薪風呂が生まれ変わりました!
つじ屋女将の髙梨英子です。
ご報告が遅くなり申し訳ありませんっ。
薪風呂が完成し、とても快適なお風呂になりました!
ご支援、本当にありがとうございました!!
11月16日より工事がスタートし、約1か月で完成しました。
年末年始のお客さまにも、気持ちよくお入りいただけたほか、ご支援くださった近隣の方も、入っていただいた方がいらっしゃいます◎
ご覧のとおり、見た目には薪風呂とは分からない雰囲気です。
現在市販されている直焚き用の風呂釜は一般的な規格サイズで、見た目も同様なんです。
薪風呂っぽく見えないのは少し残念な感じはしますが、どなたにも快適にお入りいただける点では、その方がよいのだと思います。
鋳鉄にホーロー引き、それが冷めにくさの最大のポイントなのだと実感しています。
工事完了からこの3週間弱、風呂焚きをしていて、たくさんの発見がありました。
火の通りがすばらしいので、沸くまでの時間が早いです。
その沸き方をこまめにチェックしていたら、その温度変化が右肩上がりではないんですね。対数曲線的に、途中まではあまり温まらずに推移して、お湯が30度くらいになってから、いっきにぐっと温度が上がる。
鋳鉄だから、風呂釜が温まるまで時間がかかり、風呂釜が温まってしまったら水を温めるのは早い。そして風呂釜が冷めにくい分、お湯もなかなか冷めない。
以前の風呂では焚いている間の温度変化の特徴などを詳しく感じようとはしてこなかったから、気づきませんでした。汗
そして煙道がきちんと機能しているからでしょう、洗い場のタイルが翌朝も十分温かいのです。もし夜だけでなく朝風呂もしたいという宿泊のお客さまがいらしても、沸かし直しが早くできそうです。
そして本当に素晴らしいのが、風呂釜を縁取るアール形状とモザイクタイル!
風呂釜の色が青しか選べず、青かよ~。。。と落ち込んだのですが、タイルを青系の色でまとめたことで、爽やかで美しく、かわいらしい風呂場になりました。ふたや椅子を木製にしたので、温かみもプラスできました◎
アール形状は左官仕事ならでは。手間がかかるので、最近は職人さんに嫌がられると聞きます。加えてアールにするとモザイクタイルを貼らなくてはならず、ますます手間がかかります。今回はタイル部分を全てモザイクでお願いし、しぶしぶ了承してくださったので、アール形状も引き受けてくださいました。
どれだけ手間のかかる作業かは、タイルの施工が始まってすぐに分かりました。貼って接着剤が乾くまでに、はみ出した部分を丁寧に取り除く。目地材もまた同様。モザイクは目地が多いので、その手間は何倍にもなってしまいました。夕方からぐんぐん気温が下がるなか、夜遅くまで作業なさる日が何日もありました。アール部分はタイルを貼るのも手間がかかりました。休憩していたら何時に帰れるか分からなくなるということで、作業しながら温かい夜食を召し上がっていただいたことも数日ありました。
私共の想いだけでなく、ご支援くださったみなさまの想いを、職人さんも共有してがんばってくださった結果の、すばらしい出来栄えです。
本当にありがとうございました。
大切に、大切に、感謝しつつ、日々お風呂を焚いていきます。
焚口の上部壁面。ご支援くださった方のお名前を書いたタイルです。
白いタイルの周囲は漆喰で仕上げる予定でしたが、余っていたタイルを使うことを職人さんが提案してくれ、このようにかわいらしく仕上がりました。
お名前を書く方法はあれこれ検討し、試した結果、油性マジックに落ち着きました。
これなら汚れたり消えかけたらまた書くことができるので、末永く維持できます。
タイルにお名前を記すリターンを選択してくださった方のほかにも、やっぱりみなさまのお名前を残したいと思いましたので、右上に小さく書かせていただきました。
スペースはまだ空いていますので、今後ご支援いただける方におかれましても、こちらに追記いたします◎
もう1つ、薪風呂ならではかもしれない利点に気付きました。
タイルと言えば、目地のカビ汚れ。それが嫌われ、風呂場からモザイクタイルは駆逐されてしまいました。今回も職人さんに、メンテが大変になるからタイルを貼るなら20センチ角とかの大きなものにした方がいいとのアドバイスもありました。
ところが、元々の風呂場も、カビ汚れがほとんど出ていなかったのです。湿度の高い風呂場、湿度の高い場所にもかかわらず、です。
新しくなってからの風呂場は朝もタイルが暖かいだけではなく、しっかり窓さえ開けておけば、風呂場なのにとてもカラッとしています。つまり、カビの発生には温度と湿度が必要ですが、焚く際にその温度が高くなること、湿度が短時間で低くなることで、カビにとっては繁殖に適さない環境になるのではないかと思うのです。
薪風呂の新設をご検討の方は、是非ご参考になさってください。
ただ課題もあります。
タイルより上の塗装は、外壁用のシリコン系塗料を塗ってもらいました。カビにくさにかけてはピカイチの実績を誇る塗料とのことです。外壁用なので直射日光にも強く、温度湿度には強いはず。なのですが、どういうわけか、塗料と下地の間に空気か水が入り込んで水泡(気泡?)ができ、剥がれてしまう箇所が多発しました。やり直してもらったものの、また発生しています。また、焚口側の壁面の、タイルと塗装の境目も、そこから何かが噴出したようで、亀裂が入りました。
直火で風呂を焚くということがもたらす熱の影響は、すでに想定されていないのが左官や塗料だと思います。大量の水と共にセメントで基礎を作り上げているわけですから、数日の乾燥では全く足りず、その水分のはけ口がどこにできてしまうのかは想定できないということかもしれません。
また、檜板の風呂の蓋は、使用1日目からヒビが入りました。無垢材なので簡単に割れることはないはずですが、熱の影響はかなり大きいことを痛感しました。
塗装面については、焚き続けていくなかで修繕のタイミングを計り、知識を積み上げていきたいと思います。
今後、薪風呂を新設したいと考える方のためにも、失われた知恵を取り戻し、現代と整合する方法を見つけ出せればいいなあと思います。
収支についてご報告します。
みなさまからのご支援総額 1,350,000円
手数料を差し引いて受け取った金額 1,102,140円
左官工事(税込) 1,350,000円
水道設備工事(税込) 52,800円
塗装工事(税込) 25,000円
大工工事はまだ請求いただいていないので未定
左官費用は、想定よりもお願いする部分が大幅に増えたのですが、そこを全て勉強料としてご負担くださいました。涙
左官職人さんは今まで薪風呂の仕事はなかったわけですが、今後請け負う意欲をお持ちで、そのためにも今回お引き受けくださいました。いざ工事を始めてみたら想定通りには行かなかった部分が多かった、その部分は今後に繋げられれば、とお考え下さったと受け止めています。私共も、使い続けるなかで気づいた利点をお伝えし、欠点を相談していくことで、薪風呂施工の技術伝承に貢献していきます。
塗装工事は友人の塗装職人さんが、余っていた塗料を流用することで安く仕上げてくれました。でも今後の修繕を考えると、この価格では赤字なのでは。。請け負ってくださったのだから損の無いよう、相談していきます。
ご支援くださったみなさま、薪風呂の魅力を味わいに、どうぞつじ屋へおいでください。
ただただ温まり、寛いでいただくのはもちろん、薪風呂の設置をお考えの場合、お気軽にご相談ください。また、クラウドファンディングに挑戦をご検討なさっている方におかれましても、私共の経験をお伝えすることができます。
また、年明け早々より、3件お隣の年配の猟師さんが、撃った鹿を犬用のジャーキーに加工し、商品化する事業に協力させていただくという素敵なお話が舞い込みました。素性の明らかな、完全にオーガニックな鹿ジャーキーです。大量生産はできないものの採算の割れない事業として、またオーバーワークにならない方法で、かたちになっていけば素晴らしいと思います。そんなことにもご興味をお持ちいただけると嬉しいです。今後また発信していきます。
大変長くなりましたが、最後に、以前の煙突を全て再生・再利用していただいた写真をご覧ください。
割れて欠けて崩れた煙突は全て丁寧に補修され、銅の網を巻いてもらって鋼鉄の添木をしてもらいました。満身創痍ながらもまた仕事についてくれた、老いた煙突の雄姿です。
この風呂場を、つじ屋を私共に引き継いでくれた前の家主さんにも、心から感謝を申し上げます。ありがとうございます。
今後とも、つじ屋をよろしくお願いいたします。