ガザでの羊の育て方～女性たちの羊小屋での日々～

こんにちは。タグリードです。このクラウドファンディングも残り3日間となりました！今日は、改めて、女性たちの羊を育てる日々の様子についてお伝えします。

 

 

パレスチナでは、多くの家庭が畜産に携わっています。パレスチナの農業関連の国内総生産（GDP）のうち、家畜生産が4割を占めており、とても大事な産業です。教育費や結婚資金など、どうしても現金が必要な時には、家畜はお金に換えられますし、糞は農作物の肥料になります。家畜として多いのは牛、羊、ヤギで、他にも養蜂や魚の養殖をしている人もいます。

 

家畜として何を飼うかは重要な決断です。ガザで一般的に育てられているのは、アサーフ種の羊です。育てやすく、牛に比べて飼料（エサ）が少なくて済みます。統計局のデータによると、ガザ地区の牛の頭数は約8,000頭、一方で羊は約60,000頭と、羊がいかに多いかがわかります。ガザで羊を育てている人は大勢いるのです。羊は、肉、毛（ウール）、ミルクと、3つの収入源になります。羊は、宗教的な行事、例えばイード・アル＝アドハー（犠牲祭※）や結婚式で使用され、出産のお祝いのときに食べられることもあります。パレスチナ人がよく食べる羊産品は、ミルク、ラバネ（水切りヨーグルト）、ヨーグルト、そしてジャミードやキシュク等の固形ヨーグルトです。

 

 

私たちのプロジェクトでは、女性たちは、羊小屋に入ると、まずは換気のためにカーテンを開け、全ての羊の目を見て、健康状態を確認します。そして搾乳をし、仔羊に授乳し、糞を取り除き、水飲み場を掃除し、小屋全体も掃除し、朝食として飼料（エサ）を与えます。治療が必要な羊がいたら投薬も行います。その後、羊たちを2時間、外に連れ出し、搾乳器の掃除をします。午後には、飼料（エサ）となる大麦を生産している水耕栽培ユニットで大麦の苗を補充し、仔羊にまた授乳します。夕方には、水飲み場の水が十分か確認し、搾乳をし、また羊たちに飼料（エサ）を与えます。これを毎日行っているのです！

 

羊の育て方には2つあります。大規模な羊小屋で、集約的に行う方法と、家庭で小規模に、半集約的に行う方法です。集約的な生産方法では、家畜をずっと小屋の中で育て、小屋の中でのみ飼料（エサ）や飲み水を与えます。一方で、半集約的な生産システムでは、羊たちを小屋の外に連れ出して、小屋の中で与えている飼料に加えて、小屋の外に生えている牧草も食べさせます。

 

 

適切な生産記録なしには、羊の生産性を高めることはできません。全ての羊の耳に、識別するための番号タグをつけており、女性たちは、羊1頭1頭の細かい記録を付けています。生年月日、ワクチン接種記録、交配日、授乳記録、離乳した日、治療記録、等々。これは羊小屋の管理の重要な部分です。さらに、売り上げと支出の記録も付けています。これらの記録の付け方については、研修を通して女性たちに学んでもらいました。

 

羊たちの健康管理は、羊の飼育で最も大事なことの一つです。病気にならないよう、羊小屋を絶えず綺麗に保ち、病気の羊がいたら他の羊とは隔離して、器具は消毒してから使用し、新しい羊を群れに加える際には病気の有無を確認し、適切な時期に適切なワクチン接種を行い、そしてこれらの記録をつけ、伝染病が発生した場合には報告します。もし羊の搾乳量が不十分であったり、乳房炎になってしまったり、高齢であったり、繁殖に問題があったりする場合には、その羊を手放すという決断もしなければなりません。

 

 

しっかりとした栄養計画を立てて羊たちに飼料（エサ）を与えることも大事です。妊娠している羊は1日に1kgの飼料と1kgの牧草を食べます。仔羊には、成長のために絶えず飼料を与える必要があります（1日当たり1kg未満）。

 

ガザでは、羊を育てるにあたりいくつもの課題があります。治療薬やワクチンはイスラエルから輸入されて販売されますが、その価格はとても高いのです。しかも流通は不定期で、十分な在庫もありません。農業省が無料で提供している口蹄疫やブルセラ病のようなワクチン以外の費用は全て、生産者が支払わなければなりません。いくつもの困難がありながらも、ガザの家畜生産者たちは何とか生き残るために戦い続けているのです！

 

※イード・アル＝アドハーの様子について、2015年にタグリードが書いた記事