【第10弾】歌舞伎や映画､フィルムがつないだ記憶を遺す。

お早うございます。松竹大谷図書館の武藤です。

 

お陰様で、目標額を達成した後も毎日ご支援と応援コメントを頂きまして、スタッフ一同たいへん励まされております！本年度はプロジェクトで募集するご支援のうち、約150万円を電動書架の修理に充てる必要があったため、当初の計画ではフィルムの内容の確認費用に充てる余裕がありませんでした。しかし皆様の温かいご支援によりネクストゴールに挑戦ができることとなりました。10年目にして初めての試みです！

この先1本でも多くのフィルムの内容が確認出来るよう頑張ってまいりますので、引き続きご支援ご協力を頂けますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます！

 

さて、１万円以上ご支援下さった方には、当館が所蔵する台本を保護する、スタッフ手作りのカバーにお名前を記載するというお礼をご用意しています。

演劇の台本作品リストに続き、今回の新着情報では、映画台本作品リストをご紹介いたします。

 

本年が生誕110年にあたる森雅之、三回忌を迎える京マチ子と撮影監督の川又昻、没後10年となる森田芳光監督、そして、生誕90年を迎えた篠田正浩監督の作品からそれぞれ選定し、リストにいたしました。毎年恒例の寅さん台本作品リストとキネマ旬報ベストテンリストもございます。

 

今回の新着情報では、リストの中から森雅之の出演作品をご紹介します。
(※番号は台本作品リストの番号です)

森雅之出演作品一覧
51 『安城家の舞踏会』1947年 吉村公三郎(監督)
52 『わが生涯のかゞやける日』1948年 吉村公三郎(監督)
53 『不良少女』 1949年 成瀬巳喜男(監督)
54 『破れ太鼓』 1949年 木下惠介(監督)
55 『東京のヒロイン』 1950年 島耕二(監督)
56 『奥様に御用心』 1950年 中村登(監督)
57 『善魔』 1951年 木下惠介(監督)
58 『白痴』 1951年 黒澤明(監督)
59 『恋文』 1953年 田中絹代(監督)
60 『こころ』 1955年 市川崑(監督)
61 『愛は降る星のかなたに』 1956年 斎藤武市(監督)
62 『挽歌』 1957年 五所平之助(監督)
63 『女であること』 1958年 川島雄三(監督)
64 『白い悪魔』 1958年 斎藤武市(監督)
65 『夜の鼓』 1958年 今井正(監督)
66 『ある落日』 1959年 大庭秀雄(監督)
67 『悪い奴ほどよく眠る』 1960年 黒澤明(監督)
68 『がめつい奴』 1960年 千葉泰樹(監督)
69 『武士道残酷物語』 1963年 今井正(監督)
70 『帰郷』 1964年 西河克己(監督)
71 『カモとねぎ』 1968年 谷口千吉(監督)
72 『狙撃』 1968年 堀川弘通(監督)
73 『剣と花』 1972年 舛田利雄(監督)

 

本年、生誕110年を迎えた森雅之は、1911年1月13日北海道にて、作家有島武郎の長男(本名は有島行光)として生まれました。戦前は劇団築地小劇場、劇団テアトルコメディ、そして文学座で新劇俳優として舞台に立ち、文学座在籍時の1942年に東宝映画の『母の地図』に出演して原節子の恋人役を勤め、これが映画デビューとなりました。そして戦後、『安城家の舞踏会』(1947年吉村公三郎監督)で、没落貴族のニヒルな長男を演じて注目され、舞台で培った演技力とインテリジェンスを感じさせるその魅力で、昭和期の映画の黄金時代にスターとして活躍します。多くの名監督の作品に主演、助演問わず出演し、特に黒澤明『羅生門』、成瀬巳喜男『浮雲』、溝口健二『雨月物語』(京マチ子作品リスト76番)などの作品が代表作として上げられます。

 

今回のリストでは、『安城家の舞踏会』以降の出演作から当館が所蔵する台本を選定しています。その幅広い演技力で、二枚目から軽妙な喜劇、印象的な悪役、そして実年齢よりもはるかに老けた役も得意としており、実にさまざまな役を演じていることがわかります。

 

『安城家の舞踏会』に続く吉村公三郎監督作品となる『わが生涯のかゞやける日』では、戦時中に自分が殺した政治家の娘と知らず知らずのうちに恋仲になり苦しむ元青年将校の役を感情豊かに演じ、黒澤明監督作品の『白痴』では、戦争により精神を患いながらもその純粋で善良な性格が人々をひきつける男に扮して熱演を見せました。また当時ベストセラーとなった原田康子原作の同名小説の映画化『挽歌』では、戦後派の若い女性に誘惑される既婚の中年男性を演じ、成熟した大人の魅力を見せています。

 

一方で喜劇作品にも多く出演しており、木下惠介監督作品で阪東妻三郎扮する頑固親父の長男役を演じたホーム・ドラマの『破れ太鼓』、雑誌記者同志の恋愛を描いた都会のコメディ『東京のヒロイン』、田中絹代と淡島千景演じる2人の人妻を惑わす画家役の『奥様に御用心』などでは上品でユーモア溢れた演技を見せ、『カモとねぎ』では詐欺師三人組の「貴族詐欺師」と呼ばれるリーダー役を飄々と演じています。

また、有名な文学作品を原作とした映画にも出演しており、夏目漱石の名作『こころ』では孤独な「先生」役を演じ、そして父の有島武郎原作の『或る女』(京マチ子作品リスト78番)では、京マチ子演じる主人公をその男性的な魅力で虜にする商船の事務長役を野性味たっぷりに演じています。溝口健二監督作品で第13回ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞を受賞した『雨月物語』も京マチ子との共演作品のため、京マチ子の作品リストの方に載せております。

 

悪役や一癖ある役では、黒澤明監督の『悪い奴ほどよく眠る』で、長年にわたり談合汚職を続ける土地開発公団の副総裁役で冷酷な表情を見せ、今井正監督の『武士道残酷物語』では、戦国から現代まで7つのエピソードが描かれる中江戸時代のパートに登場し、小姓役の中村錦之助(萬屋錦之介)をお手付きにする殿様役を残虐に演じています。『狙撃』では、主演の加山雄三の前に立ちはだかる最強の殺し屋役に扮し、強い印象を残しています。

遺作は松竹作品の『剣の花』で、主演の渡哲也の父親役を演じ、翌年の1973年に62歳で病のため惜しまれつつ逝去しました。

 

生誕110年を経た現在も、本年春には神保町シアターで特集上映が組まれるなど、今なお根強い人気の映画スター森雅之の、その出演作品の台本カバーにお名前をご記載してみませんか？

 

現在、作品のご希望を伺っていない方もプロジェクトが成立しましたら、順番にお伺いの連絡をいたしますので、それまでごゆっくりお選びくださいませ。
作品リストは、プロジェクト概要「リターンについて」の台本カバーの説明から、または↓こちらからもご覧いただけます。

 

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次回は、京マチ子出演作品のリストをご紹介いたします。