【難民。】

さて、今日も仕事に行くか（…と言っても、一階下の階に行くだけだが）と、ドアを開けたら、男女の姿。

男性はアフリカでよく見かける、ビニール製のマチとチャックの付いたカラフルな袋を持っている。

そして私の姿を見るなり、おもむろに「マダム、お早うございます（とても紳士的に）。あなたはアフリカンアートに興味はありませんか？私はこんなものを持っています。」と袋の中を見せてきた。まだ朝の８時前である。

そこには少々ちゃちな作りの木のお面やその他木彫りの物が入っている。

基本的に私は最近ルワンダで売られているような小ぎれいな民芸品より、おどろおどろしいお面とか彫刻の方が好き。それはいかにもアフリカ的で、家中をそれらで溢れさせたいくらいだ。

しかし彼の持っていたものは、残念ながら三流の土産物屋で売っているような品物なので、スマンスマンと言いつつ、去ろうとした。

そしてまた彼が言う。少し離れたところで、恐らく奥さんか彼女であろう。二人の会話を、少し笑顔を浮かべながら見ている。

「私はコンゴからの難民です。これを売って日銭を稼いでいるので、何か買っていただけないだろうか？」

最近、こういうコンゴからの難民あるいは避難民が行商をしている姿を目にする。しばしば続いているコンゴ国内での紛争を逃れ、ルワンダまで来たのかもしれない。もしかしたら「自称」難民なのかもしれない。いずれにしてもコンゴからルワンダに来た人たちが、生活を支えるためにそういうものを売りながら生きている姿だ。

彼らは今日一日、朝からこうして歩き回り、果たしてどのくらいの売り上げがあるのだろう。何もない日だってあるはずだ。それを考えると、同じように行商をしている人たちの中でも、果物や野菜を売っている人の方が売り上げは良いのかもしれない。なんだかんだ食料は生きるためには必須で、誰かしら必ず買うから。でもコンゴからのお面なんて、もの好きじゃないと買わない。

申しわけないが、彼から物を買わなかったけど、朝日を浴びながら、奥さんと二人で歩いていく後姿を見たら、何だか人生はそこかしこで大変だと思った。

その男性にしても、少し離れた所に佇んでいた女性にしても、どこか気品があり、私が物売りをしている人に対して、こんなふうな印象を持つなんて珍しいなと、そのことにも少々驚いた。

（写真はしばらく前に買ったペアの彫刻。大きい方の女性は、手に生まれたばかりの赤子を抱いている。男の方が持っているのは、どうしても酒瓶に見えて仕方がない。祝いの酒という見方もできないではないが、こういう時にも酒を飲む男の無責任さという見方をしてしまう私である。）