義経＝成吉思汗、同一人物説について（その１１）

『義経＝成吉思汗、同一人物説のロマンと真相を追って』について

（その１１）

＝＝　源義経の人間性、人物像について（続きの４）＝＝

【　平氏との戦い（一ノ谷、屋島、壇ノ浦）における義経の情報収集と積極果敢な戦術、勝利への戦略など、軍事の天才・源義経の片鱗　】

 

　続いて、『屋島の戦い』について、一の谷で敗れた平氏は四国の讃岐・屋島（現、高松市）に逃げました。約１年後の１１８５年旧２月１９日、平氏の本拠地であった屋島に義経が奇襲攻撃を掛けて勝利したという戦いであります。

「吾妻鏡」によると、２月１８日午前２時、義経は暴風雨の中、船頭等を弓で脅して、わずか５艘１５０騎で、摂津国・渡邊津を出航し、同日午前６時には四国・阿波勝浦（現、徳島県）に到着したとなっています。通常は３日の行程をわずか４時間で到達したと云うことですが、恐らく「吾妻鏡」の間違いで出発又は到着日を１日間違ったとの見方が有力です。

阿波勝浦（徳島）に上陸した義経は在地の武将等から情報収集を行い、屋島が手薄の状況にあると知り、徹夜で陸路、讃岐国（高松）を目指して進撃、翌１９日に屋島の対岸に到りました。　（当時の屋島は独立した島であった）

義経は大軍の襲来と見せるために民家に火を放ち、平氏軍を陸側から急襲しました。

海側からの攻撃に備えていた平氏はこの奇襲に混乱し、船に乗り海上に逃れました。やがて、源氏軍が意外にも少数と知った平氏軍は船を屋島の岸に寄せて激しい弓矢戦を仕掛けてきました。

この弓矢戦で家臣・佐藤継信は、平教経が義経を目掛けて射た矢を見て、その前に立ち塞がり、盾となり討死にしました。（尚、「吾妻鏡」によると、平教経は一の谷の戦いで死んでいる）　

義経ははらはらと涙を流し、千株松の根元に手厚く葬らせるとともに名馬「大夫黒」を布施として与えたと云われます。これを見た他の家臣たちは義経のためなら命など惜しくないと感激して泣いたそうです。

又、義経は追討の身となった後、平泉からの北行の途中、岩手県山田町の佐藤信政家を訪ね、継信の持仏であった熊野大権現の神像を渡し、感謝の言葉を送ったと云う。

 

屋島の戦いでは、夕刻の休戦時に「那須与一」が平氏の小舟の先に立てられた扇を馬上から長弓で射たという逸話が残っています。扇までの距離は４０間（約７０㍍）離れていたと云われます。

又、激しい合戦の最中、義経が海に落とした自分の弓を敵の攻撃の中で拾い上げて帰り、「こんな弱い弓を敵に拾われて、これが源氏の大将の弓かと笑われては末代までの恥だ」と語ったという「弓流し」の逸話もこの戦いでのことであります。

 

２２日には、梶原景時が率いる源氏の主力軍がようやく屋島に着きますが、平氏はこれ以上の戦いは無理と判断して屋島を去り、長門（山口県）へと逃れました。

「平家物語」によると梶原景時は、渡邊津から阿波へ出航するにあたり船の進退を自由にするために逆櫓を付けるよう提案したが、義経は「逆櫓を付ければ兵は退きたがり、不利になる」と反対する。景時は「進むのみを知って、退くことを知らぬは猪武者である」と言い放ち、義経は「初めから逃げ支度をして勝てるものか、私は猪武者で結構である」と言い返したという逸話も残っています。しかし、「吾妻鏡」ではこのころ景時は範頼軍と行動を共にして西国九州にいたとされています。

 

義経は屋島攻撃にあたり、１か月前から摂津の水軍「渡辺党」と熊野別当の「熊野水軍」そして河野道信の「伊予水軍」等と交渉し、味方に付けています。

事前の情報収集や体制づくりなどがあってこその勝利に向けた奇襲作戦であると思われます。

 

以上