被災地の声に応える！インドネシアの災害で失った学校再建に力を

★学校が再建される村ってどんなところ？★
 

　今回のプロジェクトで学校を再建するのは、震源地から150kmも離れた
広大な被災地の中でもひとつの小さな村です。
【インドネシア中央スラウェシ州シギ県クラウィ群ナモ村サポ地区】　
　2018年9月28日に発生した地震は、津波や広範囲液状化を引き起こした大規模な複合災害でした。加えて震源地から遠く離れたこの土地では、地震後の雨などの影響もあり大規模な土砂災害によりインフラが寸断し約3週間ほど孤立してしました。

　2018年11月6日ごろ「山道が開通したらしい」というニュースを聞き、緊急救援活動中にアプローチを試みた事があります。しかし、開通した山道は私の想像をはるかに超えた険しさでした。断崖絶壁の中の細いぬかるんだ道は複数のわだちによりタイヤが飲み込まれ、とても安全に到達できる事など保証できる状態ではなかったため、断念せざるをえありませんでした。

 

（災害直後のナモ村へ続く山道）
※写真出典：http://​ In hills of Sulawesi Indonesia quake survivors chafe at aid rules ​）

（被災直後のナム村サポ地区）

 

　村の家屋はほとんど半全壊し、人々は身を寄せ合って生活していたようです。
残った資材を集めて屋根を貼り、その中に30名ほどで夜を過ごし、
変わり果てた村をどうしていいか途方に暮れていたといいます。
そのような中、

災害直後に徒歩でこの村に到達した今回のチーフコーディネーターであるイスムさんを始めとするチームの皆さんの励ましにより、

人々は自分の村で手に入れられる木材や茅葺屋根を使用した仮設住宅の建設を始めます。インフラが不安定なため、支援の手が届かない中でもイスムさんと一緒にまずは自分たちの家を確保する事から頑張りました。

 

　村は4つの地区に分かれています。

地区Ⅰ/Ⅱ：ラオナ地区、地区Ⅲ：サポ地区、地区Ⅳ：サダウンタ地区

災害前に学校があったのはこのサポ地区。

人口483名のこの小さな村。
 

　約90世帯の仮設住宅必要数は、様々なエイド団体により建設が完了しました。「眠るところがある、家族みんなで安心していられる場所がある、という事がこんなに大切な事とは思いませんでした。これだけでも、元の生活に戻ろうという元気が出て来ました」と仰っていました。

 

（仮設住宅建設中に遊ぶナモ村の子供）

　ナモ村は、山岳地域の小さな村。
ここに到達する経路は、首都ジャカルタにあるスカルノハッタ国際空港から

パル空港行の国内線に乗ります。

フライト時間は約3時間、直行便もありますし乗継便もあります。

 

（飛行機から見るパル湾）

 

　パル空港に到着したら車でナモ村を目指しますが、

頑張っても3時間、山道が混んでいたり危険な状態であれば

それ以上かかります。
被災地では、この陸路の足（車両）を調達するのが困難です。
ドライバーさん付きで車両を借りてこの村で活動をする場合、

100ドル/日が平均です。ガソリンはもちろん含まれません。

 

　ちなみに、インドネシアは東西に非常に長い国。

スラウェシ島はインドネシア東部時間が使われているので、

ジャカルタより1時間遅くなります。

 

　昼はもちろん下界と同じ暑さですが、

夜から朝にかけては気温が下がり、穏やかな風が吹き、

夜には満点の星が輝くとても美しい村です。

 

　主な産業は農業。

カカオやマンゴが特産で、ナム村特有のコーヒーも名産です。

（コーヒーは主に中央スラウェシ州で消費しているようです）

伝統家屋向けの木材や茅葺屋根も出荷していますが、

災害前での需要はそれほど多くなかったようです。

 

（乾燥させたカカオの実を袋に詰めるお母さん）

　村の子供たちは6km離れた村にある教育省管轄の学校に、午前中は通います。この学校は昼過ぎで終わるので、

インドネシアの多くの地では午後はマドゥラサという宗教省が管轄する学校で宗教と一般教養を勉強します。

今回はこのナモ村サポ地区に建てられていたマドゥラサを再建します。
 

（地震により全壊した校舎※写真中央付近）

（被災後に村人が整備した学校建設予定地）
 

　学校再建には、コミッティのメンバーと村長さんが話し合ったと聞きました。コミッティメンバーのエルウィンさんは一番若い先生ですが、

村の皆さんから頼られる存在です。

コミッティで積み立てたお金を復興に使う・・という類のお話はインドネシアではあまり聞きませんので、私はとてもびっくりしました。

　
（背中を向けているのがエルウィンさん、横にいるのは大工の棟梁さん）

 

　村にはたった一人の助産師のディアさんがいて、村の健康管理を任されています。彼女はパル市で働く旦那さんと離れて生活していますので、

地震直後は2歳になる娘さんと2人で心細い気持ちで過ごしていたそうです。

しかし、村の人たちはディアさんを守ろうと近隣で仮設住宅の建設を手伝いました。ディアさんは、お産を自宅で受け入れることが多いのですが、

今は仮設住宅が出来たので、いつ来るか分からない産婦さんを自宅で待つことが出来るようになった、と仰っています。

 

（ディアさんと娘さん）

　ディアさんは言いました。
「仮設住宅を作ってもらっただけでもありがたいです。安心して生活できていた災害前のように暮らせています。
災害の時は、本当に怖い思いをし、余震が止まなかったのでパニック状態が続き、トラウマに悩まされました。でも、今では悪夢を見ることも少なくなり

こうして娘と安心してご飯を食べ、仕事が出来、近所のみんなと過ごすことが出来ます。

　・・もう一度・・

村の子供たちが学校に通う午後に村中に響いていた、勉強や遊びに夢中な子供たちの声が聞こえる毎日が取り戻せたら・・本当の意味で復興したという実感が湧くような気がします」