抗ウイルス剤は何をしている？

そもそも抗ウイルス剤はウイルスや細胞に何をしているのか？そこが問題ですよね。ウイルスDNAやRNAなどの自分の設計図と、とりあえず必要なタンパク質（弁当のようなもの）を殻の中に入れて私たちの細胞に入り込み、乗っ取ることで自分の設計図を使って新たなウイルスを細胞に作らせます。

なので、ウイルスが細胞に侵入できなくするもの、細胞内の移動を防ぐもの、自分の設計図を複製したり、それをもとに新しいウイルスを作ったりするのを防ぐ物質、また新たにできたウイルスの脱出を妨げる物質、これらのすべてに抗ウイルス作用が期待できます。でも、ウイルスが細胞を乗っ取った後に使うのは細胞が生きてゆくための「仕組み」なのです。それを阻害する物質は細胞をも殺してしまいますよね。

ワクチンはウイルスが細胞に入るのを防ぐので、細胞に直接悪影響を与えません。でも細胞の中で機能する薬は多かれ少なかれ細胞に影響を与えると考えたほうがいいです。ウイルスを阻害するか細胞に悪影響を与えるかの狭間で薬は効いているのです。

私たちはまず、抽出物が実際にウイルスの作用を抑えるか、という現象を観察するところから入ります。ウイルスの作用（細胞障害）を抑えている抽出物にはこの経路のどこかを抑制している可能性があるからです。

新しい化合物はこれまでに知られていなかった新しい経路や作用点を教えてくれる可能性があります。新しい化合物の宝庫といわれる海洋生物を探るのはそのためです。