大湫町出身・在住の彫刻家 天野裕夫さんからのメッセージです

今回１００万円の返礼品を提供して下さった、大湫町出身、在住の彫刻家　天野裕夫さん。
ご好意により、「兎塔」を返礼品として提供してくださいました。知っている方もいるとは思いますが、改めて彫刻家天野裕夫さんを紹介します。

天野さんは、石や木にブロンズを組み合わせて動物をモチーフとした独創的な作品を作る彫刻家だ。
大湫町の小高い山の上にあるアトリエ には所狭しと作品が並び、作業台の上には新たな形に生まれ変わっていく作品の原型がある。

お邪魔する度に、真剣な眼差しで作品と向かい合う天野さんの姿があった。

石や木の形から着想を得てユニークな作品に作り上げていく手法を、天野さんは間に合わせとか行き当たりと称し、笑いながら話してくれる。そのスタイルが、直感的に素材の持つ潜在的な魅力を引き出し、存在感のある天野裕夫彫刻になるのだと素材を前に嬉しそうに語る姿を見て感じとれた。

今回提供してもらったタカケイショーと兎塔の２作品は、以前大杉の整備事業で切り取られた枯れ枝部分を使って制作されたものだ。
枝にある苔のついたコブや、ウロのあるゴツゴツした特徴を何かに見立てて、使おうとしている部分を小さく粘土で趣味レーションした後、おおよその形をノミで彫り出す。削られた表面の奥には年輪がうねるように並び、想像を超えた木目が現れる。その姿に、感心したり驚いたり、考えたりしながら、目の前にある木に逆らわないように見立てて作品へと変化させていく。

その時、頭の片隅にあるのは子供の時に見た大杉の存在だ。半世紀前の大湫町を囲む山の木は小さいものが多く禿山もあり、大杉は特に目立つ存在だった。それは御神木と言うよりは神社と一体になった塔のように感じ、いつもそばにいて見下ろされているような安心感を感じていた。あたかも大叔父のようで、大杉で彫刻をするときはそんな既視感を思い出すと語ってくれた。

　今回提供して下さったタカケイショーも兎塔も大杉の力強さだけでなく、どこか温かさを感じる作品となっている。それは、天野さんの素材と作品への向き合い方が如実に現れた大湫町の天野裕夫だからこそできた形だと強く思った。

以前倒れた大杉を前にこんなことを話してくれた。

「形あるものはいつか朽ちなくなっていく。そこをコントロールしたりすることはおこがましい。ただ、彫刻をする者として造形的な見地から見ると、大杉の力強さを感じられるようできる限り大きく残していけたらいいと思っている。倒れた大杉が今後もこれまでのような魅力をもち、それが大湫町にとって長期的な視点で見ていいものであって欲しいと思っている。そうでなくては、大湫町にとって大杉が只々失われたことになってしまう。どのような形になるかはまだ分からないが、今後も長く愛され続ける存在であって欲しい。」

天野さんは現在、大杉を使った巨大な作品の構想も進めている。内部に入れるくらい大きな兎の彫刻で、日本で一番大きい木彫になるのではないかと作品へ思いを馳せていた。いつか大湫町に大きな大きな天野裕夫式の兎の彫刻が見れる時が来るのかもしれない。