝統芸能、 “能”

 

そこに在るのは、“人間の生と死”

 

この普遍的なテーマを支えるべく、

戯曲や舞台の構造や道具があり、

役者の肉体もそのフォームを保ってきました。

 

変化する時代の波に揉まれながら、生き永らえてきた能。

現代における能のあり方を模索し、

たどり着いたのは“現代の課題を問う能”の姿。

 

そして今年、現代が抱える課題のひとつ、

“平和と寛容”を希求する新作能を、

ヨーロッパで上演します。

 

 

目指すのは、いまの時代に生きる能。

 

はじめまして、観世流シテ方能役者の清水寛二です。

能の団体である公益社団法人銕仙会の理事、東京藝術大学美術学部先端芸術表現科の非常勤講師でもあります。

 

舞囃子「芦刈」より

 

私は、伝統芸能としての能の継承・保存や普及に励むと同時に、「いまの時代に活きる能」を目指し、近・現代の歴史や近・現代人が直面している問題を描いた新作能の創作にも多く携わってきました。

 

「能の業界に安住してはいけない」という観世寿夫ら亡き師匠たちの言葉があります。「能の業界に安住する」とは、能の業界の中だけで生きていること、普段能に接している人たちばかりに向けて演じ・仕事をしていることを指します。

 

能は「能だから良い」のではないし、能をよく観る人だけがわかっているようなものであってはなりません。能を知らない方々が観ても面白いと思えるような表現を追求することを、そのような能のあり方を突き詰めることをやめてはいけないと思うのです。

 

能そのものには本来様々な演劇的要素があり、様々な表現の可能性があるはずなのに、能の業界の中では多くのことが固定化してしまっています。

 

「能はそういうものだから」で了解してしまっている部分、階級的になって上から言われたことをただただやり続けているだけになってしまっている部分があります。そうであってはいけないと、私は思います。

 

 

こうした想いから、中国の昆劇やインドのクーリヤッタム、ポーランド演劇など異文化との交流・共演や、コンテンポラリーダンスや音楽、美術、現代演劇、琉球の組踊など異分野との協働にも取り組んでいます。

 

音楽喜劇「メドゥーサの罠」より

 

そしてこの度、そうした新しい取り組みの一環として、「平和」と「寛容」を希求する新作能を創作、ヨーロッパで公演します。しかし、新作の演目であるがゆえに、かかる経費は膨大で、助成金でまかないきれない部分も多くある現状です。

 

そこでこの度、クラウドファンディングへの挑戦を決意しました。

 

どうか活動にご共感いただける皆様からのあたたかいご支援を、いただけないでしょうか。

 

 

いまの時代に何を求め、

どのように“能”を位置付けるのか。

 

私が能と出会ったのは、大学生の頃です。

高校時代から演劇をやっており、元々舞台芸術に興味を抱いてはいたのですが、大学時代に能に出会い衝撃を受けました。

 

その頃は、明治生まれの名人たちが最後の輝きを放った時代です。文明開化で西洋文明が日本に押し寄せ、西洋文化が先進的で"上"とされ、日本従来のものは遅れていて"下"だとみなされた時代の波に翻弄されながらも、一方で、例えばウィーンの万博で日本文化が紹介された時には、衝撃をもって迎えられました。

 

このような常に西洋との比較にさらされる時代の当事者として、能を演じる名人たちは日本にずっと伝わってきたものの本質や自分たちの力について突き詰めて考え、表現を追求しました。彼らのおかげで能は生きながらえてきた部分もあります。

 

そのような名人たちの芸を観たことは、今の自分に大きな影響を与えています。

 

新作能「ヤコブの井戸」稽古風景

 

また、この時代は、能の技術を持って新しい芸術表現ができるのではないかと考え、実践していた時代でもあります。

 

例えば彼らは、ギリシャ悲劇やベケットをやっています。古典というのはそれだけの力を持っているのだと思いましたし、だからこそ古典をちゃんと学ばなければならないし、きちんとした古典の技術を体得しなければ、その先はできないと思いました。

 

そして飛び込んだ先が銕仙会でした。

 

亡き師匠たち(観世寿夫・観世静夫=先代観世銕之丞・観世栄夫)が、様々な現代の作品・アートとの交わりに多く取り組んでいたため、そのDNAが自分に埋め込まれていたのでしょうか。徐々に異分野・異文化とのコラボレーションを考えるようになっていきました。

 

それが機会を得て、実際にやることに。演出家・劇作家の佐藤信さんは昔、観世榮夫の弟子だったのですが、中国の演劇と能をやりたいと思った際に声をかけてくれましたし、そのほかに、また主任教授であられた故・木幡和枝さんとの繋がりでインドの舞踊に繋がったこともあります。

 

また先代・観世銕之丞の稽古に駐日ポーランド大使のヤドヴィガ・ロドヴィッチさんがいらしていた縁で、ポーランド演劇の「祖霊祭」に呼んでいただいたりしています。振り返ると、全て師匠たちが種をまいてくれていたのだなと思います。

 

新作能「長崎の聖母」より

 

こうして能の道を歩んできた、私個人の考えですが、能とは、元々は「一人の人間が生涯を送るにおいて出会いと別れを経験する」という側面を表現した芸術、一人ひとりの思いを表現した芸術です。

 

現代の抱える問題意識を考えた時、古典の能をやる時に「ただ古典だから良いのだ」というのではなく、「現代においてどのような意味を持つのか」ということを認識してやる必要があると思います。できれば、やはり新作を作って表現していくべきでしょう。

 

「伝統だから良い」ではなく、「いまの時代に、どういうアートを求め、その中にどう能を位置付けるのか」ということを考え、いまやるべきもの・あって欲しいものをお客さんと一緒に作っていきたい。そんな風に考えています。

 

アインシュタインを描いた新作能「一石仙人」より

 

 

“草の根”から始まった新作能2作品を、

ウィーン・パリ・ワルシャワで上演。

 

伝統の中にもどれだけ新しいものがあって、「人間がどう生きているのか」ということを逆に古典に取り込み、古典を生かしていくということも必要です。古典として演じられてきたものは、その時代の人に共感を持って観てもらえる要素があったからだと思っており、同じことを現代でもやっていく必要があるためです。

 

今回の企画は、特に、民族間対立や大量殺戮の中の、名も無い市井の人々、名前を知られずに死んでいった人たちを描いています。そのような名もなき人々の思いを大切に表現したいと思っています。

 

また、国や大きな芸術施設・企業の全面的なバックアップがあって始まったわけではありません。参加する一人ひとりの思いから始まった企画で、その一人ひとりの思いがヨーロッパのお客様に伝わるようにしたいと思っています。そしてその精神は、今回の作品の精神に通じるものです。

 

新作能「長崎の聖母」より

 

このプロジェクトは、2015年に長崎市民・出身者の皆さんの熱意とご支援によって実現した『長崎の聖母』ニューヨーク・ボストン公演の成功を、ウィーンに住む日本の方が耳にして、私に連絡してきてくださったところから始まりました。

 

『長崎の聖母』は、長崎・浦上のカソリックの人々の苦難の歴史や、原爆投下時の市井の人々を描いた新作能です。「長崎の原爆被害者を慰霊したい」という長崎市民の声をきっかけに、世界的に著名な免疫学者であり新作能を多数書かれた故・多田富雄さんが台本を、私が演出とシテを担い、生まれた作品です。

 

伝統的な能の表現を用いつつ、近・現代の日本の歴史を描いたこの作品を、ぜひウィーンで紹介したいと言っていただき、まずは『長崎の聖母』の上演が決まりました。

 

新作能「ヤコブの井戸」

 

その後、知日家で日本美術の専門家でもある墺日協会のディートハルト・レオポルドさんが、イスラエル=パレスチナ問題をテーマとした能の台本を書かれていることを私に打ち明けられ、読ませて頂いたところ、能の構造を効果的に用い、かつ深い洞察に満ちた作品で、台本のままで埋もれさせてはいけないと感じました。

 

そして、その作品『ヤコブの井戸』を『長崎の聖母』と併せて上演することとなり、最終的にパリとワルシャワでも、現地の方々や友人・知人の助けを得て上演が決まりました。いわば「草の根」から始まったプロジェクトです。

 

 

新作能『長崎の聖母』『ヤコブの井戸』

ヨーロッパ公演2019

 

■スケジュール・会場
ウィーン:9月20日 [金]・21日 [土] @オデオン座(共催:墺日協会)
パリ:9月24日 [火]・25日 [水] @パリ日本文化会館(共催:アトリエ・オガ・パリ)
ワルシャワ:9月28日 [土]・29日 [日] @ワジェンキ美術館ロイヤルシアター(共催:ワジェンキ美術館)


■出演者
清水寛二、観世銕之丞、西村高夫、柴田稔、山中迓晶、長山桂三、安藤貴康、観世淳夫、殿田謙吉、小笠原匡、小笠原弘晃、松田弘之、林大輝、飯田清一、白坂信行、田中達、金春國直、ヤクブ・カルポルク、ニーナ・フォグ、クシシュトフ・シュチェパニャクほか

*公演地・公演日により出演者の入れ替わりあり。


■内容

 

『長崎の聖母』
作:多田富雄

演出・シテ:清水寛二

 

巡礼者が長崎浦上天主堂を訪れ、修道僧に出会う。修道僧は、原爆投下の日、浦上の町は火の海となりまるでこの世の終わりのようであったことや、マリア像や聖堂も焼け落ち多くの人々が犠牲となったことを告げる。犠牲者のために祈っていると、聖歌が響く中、女が現れる。その姿は被爆者の霊か聖母か。女は聖母マリアの慈悲を伝えるために現れたと言い、原爆の夜の様子を物語る。原爆による長崎の悲劇、そして世界平和と魂の救済を描いた能。長崎市民の求めに応じて創作された。科学と世界の諸問題に関するパグウォッシュ会議開催中の長崎や、核拡散防止条約再検討会議開催中のニューヨークで上演。公演に際しては、現地の聖歌隊が聖歌を歌っており、今回も各地の聖歌隊が出演を予定。

 

『ヤコブの井戸』
作:ディートハルト・レオポルド

ドラマトゥルク・翻訳:小田幸子

演出・シテ:清水寛二
 

2人のユダヤ人がヤコブの井戸でパレスチナ人の女に出会う。何百年もの昔、ユダヤ人はサマリア人との接触を避けていたにもかかわらず、女は、サマリア人にこの井戸で水を分け与えたユダヤ人男性の話をする。対立する二つの民族が砂漠で一つの井戸の水を分け合うという新約聖書ヨハネの福音書の物語を題材にした能。今なお世界で絶えぬ民族間、宗教間の諍いに疑問を呈し、象徴としての水を分け合うことの意味を問う。ディートハルト・レオポルドと清水寛二が数年に渡り対話を重ねて創作した作品で、本ツアーが世界初演。今回は、各地で現地の俳優が出演する多国籍プロダクションで、一部は現地の言葉で上演される。

 

 

 

 

今回のプロジェクトは、日本オーストリア友好150周年・日本ポーランド国交樹立100周年を寿ぐ企画でもあります。

 

150年前または100年前、日本がこれらの国々と国交を樹立した頃、お互いの目にはお互いの文化がさぞ異様に映ったことでしょう。それでも、私たちはお互いの違いを受け入れ、国レベルだけではなく草の根レベルでもコツコツと友好関係を作り上げてきました。

 

そこには、自分とは異なるものを受け入れる寛容さが欠かせなかったはずです。

そのような寛容さを忘れないようにしたいーーこのプロジェクトには、そんな思いも込められています。

 

 

 

観客の心に響く公演を、

ご支援いただいた皆様と作りたい。

 

上に出演者の名前が並んでいますが、彼らとそして携わる全てのスタッフ・専門家たちのプロとしての働きは、このプロジェクトの成功には絶対に欠かせません。

 

新作能「ヤコブの井戸」稽古風景

 

また、通常の古典能では、公演のために新しく面を作ることはせず、現存している中から作品の雰囲気に最も近いものを選んで使用します。しかし今回は、ただ伝統芸能としての能をパッケージとして持っていくのではなく、新作「ヤコブの井戸」を上演するため、3枚の面が新作です。また、作品世界をより効果的に観客に伝えるために「長崎の聖母」の面も新しく作成しました。

 

作品のために新しい面を打つ(「つくる」ではなく、打つ」と言います)ということは能においてはとても大きなことで、そのようなことに対応してくださった面打ちの方がいるということは、この企画の力を証明しています。

 

しかし、このような部分は助成金では賄いきれない上に、とてもお金がかかってしまうのです。

「ヤコブの井戸」のために新しく打っていただいた面。

 

助成金で賄えない費用の内訳に関しては、下記のような費用になってまいります。

・新作ゆえにかかる小道具費

・稽古にかかる諸経費と国内交通費・宿泊費

・出演料・スタッフ報酬の一部

・翻訳・通訳費の一部

皆様からいただくご支援は、こうした必要経費のうち、主にプロジェクトに参加してくれている能楽師・俳優・スタッフや翻訳・通訳の専門家たちに、彼らのプロフェッショナルな働きにふさわしい報酬を支払うために大切に使わせていただきます。

 

郵便振替による寄付も頂いていますが、それでもまだ赤字を補うには足りず、このキャンペーンを立ち上げました。皆さまのご支援を受けて、最高のチームによる心に響く公演をヨーロッパの観客に届けたいと思っています。

 

 

 

互いの違いを認め合える世の中へ、

一歩踏み出す能を上演。

 

核兵器開発競争はとどまるところを知らず、社会は人種・宗教・民族・貧富・思想・国籍などで分断されて、ますます混迷の度合いが深まるいまの時代ですが、だからこそ今回のプロジェクトを実施する意義があると、私は考えています。

日本とヨーロッパは地理的には遠く離れていますが、長い間民間レベルで交流を保ち影響し合ってきました。それには異なるものを受け入れる寛容さが欠かせず、ひいては多様性を受け入れる心が欠かせません。

 

見ず知らずの者同士が瓦礫の中でお互いに助け合い、または民族の違いを超えて水を与え合う作品『ヤコブの井戸』。そして、長崎の歴史的文脈を汲み、原爆の犠牲者を慰霊すべく作られた『長崎の聖母』。

 

この新作能2作品を、多国籍キャスト・多言語で上演し、日本・オーストリア・フランス・ポーランドから草の根で繋がった人々が協力し合って実施する今回の新作能プロジェクトは、そのような、異なるものを受け入れる寛容さのあり方を象徴するものだと、私は考えています。

 

新作能「長崎の聖母」より

 

「異なるものを受け入れる寛容さ」とは、違いを乗り越えて同じ土俵に立つ、ということです。実際には大変なことだと思いますが、自分と違う立場や考えの人がいるということを認識し、お互いの違いを認めて、対等に向き合うことができたらと思います。

 

『ヤコブの井戸』の原作に接した際、「これは能ではできない」と最初は思ったのです。でも、レオポルドさんは「これは能でなければできない」と言いました。レオポルドさんはヨーロッパ人で私は日本人、レオポルドさんはヴィジュアルアートの人で私は舞台芸術の人間。出自も立場も違うわけで、考え方もものの見方もだいぶ違います。

 

ですが、まずお互い違うということを認め、どちらが上というのではなく、新作能について同じ土俵に立って話をしていくうちに、私の方が「これは能だからこそできることなんだ」と腑に落ちたのです。


このプロジェクトが、平和で多様性のある社会を実現する一助となることを、心から願っています。

 

 

 

リターンご紹介

 

ご支援くださった全ての方に現地での様子や支援金の使途をお伝えするレポートをメールでお送りするほか、以下のようなリターンをご用意しています。

 

ツアー報告会参加(50,000円)

青山の能舞台で行う報告会にお招きします。ツアーの様子や現地の反応を、映像や写真にてご覧いただけます。また、実際に使用した面などもご紹介します。

 

公演チケット(30,000円)

清水寛二主催公演「青山実験工房」または銕仙会定例公演にご招待します。

 

台本コピー(30,000円)

日本語上演台本(出演者が上演に際し使用するもの)のコピーを差し上げます。

 

オリジナルエコバッグ(10,000円以上)

公演オリジナルエコバッグを差し上げます。

 

オリジナルグッズ(5,000円)

銕仙会オリジナルクリアフォルダーまたは一筆箋を差し上げます。

 

お礼メッセージ入りポストカード(5,000円)

オリジナルポストカードに、清水寛二よりお礼メッセージを書いてお送りします。

 

 

税制上のメリットについて

 

また、この他に、ただ活動を応援したい!と思ってくださる方に向けて、モノのリターンを伴わない「応援コース」も設定いたしました。応援コースには税制上のメリット(控除)がございます。いただいたご支援金は、公益社団法人銕仙会への寄付金として受領いたします。

 

【個人の寄付】
税額控除が受けられます。


●公益社団法人銕仙会への寄付金は、税制上、税額控除の優遇措置が受けられます。
●相続により取得した財産の一部または全部を寄付した場合、寄付した財産に相続税が課税されません。

 

【法人の寄付】
損金算入の枠拡大を利用できます。

 

*詳しくは国税庁のサイトをご覧ください。

 

※Readyforからのご注意
本プロジェクトは名目上は「購入型クラウドファンディング」に当たります(寄付型クラウドファンディングではありません)。支援金が税務上寄附金として扱われるか否かについて、また個別の税金の取扱いについての詳細は、税務署または税理士等専門家にご相談ください。

 


本プロジェクトのリターンのうち、【お名前掲載】に関するリターンの条件詳細については、リンク先(https://readyfor.jp/terms_of_service#appendix)の「リターンに関するご留意事項」をご確認ください。


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