新潟の兄弟の夢のカフェ。自然災害を受け入れ、新たな展開へ！

３回目は、西蒲区。旧巻町の商店街にある「鯛車焼一成」さんをご紹介させて頂きます。

 

巻で若い人が個人で開業する先駆的なお店。鯛焼きが美味しいのはもちろん、店内も店主も男前で、その人柄で小さい子からお年寄りまでたくさんの地元の人に愛されているお店です。

ガタイのいいお兄さんが鯛焼きを食べる光景。

お客様がお土産を一成さんに買ってきてプレゼントする光景。

個人店ならではの魅力的な光景が、「鯛車」とともに巻のシンボルになっています。

私もこの店の鯛焼きの皮がとても好きです。

先日も鯛車焼を買って帰ると同じものが家に。。。誰やっ！！（本当です）

鯛車焼を食べた翌日、手土産で同じものを。。。連日！！（本当です）

こんな事もおそらく巻の光景ではないでしょうか？？

Taibow!の開業当初から、たくさんのお客様にご紹介頂き、応援して頂いております。また、Taibow！だけでなく、「あべ農園」など、地元の若い人のチャレンジを応援してくれる兄貴的な存在でもあります。鯛車焼一成さんのSNSでは、地元の方との関わりがたくさん出てきます。卒業、就職、出産など、一成さんに報告しに会いに来る。そんなSNSを見て遠くの県外からご来店するお客様もいらっしゃいます。本当に地元の人に愛されるお店なんだと、羨ましいく思います。Taibow！は２年目に入りましたが、「鯛車焼一成」さんのように、地元の人に愛されるお店になれるよう頑張りたいと思います！！

以下、一成さんへのインタビューです！

 

 

「鯛車焼一成」開業までの話

高校卒業後、新潟市内の建設会社に就職。

新潟市内、長岡などを転々とし、埼玉への転勤が決まりました。そこで数か月の県外での生活が続いた頃、中越大震災が発生し、ライフライン復旧のため長岡の営業所に戻ってきました。

復旧工事の仕事で忙しい中、父親が体を壊し入院することになりました。病院での検査の結果は末期の胃癌。医者からは余命半年を宣告されました。突然の事で、父親本人も私も信じられませんでした。当時、父は５０代で癌の進行が早く、そのままあっというまに他界。私の両親は、現在私が営業する「鯛車焼一成」の隣りで２０年以上続く喫茶店を営業しておりました。地元の方にご利用頂いていた喫茶店ですが、父が他界したことにより、母ひとりでのお店の営業が立ちゆかず、自分が仕事を辞めて店を継ぐ決心をしました。お店のお客様は、地元の方が多く、営業する中で商工会や旧巻役場の職員、商店街で働く方々と話す機会も多くありました。地元で生活し、働くようになり、また、地元のお客様とお付き合いする中で、巻が自分の小さい頃、商店も人も多く賑わっていた頃とは違い、閉店したお店も増え、どことなく寂しい街になっていた事に気づかされました。

 

「鯛車焼をはじめるきっかけ」

両親が切り盛りしていた喫茶店を、母と2人でする様になり、巻の現状を徐々に認識していく日々でした。そんな中、母、友人と、店の常連のお客様との飲み会の席での何気ない一言が転機になりました。その常連のお客様は、「鯛車復活プロジェクト」のイベントや巻いろいろなイベントを数多く手がけていた方で、「鯛車らっけ、鯛焼きでもあればねー。鯛車焼とか誰かやればいーねっか。」お酒も入り、バリバリの新潟弁での軽いひと言でした。しかし、何かピンとくるものがあり、構想を練るようになりました。構想ができてからは話が早く進み、常連のお客様の中に、厨房機器を販売する方がおり、その方のお知り合いの鯛焼きに詳しい方をご紹介して頂く事ができました。また、「鯛車」復活プロジェクトの方を通じて、鯛車焼の型の作製に協力をして頂き、両親の喫茶店の隣の空き家がたまたま築100年以上の蔵で、大家さんに相談するとお借りする事ができました。築100年の蔵をお店にするための修繕は、地元の大工さんに。話が出てから、様々な方の協力を得てどんどん実現に近づいてきましたが、資金面の問題もありました。事業をすると決意し、新潟に帰省したわけではなく、中越地震、父の他界により、家族のために喫茶店を継ぐ決心をしたため、事業資金を蓄えていたわけではありませんでした。そんな中、常連のお客さまの中に、会社経営者の方がおり、事情を聞きつけ、

「自分で借金をして頑張れ。保証人には俺がなるから。」と信じられないようなご支援を頂きました。

「鯛車を巻のシンボルとして復活させたい」

「巻が活気を取り戻すために何かしたい」

地元の皆さんと共通する想いを実現するために実際に動いてみる事で、本当に多くのご協力を得る事ができ、「鯛車焼一成」は開業する事ができました。ご協力頂いた方々との「縁」を通し、両親が営んできた喫茶店が地元の方々に愛されていたこと。地元の方々の、次の世代の挑戦を応援しようという愛を実感させて頂きました。

両親の喫茶店を継ぐ決意をした事を心から良かったと思います。

 

※「鯛車」は、江戸時代末期から巻地区に伝わる郷土玩具。祭りやお盆になると、子供たちが家の周りを引いて歩きました。ロウソクをともした時の幻想的な雰囲気が魅力です。

 

「鯛車焼きオープンからとこれから」

何気ない一言から始まった「鯛車焼」は2009年に巻でオープンする事ができました。

オープンしてからは一つ一つが本当に手探りでした。自分の身近な人に起業経験のある人もなく、今のようにスマホやSNSを利用した集客もまだまだ黎明期でした。日々の営業活動に加え、季節のメニュー開発、お店の告知、広報などのSNS活用。やりたい事、やらなければならない事はたくさんありましたが、忙しさを理由に手が追いつかない事もしばしばでした。また、鯛車焼が巻という土地で親しまれるお店になるために、営業スタイル自体も探り探りでした。

それでも、物珍しさもあり忙しかった１、２年目。

猛暑や大雪で、思うような営業ができなかった３、４年目。

開業から「焼きたて」にこだわり続けてやっと定着してきた５、６年目。

手探りでも進み続けた結果、おかげさまでお店はもうすぐ１０年になります。鯛焼きは１個100〜200円の商売です。そこから利益を出し、お客様に喜んで頂く。正直、想像以上に大変な商売でした（笑）でも、顔を見にきてくれる仲間や、通ってくださる常連さん。卒業や就職など、節目の報告にきてくれる地元の若い子たち。たくさんの方に支えられてここまでやってこれた事に本当に感謝です。喫茶店の常連さんや家族、仲間との何気ない会話。お店の場所にもこだわりがあった訳ではなく、たまたま駅通りにあったお隣の蔵。

人の「縁」が繋がり、2009年にオープンしてから約１０年。

オープン当時、小学生だった子が、その子供を連れて家族で会いにきてくれるようになりました。昔はギラギラした気持ちで、「なんかやってやるぜ！」なんて思っていましたが、ここで営業し、お客さの笑顔を見ていると、この場所でよかった。このまま地元の人のお店になりたいなと思うようにもなりました。

両親の喫茶店からの「縁」でできた鯛車焼。小さい子からお年寄りまで、これからも巻で当たり前にあるお店として、今度は自分が「縁」をつないでいけたらいいなと思います。