津波で壊滅した徳泉寺を救った「はがき一文字写経」恩返しを今。

徳泉寺は、①東日本大震災物故者を悼み、自らも癒され、心の拠り所となる「祈りの場」の創設、②震災の記憶と教訓の「伝承」、③自らの命は自ら守る「防災意識の啓発」のために歩きお参りをすることを目的として設立された「みちのく巡礼」の宮城県第32札所となっています。

そのみちのく巡礼のウェブサイトに徳泉寺が動画で紹介されています。どうぞご覧ください。

みちのく巡礼

http://michinoku-junrei.com/

また、文字おこしをしましたので、こちらも併せてご覧いただければ幸いです。

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みちのく巡礼宮城第三十二番札所徳泉寺です。曹洞宗の寺院です。
私はこの徳泉寺の本寺・本家寺にあたります徳本寺の住職も務めており、この徳泉寺は兼務している住職地ということになります。徳本寺の第5代目の青岩存陽大和尚様が江戸時代のはじめ、いまから約370年前の慶安4年（1652）にこの徳泉寺を開かれたといわれております。私は徳泉寺の住職としては23代目になります。

徳泉寺は徳本寺と同じように山元町にあります。海から300メートルぐらいのところに本堂と庫裡とがあり、お檀家さんもその周りにお住まいでした。けれども、今回の東日本大震災の大津波でお寺の本堂、庫裡、そしてお檀家さんの家もすべて流されてしまいました。100％のお檀家さんが被災するなど、大変な被害にあった地域にある寺であります。亡くなった方は74人おります。本当に多くの方が尊い命を落とされております。

徳泉寺は、本堂も何もかもなくなってしまいました。震災当初は、このあたりは砂浜状態でした。（報道などで）瓦礫がいろいろなところに散乱している光景を目にしたかと思いますけれども、この徳泉寺のあたりというのは本当に砂浜状態で瓦礫すらないような状態でした。

ですが、震災から1ヶ月近く経ったころ、ある方が「仏像を見つけた」といって、持って来てくださいました。それがなんとこの徳泉寺の本尊さんだったのです。いまこの後ろに写っておりますのが徳泉寺の本尊さんです。ここは実は徳泉寺ではありません。徳泉寺は本堂も何もかもなくなっておりますので、本寺である徳本寺の位牌堂に仮に安置をしておる状態が、いまこの状態であります。

この本尊様が本当に奇跡的に発見されました。多少傷はついておりますがほぼ無事な状態です。お釈迦様なのですけどもあえて一心本尊様と名付けました。どんな災難に遭っても一心に「地域の方々の、心の支えになりたい」。そういった思いで踏みとどまって戻ってこられた本尊様だと信じまして一心本尊様と名付けました。

本尊様が見つかったものの、本堂とかがありませんので何とかしなければいけない。しかし、お檀家さんも全員が被災しておりますのでお寺の本堂どころではない。自分たちの住まいすらもなんとかしなくてはいけないわけですから。これから先お寺をどうしたらいいのか大変思案あぐねました。

毎日この一心本尊さんに手を合わせておりましたときにひらめいたことが「はがきに一文字写経をしていただいて、その納経料を納めていただき、その功徳でもってなんとか徳泉寺を再建できないだろうか」ということです。震災から1年後ですね。平成24年の3月11日に、はがき一文字写経による徳泉寺再建を発願いたしました。おかげさまで全国の多くの方々からはがき一文字写経をお寄せいただきました。特にその写経の第一号となったのがあの永六輔さんであります。ここにこのように多くの方々の写経が寄せられております。いずれこのファイルにあるたくさん寄せていただいた写経は徳泉寺の本堂ができましたときに、一心本尊さんの下に納経いたしまして、永代にご供養する計画でおります。

震災から8年過ぎた現在、やっと写経の功徳によって本堂の基礎ができて、柱が立ち始まったところです。これから先、皆さまの思いを形にして徳泉寺の再建、そしてまた地域の復興、皆さま方の心の安寧を図っていける徳泉寺になっていくために、お檀家さんと共々に今後精進してまいりたいと思っております。

写経そのものは本尊様のもとに納経しますけれども、これをレーザープリントで木片にすべて印字をいたしまして新しい本堂の壁にすべて展示することになっております。皆さま方にも徳泉寺の本堂ができました暁には、それを拝んでいただき、犠牲になられた方々の霊を慰めると同時にさらなる地域の発展復興を祈っていただける祈りの場にしていただければありがたく存じますので、ぜひお参りをお願い申し上げます。

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