日本刀の製法解明へ。日本刀を作り出す鋼の強さの評価研究にご支援を。

寄付総額

2,615,000

目標金額 2,000,000円

寄付者
113人
募集終了日
2022年4月28日

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プロジェクト本文

終了報告を読む

 

2023年12月5日より,2回目のクラウドファンディング「科学が紐解く、日本刀の強さの秘密:「曲がらず」の解明」を開始しました。終了は2024年2月2日の予定です。

 

皆様のご支援によって実施できた研究を発展させ,次のステップに進みました。情報の拡散やご支援へのお力添えを何卒よろしくお願い申し上げます。

 

2回目URL:https://readyfor.jp/projects/token2

 

 

ご支援方法のご案内は

こちら

 

平安時代末期に誕生し、現在では国、年齢、性別を問わず愛されている日本刀。 

 

1000年近い年月を経る過程で、古い世代の日本刀の製法は失われ、現在では完全に同じものを作ることはできないといわれています。

 

 この失われた製法を明らかにするため科学的な分析が行われており、多くの有益な知見が得られていますが、未だ製法の解明には至っていません。 

 

私は、これまでの研究を活かし、日本刀の素材となっている金属(鋼)の「強さ」を正確に調べることで、その製法を推定できるのでは、と考えています。 

 

この研究では、通常より極めて微小なサンプルを用いる必要がありますが、このサンプルの加工費用は高額となります。また、日本刀を分析するために精密切断機が必要となり、サンプルの加工や切断機の購入には多額の資金が必要となります。 

 

未だ明かされない日本刀の製法解明に、皆様のご支援をお願いいたします。

 

『新着情報』もご覧下さい。研究に関する詳細情報などを定期的に追加予定です◆

 

 

<<<日本刀の科学的研究に関するクラウドファンディングの紹介動画(詳細版:約22分)はこちら>>>

 

 

自己紹介

 

ページをご覧いただきありがとうございます。岐阜大学教育学部技術教育講座の中田隼矢と申します。岐阜大学にて、金属材料に関する研究室を運営しております。 

 

専門は金属の強さに注目した研究となり、岐阜大学に研究室を構えてからは、最新の研究に加え金属工芸などの日本の伝統的なものづくりに関する科学的研究にも取り組んでいます。その切っ掛けとなったのは、岐阜で古くから製作されている「日本刀」でした。

 

本プロジェクトについて,読売新聞さんの取材を受けている様子です。

 

本プロジェクトについて,読売新聞(岐阜掲載)・3月25日朝刊,朝日新聞(東海3県掲載)・4月4日夕刊に記事が掲載されました。

 

 

【4月24日追記】
佐野美術館理事長の渡邊妙子先生に,本研究を応援いただきました。詳細はこちらの新着情報から!

 

 

研究の立ち上げのきっかけ

 

1000年を生き続けた日本刀。

長い年月を経ることで、古い時代の製法は徐々に失われていきました。

 

日本刀は平安時代の終わり頃に誕生したとされ、現在では美術工芸品として国内外の幅広い世代に愛されています。

 

現在まで伝わる日本刀の製法は江戸時代頃のものとされており、科学的にも無駄のない洗練されたもので,手仕事によるものづくりの極みの一つだと思います。その一方で、古い世代の製法は徐々に忘れ去られ、美術工芸品として評価の高い平安から鎌倉時代に作刀された日本刀を完全に再現することはできないとされています。

 

日本刀は鉄を徹底的に鍛え上げることで作られており,この製法を科学的に理解するための中核となる分野は材料科学となります。既に100年あまり,材料科学に基づく日本刀の分析が続けられていますが,古い製法も含め未だわからないことが残されています。

 

日本刀の鍛錬の様子

 

 

日本刀の素材となる鋼の強さに注目しました。

 

日本刀に関する材料科学的研究は、1900年代初頭の東京帝国大学の冶金学者・俵国一博士によるものが礎となっています。

 

俵先生は、当時最先端だった光学顕微鏡を用いて日本刀の金属組織を詳細に調査しています。現在に至るまで、日本刀の材料科学的研究は金属組織の評価が主となっており,多くの有益な知見が蓄積されています。一方で、「日本刀の強さ、特に素材となる鋼(鉄に炭素が混ざったもの)の強さ」に注目した研究が非常に少ないことに気が付きました。

 

 

鋼を徹底的に鍛え上げることで美しさも兼ね備えていった日本刀

 

現在まで伝わる日本刀の製法において,特に重要となる工程は「折返し鍛錬」,「造り込み」,「焼入れ」となります。「折り返し鍛錬」によって日本刀の素材となる鋼を徹底的に鍛え上げ,粘り強い(=壊れにくい)鋼としています。「造り込み」によって,外側は硬質な鋼,内側は粘り強さを重視した鋼(もしくは鉄)とすることで,刃物としての切れ味と耐久性(曲がりにくく,折れにくい)の素地をつくり,「焼入れ」によってそれを仕上げます。

 

金属は硬くなるほど壊れやすくなりますが(お煎餅やガラスのような状態),これらの工程を組み合わせることによって,「折れず曲がらずよく切れる」という本来は両立できないはずの特性を実現しています。そして,日本刀に美術品としての価値を具備している刃文は焼入れ,地金は折り返し鍛錬によって生じます。日本刀の本来の用途は武器であり,武器としての性能を向上させるための特殊な製法によって美しさも兼ね備えることになった,世界的にも極めて特異な刀剣です。

 

日本刀の刃文。上側のやや白い部分が刃文となり,刃文の中でも様々な変化が生じています。Wikipedia Commons,https://commons.wikimedia.org/wiki/File:刀_銘_長曽祢興里入道乕徹,_Katana_Nagasone_Kotetsu.jpgより抜粋,2022/03/20閲覧

 

日本刀の地鉄。中心付近の木材の木目のような模様が地鉄の模様となります。Wikipedia,Japanese swordsmithing,https://en.wikipedia.org/wiki/Japanese_swordsmithingより,2022/03/20閲覧

 

しかし,日本刀が誕生した初期はこれらの製法はまだ未発達だったとされ,刀匠達の何世代にも渡る創意工夫の末,鋼の強さを最大限引き出すこれらの製法に至ったと考えられます。武用の日本刀と美術性を重視した日本刀の作刀方法の細部は必ずしも同一ではないと思われますが,基本となる製法は共有しています。したがって,材料科学に基づいて日本刀を分析するのならば,刀匠の手によって日本刀へと鍛え上げられた鋼の強さを調べることこそが,古の製法を理解する上で最も重要な手がかりの一つになるのではと考えています。

 

 

硬軟の鋼を組み合わせる造り込みの例。中央部のイラストが造り込みの模式図となり,白が硬い鋼,黄色がやや硬い鋼,赤が柔らかい鋼となります。(Wikipedia,Japanese swordsmithing,https://en.wikipedia.org/wiki/Japanese_swordsmithingより一部改変して抜粋,2022/03/20閲覧)

 

実体顕微鏡で観察した日本刀断面。薬品で表面を処理しており,中心部に軟らかい鋼(心鉄)が確認できます。

 

 

鋼の強さとは?硬さは強さの目安に過ぎません

 

金属(鋼)の強さ(強度特性)は非常に多岐にわたります。その基礎的なものは引張特性,圧縮特性,延性,靱性,疲労特性,クリープ特性などです。では,日本刀の鋼の強さに着目した科学的な評価は(一定の規格に準じた試験で,定量性をもって他の結果と相互に比較できる試験),私が文献を確認した限りでは特殊な手法で靱性を評価した論文が1件のみとなります。この著者である佐々木博士は,現在は刀匠として活躍をされています。

 

一方で,日本刀愛好家の皆様は,「“硬さ”があるじゃないか」と思われるかもしれません。しかし,通常,金属の強度特性に“硬さ”は含まず,強さの大ざっぱな目安に過ぎません。特に,壊れやすさを評価する延性や靱性を評価することができないため,日本刀の強さを材料科学的に分析する上では不十分な結果となります。詳細は新着情報に記載しますので,そちらをご覧下さい。

 

日本刀から切り出したサンプルに対して実施したビッカース硬さ試験の圧痕を走査型電子顕微鏡で観察した結果

 

なお,昭和初期頃までは,日本刀を直接壊すことでその強さを調べることも行われていました。例えば,日本刀の上におもりを落とし,壊れるか?などです。日本刀の強さ(折れにくさなど)を調べるためには,この方法が最も有効です。しかし,日本刀を破壊してしまうこと,さらに日本刀の強さは,折り返し鍛錬や造り込み,焼入れの積み重ねによって生じており,刀身を単純に壊す試験ではどの工程によって強さが向上/低下したのかを科学的に分析することは極めて困難となります。そのため,今回の議論ではこれらの結果は含めていません。

 

 

なぜ日本刀の強さに関する分析が硬さ試験に限られるのか?

 

では,なぜ硬さ以外の試験がほぼ行われていないのでしょうか?それは,試験を行うためのサンプルを取り出すことが物理的に不可能であるためだと思われます。分析手法にもよりますが,試験を行うためには大きなサンプルを準備する必要があります。例えば,最も基礎的な強度特性である引張特性の評価には,ペンや小振りな定規程度の大きさのサンプルが必要となります。しかし,日本刀は薄肉であること,さらに造り込みと焼入れによって内部の強度が複雑に変化しており,下図に示す硬さ試験のように数ミリ場所が異なるだけで,全く異なる強さを示します。強度特性を正確に計測するためには,同じ強度の場所からサンプルを取り出す必要があります。しかし,僅か数ミリの狭い場所から大きなサンプルを取り出すことは不可能です。

 

丸棒型の引張試験片。中央の細い部分は直径6mmとなり,このサンプルを真っ直ぐ引張ることで,中央の細い部分のみが変形します。

日本刀断面の硬さ試験結果

 

加えて,この評価のためには文化財でもある日本刀を切断する必要があることも,要因の一つと思われます。しかし,過去,日本刀を破壊する分析が行われていた頃でも,おそらく硬さ以外は評価されていないようです。その要因は,やはり日本刀から試験のためのサンプルを取り出すことができないことも主要因の一つではと考えられます。

 

 

現在の日本刀ともいえる最新の鉄鋼材料・超ハイテンを創り出した実績があり,

その知見が活きます

 

現在の自動車のフレーム(骨組み)には,非常に強度の高い鋼・超ハイテン(超高張力鋼板)が用いられています。超ハイテンは,強度と粘り強さを兼ね備えた日本刀と類似した特性を材料単体で実現しているのです。※詳細は,新着情報をご覧下さい。

 

私は,以前鉄鋼メーカーの研究所でこの超ハイテンの研究開発に従事し,新しく創り出したいくつかの超ハイテンで特許も取得しています。この経験が日本刀研究にも大きく役立つと考えています。

 

外装が取り外され,フレームが見える状態で展示されている自動車。

色が異なるフレームは,強度特性が異なるハイテン・超ハイテンが用いられています。(トヨタ会館展示,2018年8月撮影)

 

鉄鋼メーカー在職中に開発した引張強度980MPa級超ハイテンの組織写真(中田他,特許6290074より抜粋)

 

 

金属の強さが決まる仕組みと現在の材料開発の方法

 

金属材料の「製法」・「金属組織」・「強度特性」には,以下の図のような関係があります(図中の青のライン)。一見すると単純な関係のようにも見えますが,考慮すべき主な条件は表の通りとなり,極めて多岐にわたります。例えば,日本刀の刃で用いられる金属組織マルテンサイトも製法によって状態が様々に変化し,それに伴い強度特性も変化します。そのため,金属組織の情報だけで強さや製法を特定することは,極めて困難です。現在の最新の研究である非破壊検査による日本刀の分析についても,おそらく同様の問題があると思われます。

 

一方で,前述の超ハイテンの開発は,次のような手順で行っていました(図中の赤のライン)。自動車用のフレーム材料として要求されている強度を決め(開発目標),それを実現できる金属組織を設計し,その金属組織を実際に造ることができる製法を考案しました。このプロセスを日本刀の製法解明にも適用できないかと考えています。そのために必要となるのが強度特性であり,まずは製法の影響をダイレクトに受ける引張特性を評価したいと考えています。

 

金属材料の製法,金属組織,強度特性の関係

 

金属材料の製法,金属組織,金属が強くなる条件

 

 

最も基本的な強度特性,引張特性の評価。製法の影響を強く受け,「折れず曲がらずよく切れる」を科学的に真に理解するための最重要特性の一つ

 

本研究では,失われた日本刀の製法解明のため,刀匠の手によって日本刀へと鍛え上げられた鋼の引張特性の評価を行います。この意義は,大きく二つあります。

 

第一に,引張特性は製法の影響を強く受け,僅かな製法の変化が直接数値として得られます。これは,定量化(数値化)しにくい金属組織と比べて大きな利点となります。 第二に,引張特性は日本刀の構造体としての強度「折れず曲がらずよく切れる」を決定付ける重要特性の一つであり,これらを科学的に真に理解するための大きな手がかりとなることです。

※引張特性の詳細は,新着情報をご確認下さい。

 

下図は,私が発明した4つの超ハイテンの組織写真となります。これらは全て別の材料となり,引張試験で計測される強さは全て同じであるものの,変形できる度合い(延性や靱性)を変えた鋼となります。右下の写真を除いて,混ざっている元素の種類は全く同じで,熱処理条件だけを変えた鋼です。この写真を見て,違いがわかりますでしょうか?手がかりなしで金属組織の違いを見分けることは難しいです。しかし,引張などの強度試験の結果があれば,その特性を得るための組織に注目して観察を行い,その組織の状態によって製法を予測する大きな手がかりとなります。

 

980MPa級超ハイテンの走査型電子顕微鏡による金属組織の観察結果。全て引張強度は同じですが,延性などが異なる鋼です。

 

第二に,日本刀の強度,「折れず曲がらずよく切れる」を決定付ける重要特性の一つであることです。これについては,後述している本研究のステップ3で実施することになるため,そちらに詳細を記載しています。

 

 

本プロジェクトの第一目標:微小サンプルを用いてこれまで評価できなかった日本刀中の鋼の引張特性を評価

 

今回,私の専門である微小なサンプルを用いた試験技術を用いて,日本刀内の引張特性を精緻に評価します。具体的には,日本刀内の引張り特性が変化していると思われる各部位より,写真の様な微小なサンプルを採取し,日本刀として鍛え上げられた鋼の引張特性を正確に評価したいと考えています。

 

本研究の分析で用いる日本刀は、刀匠より提供いただいた何らかの理由により美術刀剣や居合刀などとはならなかった現代刀、あるいは既存の研究において既に切断済みの刀剣などを用います。損傷などがない未切断の刀剣を破壊して分析に用いることはありません。これらの日本刀を用いて、まずは初期検討を行いたいと考えています。既に予備的な試験は実施しており、日本刀に用いられている鋼の強さを調べることがおそらく可能であると考えています。  

 

しかしながら、分析対象が既存の研究などにより切断済みの刀剣などであったとしても、貴重なものには変わりなく、使用するサンプルの数は最低限に留めたいと考えています。そのため、本格的な検討のためには、本研究の有効性をしっかり示すことに加え、分析に必要となるサンプル数をしっかり整理する必要があると考えています。今回の研究では、これらのことを明らかにするための初期検討となります。

 

標準的な引張試験用サンプルと本研究で用いる微小サンプル

 

なお,前述の佐々木博士(佐々木刀匠)が実施された試験法も,種類は異なりますが微小サンプルを用いたものであり,この成果が博士論文の一部となっているようです。

 

 

ご支援いただいた寄付の具体的な使途1:サンプルの加工費用

 

1点目は、サンプルの加工費用です。本研究で用いるサンプルは非常に微小であるため、日本刀からサンプルを切り出すために、サンプル一枚あたり約1万円が必要となります。

 

前述の通り、日本刀内の位置が1ミリ異なっただけで全く別の特性になります。本実験で用いる微小サンプルの厚さはある程度変えることができ、実用的な範囲ならば0.5〜0.8mm程度の厚さが適当になります。しかし、薄くするほどサンプルの扱いが難しく、実験に悪影響が生じる場合があります。そのため、日本刀内部の特性の変化と、それを調べるための適切なサンプルの厚さを調べたいと考えています。そのためのサンプル加工費用として約50枚分の50万円が必要となります。

 

ご支援いただいた寄付の具体的な使途2:低速精密切断機の購入費用

 

さらに、このサンプルを切り出す前には、その場所がどの様な金属組織の状態になっているかを事前に把握しておく必要があります。

 

金属組織と強さの関係をしっかり関連付けることができれば、これまで蓄積された金属組織評価を中心とした日本刀に関する研究知見、そして近年行われている加速器などを用いた非破壊検査(我々が受ける健康診断のように、壊さずに内部の様子をある程度把握できます)によって、製法に関する情報が得られるかもしれません。

 

このためには、サンプル採取前の日本刀を電子顕微鏡等で観察する必要があり、そのためには日本刀をある程度小さいサンプルに切断する必要があります。しかし、汎用の切断機は切断時に大きく熱を持つため日本刀の特性が低下してしまう可能性があること、切りしろが大きく日本刀自体が大きく削り取られること、切断位置の微調整もできないなどの問題があります。これらを解決できる研究用の精密切断機が必要となり、その購入費用約100万円をご支援いただきたいのです。

 

 

クラウドファンディングを行う理由

 

現在、国から国立大学に投入される資金は大幅に減少しています。それに伴い、大学から教員に配分される教育・研究費も大幅に削減され、研究に使用できる資金はほぼない状況です。

 

そのため、外部の公的機関や民間から資金を獲得することが求められていますが、本研究のような基礎研究で資金を得ることは難しくなっています。この研究のために3年程度をかけて準備を行い、あとは資金面さえ解決できれば研究を遂行できる状況です。資金面の問題を解決するため、皆様のお力をお借りしたくクラウドファンディングを行うことになりました。 

 

 

研究の様々な展開を計画しています

 

上記の研究は、鋼の強さに着目した日本刀の製法解明のプロジェクトのステップ1となり、ステップ2〜4へと発展させることを計画しています。図は本プロジェクトの全体像とそれに要すると思われる研究資金(仮)となります。

 

 

 

ステップ2:様々な日本刀の引張特性を評価。さらに,日本刀の破壊起点を評価するための破壊靱性試験も実施。

 

ステップ2では、ステップ1で確立した分析方法を用いて、種々の日本刀の強さを評価したいと考えています。さらに,発展的な分析として金属の壊れやすさを評価する破壊靱性も評価することで,ステップ3の仮想空間で再現する日本刀がより現実に近いものとなります。

 

あわせて、金属組織も評価することによって、日本刀となった鋼の強さとその金属組織の関係を体系的に整理します。これによって、これまで調べられてきた金属組織の情報から、その強さもおおよそ推定できるようになることが期待されます。

 

ステップ2で行う引張試験は試験数が膨大になる可能性,さらに発展的な試験である破壊靱性を行うために,微小サンプルに特化した試験装置が必要になってきます。このための試験機の整備費用として600〜900万円程度を見込んでいます。

 

詳細は新着情報に記載しますので,そちらをご覧下さい。

 

 

ステップ3:仮想空間での日本刀の再現。古の刀匠の作刀思想を蘇らせる。

 

ステップ2で明らかにする日本刀となった鋼の強度特性をコンピューター上で統合することで,仮想空間で日本刀の再現を試みます。ステップ2までの評価は,あくまで日本刀内の鋼の強さに過ぎません。作刀条件を知る上で必要不可欠なデータとなりますが,強度特性が異なる鋼が一体となった日本刀が「折れず曲がらず」をどの程度実現できるかまでは判断できません。しかし,刀内の精密な強度特性のデータがあれば,仮想空間で日本刀を再現することが可能となります。様々な造り込みの効果,あるいは刀身の強度に対する映りの効果なども検証が可能になると思われます。

 

科学という道具を通じて,古の刀匠達が鍛え上げた鋼の声を丹念に聞くことができれば,刀匠達が刀剣に込めた想いを感じ取ることができる,そんな期待をしています。

※詳細は新着情報に記載しています。

 

仮想空間で再現した日本刀の分析イメージ。

 

 

ステップ4:和鋼(玉鋼)の秘密の解明

 

日本刀は鋼で作られていますが、現在の我々が用いている鋼とは原材料や作り方が異なり、砂鉄を用いた製鉄法であるたたら製鉄で作られていました。製鉄法そのものは海外からもたらされた技術となりますが、その後国内でアレンジが加えられ発展したことから、この製法で作られた鋼を和鋼と呼び、現在では玉鋼と呼ばれることが多いです。

 

日本刀の製法を理解する上では、和鋼の性質を理解することも重要となります。ステップ23の検討より作刀方法の思想(コンセプト)までを推定することができると期待していますが、それを具体的な製法とするためには和鋼の熱処理条件など基礎特性についても、今一度整理する必要があると考えています。

 

分析のためには現在の和鋼(玉鋼)や古い和鋼などが必要になってきますが,あわせて研究室でもたたら製鉄を行うことで,和鋼の性質理解や製鉄法自体のノウハウなどを蓄積していく予定です。たたら製鉄については,今年度の卒業研究から試験的に実施予定です。

 

 

返礼品のオンライン配信につきまして

 

返礼の一部とさせていただいております,講義のオンライン配信につきましては,以下の内容を予定しております。

 

日本刀の製法を科学的に解説する講義のオンライン配信(ブロンズ,シルバー,ゴールドコース)
・現代刀の製法を現在の金属工学の視点で解説

 

カスタム講演会(プラチナコース)
・現代刀の製法を現在の金属工学の視点で解説
・金属が強化される仕組みに関する解説
・本研究で得られた成果に関するご報告

 

それぞれの詳細ですが,この3年ほど開催しております岐阜大学の公開講座において,現在の金属工学の視点から日本刀の製法を解説することを行っております。ただ,中高生の夏休みに合わせた催しとなっており,時間の兼ね合いから省略している部分が多々ございました。

 

「日本刀の製法を科学的に解説する講義のオンライン配信」では,上記の公開講座をベースに,内容を極力省略せずに一通りの解説を予定しております。ただ,現代刀の製法を対象としたものであること,あくまで私が理解できた範囲となりますので,全てをご説明できるものではございませんので,その点はご了承下さい。

 

また,「カスタム講演会」につきましては,上記の内容に加え,本研究で得られた成果に関する詳細なご報告,及び金属が強化される仕組みなどをご紹介予定です。日本刀の製法についてより深く理解するためには,これらの知識が必要になってきます。

 

 

応援メッセージ

 

別府 哲

岐阜大学 教育学部長 (2022年3月15日現在)

 

 

岐阜県は古くから日本刀作りが盛んな地域となり、現在でも多くの日本刀関連の職人の方々が活動をされています。中田先生は岐阜大学に着任されて以降、ご自身の専門である金属工学に関する知見を活かし、新たな視点での日本刀研究に取り組まれています。それだけに留まらず、研究活動を通じて得た知見を大学の講義や公開講座などで積極的に発信されており、本研究成果も広く紹介してくれるものと期待しております。刀剣の産地に立地する岐阜大学ならでは、そして中田先生の専門ならではの本研究を実現するため、皆様のご支援をお願い申し上げます。

 

笠田 竜太

東北大学 金属材料研究所 原子力材料工学研究部門 教授

 

 

近代以降の金属材料技術は、均一な性能を持つものを大量に安く製造するかということに注力してきたが、現代では材料組織の不均一性を逆手にとって高性能化を実現することが可能になってきている。ところが、1000年もの昔の刀匠達は、鉄鋼の不均一性を制御して優れた日本刀を生み出していたのであるから驚きである。日本刀における不均一な金属組織に対応した局所的な材料強度を微小試験技術によって直接評価するという中田先生のプロジェクトは、古の技術を復活させるだけではなく、現代の金属学にも貢献しうるものであると期待される。皆さんのご支援をお願いしたい。

 

 

プロフィール

 

中田隼矢

岐阜大学 教育学部技術教育講座 准教授

 

 

経歴:

2009年室蘭工業大学博士後期課程早期修了、その後、日本原子力研究開発機構核融合工学部門、株式会社神戸製鋼所材料研究所、岡山大学自然科学研究科を経て、2017年10月より現職。2019年度より岐阜県関市主宰の刃物セミナー講師、科学雑誌Newtonの2021年11月号掲載の「日本刀の科学」の監修などを務める。また、日本刀に関する啓蒙活動として2019年度より日本刀の製法を科学的に紹介する公開講座を開催し、オンラインで開催した2021年度は国内外より約250名の参加があった。

 

現在は、耐熱鋼や自動車フレーム用高強度鋼などの最新の科学的な研究とともに、日本の伝統的な金属工芸品の科学的研究も実施中。写真は、江戸時代に日本刀の鍔(つば)を製作する職人によって考案されたとされ、一時は技術が途絶え幻の技術とされていた杢目金を研究室で学生と再現したものとなり,現在科学的に分析中。

 

 

 

 

税制上の優遇措置について

 

岐阜大学へのご寄附については、税制上の優遇措置が受けられます。なお、寄附金領収書はREADYFOR株式会社を通じて寄附金が岐阜大学に入金された日付で発行いたします。

岐阜大学への入金は募集終了の翌々月(2022年6月)になりますので、税制上の優遇措置は2022年が対象年となります。ご注意ください。


個人住民税(県民税・市町村民税)の寄附金税額控除とは、地方自治体や一定の団体に対して2,000円以上の寄附金を支払った場合に、寄附をした翌年の個人住民税額が軽減される制度です。控除を受けるには、毎年1月1日から12月31日までに支払った寄附について、翌年3月15日までに所得税の確定申告書に必要事項を記載し、支出した寄附に関する領収書等を添付し、税務署へ提出してください。


所得税の確定申告を行わない場合は、住民税の申告書に寄附に関する領収書等を添付し、3月15日までにお住まいの市町村に提出して下さい。

 

<個人の皆さま>
■所得税(所得控除)
寄附金額が年間2,000円を超える分について、所得控除を受けることができます。
寄附金額 - 2,000円 = 所得控除額
(控除対象となる寄附金の上限額は、当該年分の総所得金額の40%です)

 

■住民税
本学を「寄附金税額控除対象法人等」として指定している都道府県・市区町村にお住まいの寄附者様の皆様は、所得控除に加えて、翌年の個人住民税が軽減されます。控除対象の地方自治体については、お住まいの各市町村にお尋ね下さい。
(寄附金額 - 2,000円) × 4~10% = 住民税控除額
(控除対象となる寄附金の上限額は、当該年分の総所得金額の30%です)
※上記の計算式の4~10%について
・都道府県が指定した寄附金は4%
・市区町村が指定した寄附金は6%
(都道府県と市区町村双方が指定した寄附金の場合は10%)

 

<法人様>

寄附金の全額を損金算入することができます。

 

 

詳しく知りたい方へ

 

金属の強さについて

 

金属は、製造時の熱の掛け方や形の変え方によって特性が大きく変わり、日本刀の素材である鋼は特にそれが顕著に生じます。これによって変化するのが鋼の組織であり、鋼の組織によってその強さが決まります。従来の科学的研究では、この組織に着目した研究が主となり、多くの有益な知見が得られています。

 

本来ならこの組織から製法をある程度推測することができますが、日本刀の刃文部分は焼入れと呼ばれる熱処理によってマルテンサイトと呼ばれる複雑な組織となっています。マルテンサイトは、一つの粒の中に小さい粒、さらに小さい粒、さらにさらに小さい粒が含まれる多層構造(4世代の家族が一つの家に同居しているような状態)となり、極めて複雑な構造を取っています。そのため、マルテンサイトについては現在でも全てが解明されているわけではなく、未だ研究対象となっています。

 

さらに、日本刀の素材となる和鋼、現在では玉鋼と呼ばれることが多いこの鋼は、現在の工業的に用いられている鋼とは含まれる元素の種類がかなり異なります。そのため、同じ製法であっても和鋼と現代鋼では得られる組織が異なり、ゆえに得られる強さも異なります。これは、長年蓄積された現代鋼に関するノウハウが和鋼にはそのまま適用できないことを指し、現代鋼を対象にした研究成果をそのまま適用することはできません。

 

では、なぜ日本刀に用いられる和鋼の強さが評価されてこなかったのでしょうか?その原因は、日本刀の構造と製作時の熱処理(焼入れ)の複雑さに起因します。日本刀は、鉄に炭素が混ざった鋼でできていますが、実は炭素量が異なる複数の鋼を組み合わせて作られています(平安時代など初期の日本刀は、単一の鋼のみで作刀されているようです)。

 

鋼は炭素量が増すほど硬くなりますが、硬くなると折れやすくなります。そのため、外側には炭素量が多い硬質な鋼、内側には炭素量が少ないほどほどの硬さの鋼が用いられています。さらに、これらの鋼は熱処理(焼入れ)を施すことによって、さらに硬くなります。しかし、ここでも硬くし過ぎると折れやすくなるため、日本刀では刃の部分のみに強く焼入れを施しています。

 

日本刀に用いられている鋼の強さを調べる予備的な試験について

 

既に予備的な試験は実施しており、下図のような結果が得られています。

これは金属の最も基本的な強さを調べた引張試験の結果となっています。この分析は刃先と中心部から採取したサンプルの強さを調べたもので、サンプルを引張り、引張ることで生じた変形を横軸、引張るために必要となった力を縦軸に示しています。

 

変形は壊れやすさ、力は強さとの関わりが深くなっていますが、両者は複雑に関連し合う特性となっており、そのバランスが重要となります。なお、これまで評価されてきた硬さは、強さとは関わりがありますが、壊れやすさは評価できません。

 

日本刀から採取した超微小サンプルを用いて強さを調べた結果

 

日本刀の芯から採取したサンプルは破壊するまでには0.8mm程度の変形が生じていますが,刃先から採取したサンプルは僅か0.15mm程度の変形で破壊してしまっています。この分析方法を用いることで、日本刀となった鋼の強さや壊れやすさが部位によって全く異なることがわかります。

 


ご留意事項

 

 本プロジェクトのリターンのうち、【お名前掲載】に関するリターンの条件詳細については、こちらのページの「支援契約」にある「●命名権、メッセージの掲載その他これに類するリターン」をご確認ください。

 

「応援コメント」としていただいたメッセージは、本プロジェクト期間中・終了後もPR等で利用させていただく場合がございます。ご了承ください。

 

 

※プロジェクト実施終了に伴い、ページ内容の一部を修正いたしました。(2023年4月14日/READYFOR事務局)

プロジェクト実行責任者:
中田 隼矢(岐阜大学 教育学部 技術教育講座)
プロジェクト実施完了日:
2023年3月31日

プロジェクト概要と集めた資金の使途

日本刀の強さを科学的に分析するための研究資金として用います。日本刀から実験サンプルの採取や採取位置を検討するための精密切断機の購入(100万円)、実験サンプルの加工費用(50万円)、実験実施のための出張費用(10万円)、クラウドファンディング手数料 他

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2017年10月より岐阜大学 教育学部技術教育講座・准教授。金属材料に関する研究室を主宰。専門は材料強度学となり,主に鉄鋼材料の変形や破壊の評価などに取り組む。 岐阜県は日本刀の古くからの五大産地・五箇伝の一つであることもあり,科学的側面から日本刀の特徴を解説する講義を岐阜大学で開講。本内容を中高生向けにアレンジした公開講座を2019年より開講し,2020年からはYouTubeで配信している。2019年より岐阜県関市主宰の刃物セミナー講師,科学雑誌Newtonの日本刀に関する記事の監修などを務めている。 金属を用いた伝統工芸にも関心を持ち,鎚起銅器を加工組織の分析,木目金の製作条件の科学的検討にも取り組んでいる。また,中高生向けのワークショップとして木目金製アクセサリーの製作体験を開講している。

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お気持ちコース

●お礼メール
●寄附金領収書
 ※ 税制上の優遇措置は2022年が対象年となります。
 ※ 寄附金領収書の宛名はギフトのお届け先として登録されているお名前となります。
●本資金で実施した研究成果の報告(メールにて送信)

申込数
45
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2023年3月

10,000


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【スタンダードコース】研究成果の報告 + ホームページ内へご芳名掲載

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●本資金で実施した研究成果の報告(メールにて送信)
●岐阜大学クラウドファンディングホームページ内へご芳名掲載(希望制)
 ※「ご芳名掲載」に関しましてはギフトのお届け先として登録されているお名前が掲載されます。

申込数
36
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2023年3月

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36
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発送完了予定月
2023年3月
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プロフィール

2017年10月より岐阜大学 教育学部技術教育講座・准教授。金属材料に関する研究室を主宰。専門は材料強度学となり,主に鉄鋼材料の変形や破壊の評価などに取り組む。 岐阜県は日本刀の古くからの五大産地・五箇伝の一つであることもあり,科学的側面から日本刀の特徴を解説する講義を岐阜大学で開講。本内容を中高生向けにアレンジした公開講座を2019年より開講し,2020年からはYouTubeで配信している。2019年より岐阜県関市主宰の刃物セミナー講師,科学雑誌Newtonの日本刀に関する記事の監修などを務めている。 金属を用いた伝統工芸にも関心を持ち,鎚起銅器を加工組織の分析,木目金の製作条件の科学的検討にも取り組んでいる。また,中高生向けのワークショップとして木目金製アクセサリーの製作体験を開講している。

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