乱歩と名張を繋ぐもの②

▲選挙応援演説の会場になった宇流冨志禰（ウルフシネ）神社

昭和27年９月２７日、江戸川乱歩は総選挙の選挙応援で名張に初めて里帰りを果たしました。江戸川乱歩がやってくると聞いて、この神社の境内がいっぱいになって溢れるほどの人が押し寄せました。

その中にいた、岡村書店店主と清風亭女将が、乱歩先生のもとに駆け寄って、先生の生まれた家を知っているから案内すると言いました。

そのあとに冨森自転車屋が来て、近所に先生が生まれた時のことをよく知っているお婆さんがいるから会わせる。といった提案がなされ、江戸川乱歩は翌日、ふるさとを発見したのでした。

乱歩と名張の時間が再び動きだしたのはこの時からかもしれません。

この時、岡村繁次郎らは乱歩先生が生まれた場所に生誕の碑を建てましょうと約束したのです。

そして人々の努力が実り、３年後の昭和３０年１１月３日に乱歩先生夫妻をお迎えして生誕地碑除幕式が行われました。

▼辻せきの日記　昭和３０年１１月３日

除幕式の後、辻酒店を訪れた乱歩先生ご一行は３年前に会って話を聞いたお婆さん、辻せきと楽しくひと時を過ごしたのでした。

後に『宝石』に寄せた随筆「生誕碑除幕式」の結びに

「市の企画とか、個人の金持の企画とかいうのではなく、町の人々が、自発的に六十年もごぶさたしていた私に対して、こういう好意を見せて下さったのは、実にありがたいことだと思っている。」

と書かれています。

物理的にほぼ無縁の乱歩と名張を繋げてきたのは人と人の心だったのです。

今回のクラウドファンディングには日本全国からたくさんの応援・ご支援をいただいています。

日本中の皆様から愛される乱歩先生は今なお「乱歩と名張」を強く繋げてくれている気がしてなりません。

引き続きのご支援よろしくお願いします。