情報提供：成人先天性心疾患とは？ (CF39日目)

先天性心疾患は、生まれつき心臓や大血管に構造的な異常がある病気です。これまで、重症の先天性心疾患を持つ患者さんの多くは小児期に亡くなることが多かったのですが、医療技術の進歩により、現在では多くの患者さんが成人期を迎え、結婚や就職など通常の生活を送ることができるようになっています。しかし、成人期を迎えた後も、特有の課題が新たに生じることがあります。

たとえば、手術やカテーテル治療を受けたとしても、心臓や血管の構造が完全に正常に戻るわけではないため、遺残症（手術後も残る異常）や合併症のリスクがあります。

具体的には、不整脈、心不全、心臓弁膜症などが挙げられます。また、成人になることで生活習慣病（高血圧、糖尿病、脂質異常症など）のリスクが高まり、これが心臓に追加の負担をかける可能性もあります。

さらに、成人期の先天性心疾患患者（ACHD）には、以下のような課題があります。

1. フォローアップの必要性：
   　成人期になると、小児期から通院していた医療機関を離れ、成人診療科に移行する必要がありますが、この移行がスムーズに行われないと、定期的なフォローアップが途絶えてしまうことがあります。これは、合併症の早期発見や予防に支障をきたす可能性があり、注意が必要です。

2. 心理的・社会的な課題：
   　先天性心疾患を持つ成人は、健康問題だけでなく、経済的・社会的な問題にも直面することがあります。また、妊娠・出産においても、母体や胎児へのリスクがあるため、専門医による管理が必要です。

3. 妊娠・出産の課題：
   　女性のACHD患者では、妊娠や出産が特に注意を要するイベントとなります。妊娠中は心臓に負担がかかり、血流量が増えるため、不整脈や心不全が悪化するリスクがあります。そのため、妊娠を希望する際は、循環器専門医と産婦人科医が連携した慎重な管理が求められます。

成人先天性心疾患の患者さんには、専門医による継続的な診療が欠かせません。現在、日本でも成人先天性心疾患センターが各地に設立され、専門チームが包括的な医療を提供しています。これにより、患者さんが安心して生活できるよう、診療体制が整いつつあります。

島根大学は日本成人先天性心疾患学会の専門医 を養成する連携修練施設として認定されています〈2024年11月時点（図）〉。成人先天性心疾患を専門とする医師の育成にも取り組んでいます。 今後はより複雑で重症な成人先天性心疾患患者さん が増えることも予想されます。先天性心疾患の特性 を理解しながら、成人特有の病気の治療もできる専 門医を育成していくことを計画しています。

青：連携修練施設

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参考：

• 日本循環器学会「成人先天性心疾患診療ガイドライン（2017年改訂版）」​
• 日本成人先天性心疾患学会​