東京バレエ団｜コロナ禍を生き延び、ピンチをチャンスに変えるために

ダンサーの声、第二弾は東京バレエ団ソリストの井福俊太郎です！

東京バレエ学校卒業後、ポルトガルの国立コンセルヴァトワールに留学、イタリアのカンパーニャ・バレット・クラシコを経て東京バレエ団に入団した井福。

2019年夏の東京バレエ団第34次海外公演、ベルヴィ野外劇場（イタリア）での公演中に起きた膝前十字じん帯断裂の怪我から、復帰するまでの経験について語りました。

 

 

——まずはクラウドファンディング1000万円達成、支援者も400名を超えました。

こんなに多くの方から支援が集まることに驚きました。

コロナ禍の運営費、ダンサーのコンディショニングという名目で募ってこれだけ集まるのかと。

これまで培われてきた東京バレエ団の歴史・ブランドのおかげだと思いますし、今はなかなか直接お話できる機会がないのですが、ファンの皆さんのあたたかさを感じました。

 

——井福さんは海外のバレエ学校やカンパニーに在籍されていましたが、ボディコンディショニングについてはどのような環境でしたか？

フィジオ（注：理学療法士 Physiotherapist）の部屋があって週3回くらい常駐していました。必ず利用するわけじゃないですが、やはりいてくれると安心感があります。

その部屋にトレーニングマシンやピラティスの器具もあって。海外は小さいところでもわりとそういうものが当たり前にありましたね。

一時期は日本でもジムに通ってたんですが、今は時間がなくて……。スタジオでスクワットとか、そういうトレーニングをしています。マッサージなどの治療も日本だと時間を見つけてそれぞれの信頼できる方の場所に通っているので、そこが違うなと思います。

　　

——昨年のバレエ団の活動休止期間はどのように過ごしていましたか？

2019年夏に膝前十字じん帯断裂の怪我をし、再建手術を経て2020年3月にようやく復帰したところでした。

そのあとすぐ活動休止になったので、リハビリの延長くらいの認識で、しんどいということはあまりなかったですね。

自粛期間中はオンラインでバレエ団員とつないで、お互いに振りをだしあったりもしていました。

 

——海外ツアー中の怪我、かなり大きな出来事でしたよね。そのあたりのことを詳しく伺ってもいいですか？

こんなにバレエを休んだのは初めてでした。

怪我をした時は予兆もなく、むしろ気持ちよく踊れていました。野外の劇場で、コンディションもかなり上げていたので。多分それでジャンプがいつもより高かったんだと思います。

いつもは着地しているはずのところでまだ空中にいて、降りるタイミングがずれて膝が内側に入った感じでした。

一番精神的にしんどかったのは手術前。どうなるんだろう……という気持ちでした。

手術後のリハビリはきつく地道だったけど確実に積み重ねていく感じがまだあったと思います。

熊川哲也さんも同じ怪我を経験されていたので参考にしながら、膝周りの筋肉を鍛えるトレーニングにも取り組みました。

 

 

——怪我をしてからの変化はありましたか？

それまでももちろん筋肉の使い方を考えて踊ってはいましたが、細かいところ、例えば着地の動作まで意識して考えるようになりました。若さとやる気みたいなもので乗り切ってきていたところを、これからはもっとトレーニングのこともちゃんと考えないといけない、というきっかけになったと思います。

 

あとは、復帰してから舞台前の心配の仕方が変わってきました。

再建手術後、入院中は毎日5時間くらいリハビリを続けていて、退院した後も半年くらい通っていました。シンプルな動作を延々と続けるんです。あれだけやったのだから大丈夫、という自信につながりました。それは良かったことかもしれないですね。

 

すべては今、こうやってカンパニーに戻ってこられたから言えることですが……

 

——復帰できて本当によかったです……今はどのような状態なんでしょうか？

膝前十字じん帯を切った人はパーソナルトレーナーを付けてしっかりやっても2年くらいはかかるそうなので、今はやるべきことをきちんとやりながら時間をかけている感じです。焦ってはいないですね。

 

——そして最近は雑誌『Tarzan』公式サイトTarzan webのブログで連載もされています。トレーニングやサプリメントなど、ダンサーの中では特別気にされているほうなんでしょうか？

特別ってほどではないですが、昔からよく考えていますね。ダンサーによってどこに重点を置くかが違うので、人それぞれだとは思いますが、個人的には（食事やサプリメントのことは）やったほうが良いと思っています。

僕の場合18歳で海外に行って、その時からいろいろと試していました。毎日体重計に乗って、1週間ごとにメニューを変えたり、砂糖抜き、肉抜き、毎晩夕食はカリフラワーだけにしてみたり。

体重はめちゃくちゃ落ちて体力的にもさすがにきつくなるんですけど、そこに例えば卵とか鮭とかメニューを少しずつ足して、何を食べたらどう変わるかを試していって。自分の身体に合う方法を探していきました。

 

——ずいぶんストイックですね！

バレエ学校生で、時間があったからできたことですね（笑）

でもやっぱりそうやって若いうちからいろいろと試して、自分に合うルーティーンがあったほうがいいと思います。

ただ、カンパニーに入って、ツアー等で自宅を離れるとルーティーンを維持することは難しい。それで調子を崩すことがあってもいけないので、きっちり決め切らないようにもしています。

プロテインやサプリメントも便利だし大事だけど、あまり頼りすぎないように。

本当は何時までに食事を取りたいというルールもあるのですが、仕事で帰りが遅いこともあるので。いろいろと気を付けつつ、バランスが大切だと思います。

 

——今年11月の金森穣さん（振付家、舞踊家、Noism Company Niigata芸術監督）振付による新作上演も発表されました。今後の抱負や目標を教えてください。

いまちょうど金森穣さんと井関佐和子さん（Noism副芸術監督）がいらっしゃって、リハーサルをやっているところです。配役はまだわかりませんが、こうやって新しい作品を一緒に作っていけることはとても面白く刺激的で、良い経験になると思います。

　復帰して徐々に役ももらえるようになってきたので、まずは怪我無く、着実に取り戻していきたいです。今回のクラウドファンディングでいただいているご支援・声援を力に変えて、最大のパフォーマンスをお届けできるように頑張ります。

 

東京バレエ団×金森穣　新作世界初演「かぐや姫」記者会見の様子はこちら＞＞

 

井福俊太郎（東京バレエ団ソリスト）

東京バレエ学校を卒業後2年間リスボンの国立コンセルヴァトワールに留学。卒業後はイタリアのカンパーニャ・バレット・クラシコに入団。古典作品から創作バレエまで幅広いレパートリーを踊る。2015年東京バレエ団入団。

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