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大腸がんで毎年約5万人が命を落とす理由

 

なぜ、日本では􏰀ここまで大腸がんが多いの􏰁か−−。

大腸内視鏡専門医でがん予防􏰁第一人者である、石川秀樹先生におききしました。

 

 

 

そもそも「大腸がん」ってなぜこんなに多いんですか?

 

石川秀樹(以下、石川) いま「大腸がん」􏰀はがん􏰁の第1位になりました。と􏰀はいえ、年齢別にデータを補正してみると、1998年を境に大腸がんで亡くなる人自体は􏰀減っています。しかし日本全体で高齢者􏰁割合が増えてきているため、実際􏰁患者さん􏰀は増えているの􏰁が現状です。

 

(図1)

堀江貴文(以下、堀江) この間、ぼくの祖父が、96歳で亡くなったんです。うちは長寿家系で。祖父は何年か前に大腸がんにかかっていて、さらにその十数年前には膀胱がんも患っていました。大腸がんについては、定期検診で便潜血検査が「陽性」だったにもかかわらず、どうやらずっと放置していたらしいんです。すぐに治療をすればよかったのに、と思います。

 

石川 それは残念ですね。大腸がん検診が、国の施策として推奨されはじめたのが、1994年ごろ。当時からまずは「便潜血検査」が主流でした。便潜血検査というのは、あらかじめ便を採取して持参(あるいは郵送など)してもらい、検査をして、便のなかに血液が含まれているかどうかを調べる方法です。

 

 

堀江 この「プ」プロジェクトのリターンとしても、便潜血検査の郵送キットをおすすめしています。便潜血検査のうち、より精度が高いといわれている免疫法による検査を採用しています。

 

石川 この便潜血検査が陽性であれば、次に「大腸内視鏡検査」をすることが望ましいですね。便に血液が含まれているということは、大腸に「前がん病変(がんになる原因)」の「ポリープ」※や早期大腸がんが見つかる可能性が高いのです。

 

※ここで石川先生がいう「ポリープ」とは「腺腫」のこと。腺腫とは粘膜から発生する腫瘍で、一般に良性です。しかし、大腸がんはこの腺腫から発生することが多く、腺腫は「前がん病変」といわれています。

 

堀江 うちの祖父の場合、便潜血検査が陽性と分かった段階で内視鏡検査を受けていれば、ポリープやがんが見つかったとしても、おそらく取れていたでしょうね。そうすれば、後々体への負担も少なくて済んだのではないかと思います。

 

石川 そうですね。陽性ならば、かならず内視鏡で詳しい検査をしたほうが安心です。一般に、50歳ぐらいになったら一度は「大腸内視鏡検査」を受けたほうがいいですね。もしもその時点でがんやポリープが見つからなければ、その後、10年ほどは大腸がんになる可能性が低いといわれています。ポリープや前がん病変、がんが見つかった場合も、早めに治療をすることが大切です。

 

堀江 じゃあ、ぼくはこの間の検査でポリープが見つからなかったから、しばらくは大丈夫ってことですね。

 

 

 

“勝ち目􏰁のある”大腸がん􏰀は劇的に減らせる􏰀ず

 

石川 ええ。ところで、今日はぜひ、声を大にしてお伝えしたいのですが、じつは「大腸がん検診」は、他のがん検診と意味合いが違うんですよ

 

堀江 どういうことですか?

 

石川 順を追って説明しますと、がん予防対策には、「一次予防」と「二次予防」という段階があるのです。

「一次予防」とは、がんにならないようにすること。たとえば禁煙する、アルコールを控える、運動をする、というようにがんができないような対策をとることです。

そして、「二次予防」とは、がんで死なないようにすること。検診を受けて、早期発見・早期治療をすることです。たいていのがん検診は、この「二次予防」の範疇になります。“早期がんを見つける検診”なんです。

 

(図2)

 

堀江 胃がんにならないようにピロリ菌を除菌するとか、肝臓がんのリスクを避けるために肝炎のワクチンを接種するといったことは「一次予防」にあたるわけですね。

 

石川 そうです。しかし、大腸がんの場合は、検診で一次予防ができるのです。たとえば便潜血検査によって陽性の診断が出たら、ただちに内視鏡検査をおこなう。がんが見つかったら早速治療をしなければなりませんが、がんではなくポリープが見つかった場合、ここで除去しておけば、そのポリープから発生するがんを予防できます。大腸がん検診は、がんになる人自体を減らすことができる。専門家からすれば、予防しやすい“勝ち目のある”がんなのです。

 

堀江  がんを見つけるのはもちろん、がんになる人を減らせる検査なんですね

 

石川 そうなのです。アメリカでは、国の制度で50歳を過ぎたら誰でも1回は大腸内視鏡検査を無料で受けられるようになっています。この政策のおかげで米国は大腸がん患者がすごく減りました。50歳以上の大腸がんの罹患率が2000年以降、約32%減少しており、大腸がんによる死亡数も約34%減少しています。

 

堀江 日本では、いまどれくらいの人が大腸がん検診を受けているんですかね。

 

 

石川 私が診ている大阪府では受診率が非常に低くて、40歳以上の2割から3割ぐらいと聞きますし、全国レベルでも受診率は4割いくかいかないかぐらいです

 

堀江 半分以上も受けてないんですか。

 

石川 はい。さらに問題なのは、便潜血検査で陽性が出たのに、内視鏡検査を受けないまま放置する人が多いことです。

 

堀江 ぼく、前から不思議だと思っているんですけど、大腸がんになるのが怖いからって、サプリメントや食物繊維を摂るくせに内視鏡検査には行こうとしない人が意外といるんですよね。

 

石川 やはり、検査は痛くて苦しいのじゃないか、何か恥ずかしい思いをするのではないかというイメージがあるから億劫に感じる人がまだまだ多いのではないでしょうか。昔に比べて検査は格段に楽になりましたし、ぼくのクリニックではレディースデイといって女性だけに限定した検診日を設けるなど、プライバシー上の配慮もしていますよ。

 

 

検査􏰀は痛みナシ、下剤もまずくない、眠っている間に終わる方法も

 

堀江 ぼくもついこの間、大腸内視鏡検査を受けましたけど全然痛くなかった。

 

石川 いまは本当に医師の技術やカメラの性能がよくなりましたからね。

 

堀江 ただ、嫌だったのは……

 

石川 下剤でしょ?

 

堀江 そうです。あれがもう少し改良されたら、毎年受けてもいいと思いました(笑)。

 

石川 下剤も昔と比べたら格段によくなっていますね。昔は4リットルも飲まなければならなかったのが、2リットルになり、最近は1リットル飲めばよい薬もできました。少し前に発売になった「ピコプレップ(経口腸管洗浄剤)」なら、コップ2杯分の薬と水で大腸内がキレイにできるのですよ。味も良くなっています。

 

堀江 先日ぼくが飲んだのは、スポーツドリンクテイストのものでしたね。

 

石川 ほかにもレモン味とか、ライム味とか、いろいろありますよ。

 

堀江 そういえば検査の前には注射を受けました。

 

石川 腸の動きを止める注射ですね。

 

堀江 そうそう。

 

石川 この注射だけでも検査は問題なくおこなえるのですが、内視鏡が大腸の曲がり角を越えるときに多少突っ張る感じがするので、それが嫌だとか、いざポリープが見つかって、医師が“切ります”と言うと緊張してしまう人もいます。その場合は、鎮静剤を注射して眠ってもらうこともできます。鎮静剤は全身麻酔のように強くはなく、注射で体内に入れる睡眠薬のようなものです。

 

堀江 たしか、ポリープを切除するときも痛みはないんですよね。

 

石川 ええ、痛くも何ともありません。でも画面でポリープを取っている動画を見てしまうと緊張するのは確かなので、ご希望の患者さんは鎮静剤で眠ってもらって、寝ている間に検査・治療を終えることもできます。

 

堀江 目が覚めたら全部終わっていると。

 

 

大腸がん死亡者が多い県􏰀、青森・秋田・島根だった・・・

 

石川 最近、統計データを調べたら、大腸がんで亡くなる人が日本一多い県は青森だったんです。二番目は秋田で、三番目は島根。逆に、少ない県は福井県、徳島県、宮崎県です。

 

堀江 なぜ青森、秋田なんですかね、どんな相関関係があるんでしょう?

 

石川 じつは、県の50歳以上の人口あたりの内視鏡専門医の数と逆相関関係があると見られているんですよ。つまり、内視鏡専門医の多い地域は、大腸がん罹患率が少ない。内視鏡専門医が多ければ、検診でポリープや早期がんを見つけられる機会が増える。よって、がんになる前に発見・治療できる確率が高くなり、大腸がんで命を落とす人も少なくなるのではないかと考えられます。

 

堀江 なるほど。

 

(図3)

 

石川 ですが、これはあくまでも状況証拠であって、まだ仮説にすぎません。さらに正確に調べるため、現在、比較的人口の移動が少ない大島や新島で、住民の方全員に内視鏡検診を受けていただいてデータをとろうというプロジェクトを国立がん研究センターの松田尚久先生方が進めています。新島ではもう住民の半分近くの方が受診を終えています。結果が出るまでにまだ少し時間はかかりますが、おそらく予想通りの結果(大島や新島で大腸がんになる人、大腸がんで死亡する人が激減する)になることを期待しています。

 

 

ポリープ􏰀は保険適用、1個取るの􏰁も100個も値段􏰀はおなじ

 

堀江 実際、便潜血検査で陽性になったとして、大腸内視鏡検査を受けようと思ったら、どれくらい費用がかかるんでしょうか。便潜血検査だけなら数千円程度で、自治体によっては無料で受けられますよね。

 

石川 大腸内視鏡検査は、ポリープが見つかった瞬間に保険診療に切り替えられますから、3割負担で済みます。保険がきかない場合だと、切除するには5万円以上かかるのですが、保険診療ならだいぶ安くなりますからポリープの状況などにもよりますが1~3万円程度になります。

 

堀江 ポリープを1個切除するのに、実際は5万円もかかっているわけですか?

 

石川 ええ。制度上は、1個でも100個でも400個取ったとしても5万円(笑)

 

堀江 それは、医師にしてみれば、やればやるほどキツイ。

 

石川 たくさんのポリープがある患者さんの場合は時間もかかりますので、ある意味、ボランティアのようになってしまいます。これでは現場の医師の負担があまりに大きすぎますし、予防のために内視鏡検査を積極的にやろうという医師も増えていきません。だから、ぼくは「50個以上の切除は追加料金を加算してほしい」と厚労省に進言したいと思っているのですよ。 

 

 


※図版出典:図1〜3はすべて、石川秀樹先生にご許諾をいただき転載したものです。
(図1)「国立がんセンター・がん対策情報センター」ウェブサイトより2009年12月18日にダウンロードしたデータをもとに集計、図示したもの。
(図2)「なぜ大腸癌は増えたのか、予防は可能なのか」(平成29年2月22日講演資料)より転載。
(図3)「日本消化器内視鏡学会」のウェブサイトに掲載されている都道府県別学会専門医人数を参照、内視鏡専門医数は2009年12月18日時点で集計したもの。

 

*プロフィール

石川秀樹 (Hideki Ishikawa)

京都府立医科大学分子標的癌予防医学特任教授、医学博士。

1960年生まれ。兵庫医科大学卒業後、大阪府立成人病センター、兵庫医科大学消化器内科、健康保険組合連合会大阪中央病院などを経て現職。

2007年~2009年、内視鏡で摘除できた大腸腺腫・早期大腸癌の患者311人を対象に、低用量アスピリン腸溶錠を投与するプラセボ対症二重盲検ランダム化比較試験「J-CAPP」主宰。現在、大腸腺腫・早期大腸癌の患者7000人を対象に、遺伝子多型や食習慣、アスピリンによる予防効果を調査する「J-CAPP2」を主宰中。

 

堀江貴文(Takafumi Horie)

実業家。SNS media&consulting株式会社ファウンダー。株式会社ライブドア元代表取締役CEO。

1972年、福岡県生まれ。現在は自身が手掛けるロケットエンジン開発を中心に、スマホアプリ「TERIYAKI」「755」「マンガ新聞」のプロデュースを手掛けるなど幅広い活躍をみせる。 自身のwebメディア ホリエモンドットコム でも予防医療の重要性を呼びかける。一般社団法人予防医療普及協会理事。予防医療に関する書籍に『むだ死にしない技術』(予防医療普及協会との共著)、近著に『すべての教育は「洗脳」である』『好きなことだけで生きていく。』などがある。

 

 

 

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